KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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2008東京国際女子マラソン展望②~ラスト・ヒロインは誰だ?

2008年11月16日 | マラソン時評
東京国際女子マラソンの29回の歴史の中で優勝を見ると、最初の15年で日本人ランナーの優勝はわずか2回。'83年(第5回)の佐々木七恵さんと、'91年の谷川真理さんだけである。どちらも、翌年の五輪代表選考レースとして行われながら、佐々木さんは代表入りして谷川さんは補欠だった。この時の代表選考はまさにスポーツ面をはみ出す事件となったが。この8年で女子の選手層が厚くなったことを示しているも言える。

以後14年で日本人の優勝はのべ8人。日本の女子マラソンの成長がそのまま大会の歴史になっているともいえるし、かつての、外国人ランナーが圧倒的な強さを見せていたレースが印象に残る人たちからは、海外招待選手の弱体化を指摘する声も根強い。

確かに、'92年にはワレンティナ・エゴロワ、'96年にはファトゥマ・ロバ、'00年にはジョイス・チェプチュンバと五輪イヤーにはメダリストを招待してきたが、4年前には前年の優勝者で五輪4位のエルフィネシュ・アレムを招待したのみ。今回も五輪の上位入賞者は、日本在住のマーラ・ヤマウチのみというのが寂しい。

かつては、日本の大会主催者深いパイプを持つ代理人が抱えるランナーたちが、五輪でも活躍が目覚しかったとも言えるし、海外のランナーたちも日本の大会で「育てられた」とも言える。ワールド・マラソン・メジャーズと称する、トップランナーの「囲い込み」の中では、「国際マラソン」の名に値するメンバーを揃えるのは困難なことだ。

さて、注目は渋井陽子だ。昨年は野口みずきとの対決が注目されたが、「格」の違いを見せつけられる結果となった。五輪には10000m代表となったが、マラソン出場が思いがけずに早いなと思った、五輪の準備期間も、この大会に向けての準備を並行して行っていたのではないかと想像する。30kmまでは強い渋井に、チームメイトである土佐礼子の後半の粘りが身につけば無敵のランナーになれるのにと、いつも思うのだが。

ここは渋井には、スタートから思い切り飛び出し、独走するレースを期待したい。渋井のハイペースに、昨年2位のサリナ・コスゲイや加納由理らはつくだろう。後続のランナーを振り切ることが出来るか、あるいは失速して逆転されるか、渋井のレースはいつも、
「いい時は最高、悪い時は最低」
である。


渋井が引っ張るトップ集団が終盤に崩壊すれば、後半からひたひたと迫り優勝をさらいそうなのが、マーラ・ヤマウチだ。今年の大阪のレース展開の再現となるかもしれない。3年前にもこの大会を走り、入賞している(覚えてますか?)だけに、コースに対する不安はないだろう。
高速レースとなれば、自己ベスト更新もありそうだ。

ジョイス・スミスの優勝から始まったこの大会が、同じ英国のマーラ・ヤマウチの優勝で締めくくられる、いうのも、好ましいストーリーだが、はたしてどうだろうか。決して可能性は低くない。渋井以外の日本人ランナーでは、加納由理に注目だ。彼女の所属するセカンドウインドACのランナーたちは、とにかく狙ったレースは外さない。実はヤマウチもメンバーの1人である。ヤマウチと加納との「同門対決」となるかもしれない。

ダークホースはスベトラナ・ザハロワ。7年前の世界選手権のマラソンで、渋井をかわして銅メダルを獲得、翌年のロンドンでは土佐礼子をペースメイカーにして終盤逆転した、「トサシブ(この名称,オグシオのように一般的には定着しなかったのが残念)の天敵」だが、もともとロシアのランナーは競技者寿命が長いだけに、まだまだ力を発揮しそうだ。

38歳のトメスクが北京で金メダルを獲得し、36歳のポーラ・ラドクリフがニューヨークシティで健在ぶりを見せるなど、ベテラン・ランナーたちの活躍が目立つが、もともと女子マラソン黎明期の主役はママさんランナーたちだった。時代がひとめぐりして原点に戻ったのかもしれない。今回、第一回大会を走った松田千枝さんも出場する。第50回の福岡国際マラソンのように、歴代優勝経験者で走れる人は1人でも多く走ってもらいたかったなと思った。

テレビ局の方々には、
「レースの主役は、ランナーですよ。」
と釘を刺しておこう。




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