9月30日に開催された、ベルリン・マラソン、今年もフジテレビによる地上波の中継はなく、CS放送で放映のみ。今やケーブルテレビによって、レースの模様を見られるようになったので、見られなかった皆さんのために伝えたいと思う。
昨年に引き続き、今回のテーマは「ハイレ・ゲブレセラシエの世界新記録挑戦」である。ハイレの名前を知らない人に、彼のことをどう説明しようか。
「'93年のシュトゥットガルトから'00年のシドニーまで、4回の世界選手権と2回の五輪で10000mで金メダルを獲得した男」
というだけでも、十分かもしれないが、もう1つ、彼がこれまで作った世界新記録の数を上げれば、彼が現在、「皇帝」と呼ぶにふさわしい長距離ランナーであることが自ずとわかるだろう。
1994.06.04 ヘンゲロ 5000m 12:56.96
1995.05.27 ケルクラーデ 2mile 8:07:46*
1995.06.05 ヘンゲロ 10000m 26:43.53
1995.08.16 チューリヒ 5000m 12:44.39
1996.01.27 ジンデルフィンゲン 5000m(i) 13:10.98
1996.02.04 シュツットガルト 3000m(i) 7:30.72
1997.02.20 ストックホルム 5000m(i) 12:59.04
1997.05.31 ヘンゲロ 2mile 8:01.08*
1997.07.04 オスロ 10000m 26:31.32
1997.08.13 チューリヒ 5000m 12:41.86
1998.02.15 バーミンガム 2000m(i) 4:52.86*
1998.06.15 ヘンゲロ 10000m 26:22.75
1998.06.13 ヘルシンキ 5000m 12:39.36
1999.02.14 バーミンガム 5000m(i) 12:50.38
2002.12.11 ドーハ 10km(r) 27:02
2003.02.21 バーミンガム 2mile(i) 8:04.69*
2005.09.04 ティルビュルヒ 10mile(r) 44:23*
15km(r) 41:22
2006.01.15 フェニックス half(r) 58:55
20km(r) 55:48
2006.03.12 アルフェンアンデンレイン25km(r) 1:11:37※EPO検査が行われなかったため非公認
2007.06.27 オストラバ 1時間 21285m
20000m 56.26.0(56.25.98)
*はIAAFの公認種目ではないため、WR(世界記録)ではなくWB(世界最高)。
(i)は室内種目 (r)はロード種目。
'90年代の後半から、彼がマラソンを走れば、2時間3分台は可能だと言われ続けてきた。初の国際マラソン(10代の頃に、アジスアベバでマラソンを走っていたといわれている)となった'02年のロンドンでは2時間6分35秒で3位。この時の2位は4年前にベルリンで世界新記録を作ったポール・テルガトであり、優勝したのは、テルガトの前の世界記録保持者のカリド・ハヌーシだったのだ。以後、6回マラソンを走り、優勝は3回。昨年のベルリンで、2時間5分56秒の自己ベストで優勝し、年末の福岡でも「皇帝の走り」を見せつけた。しかし、今年のロンドンでは途中棄権。既に34歳を迎え、限界説も出たが、この6月に1時間走の世界記録を作り、健在ぶりを見せた。
ベルリン・マラソン、今年は4万人(!)ものランナーが出場、スタート地点には、坂本直子の姿も見られる。シドニー五輪で7位入賞以来3年ぶりのマラソン出場だ。
日本からは他にも昨年のこの大会で3位に入賞した梅木蔵雄、アジア大会4位の入船敏、30kmロードではサブ90(分)の記録を持ちながらマラソンの実績がない瀬戸智弘がエントリー。
スタート時の天気は曇り、気温13.6℃、湿度73%。雨上がりのひんやりとした空気が画面から伝わる。
5人のペースメイカーに囲まれたハイレ、赤いランシャツに黒いパンツ。1km過ぎて他のランナーを置き去りにしていく。彼が希望したペースは中間点で1時間2分30秒。
カメラは女子の先頭集団とも煩雑に切り替わる。トップは昨年優勝のゲテ・ワミ。坂本も女子の2位集団につけている。今回の放映は、地元放送局が作成した国際映像を見ながら、フジテレビのアナウンサーが実況を担当し、金哲彦氏が解説するというスタイル。日本人女子ランナーのタイム・トライアルでなければ、地上波では放映されないが、その時の日本人女子ランナーばかりを映し出す中継とは異なる、「本来のベルリンマラソンの姿」を見ている。
5kmをハイレの集団は14分44秒で通過。梅木と入船も含む2位集団も14分59秒で通過だ。女子の先頭、ワミは16分33秒で通過。2時間20分を切るペースだ。2位の坂本も17分12秒、25分台ペースで通過だから悪くない。
ハイレは小柄なランナーだ。身長165cm。しかし、金氏に言わせれば
「腰の位置が高いのでストライドが広い。」
だから、身長の高いペースメイカーたちのリズムにしっかりと合っている。
10kmを29分27秒で通過。速いペースで安定している。梅木も入船も29分50秒で通過する2位集団にしっかりつけている。ケニアとエチオピアの選手ばかりの集団の中では一際目立つ。オーストラリアのリー・トループもついている。
ワミも10km通過。33分21秒。2時間20分を少し上回るペース。彼女のストライドも広い。頭1つ大きな男子ランナーと全く変わりない。
瀬戸智弘の姿も映し出される。2位集団から約20秒遅れの第3集団の中心に位置取っている。ここにもペースメイカーがいる。ちょうどサブテンのペースだ。アナウンサーがしきりに「初完走を目指す」と口にしているが、瀬戸、今年のびわ湖、2時間30分オーバーであるが完走していたはずだが。
レースは完全に3つに分かれた。ハイレのタイムトライアル、そして男子の2位争いと女子のレース。
ハイレは時計をしていない。それでいて、正確なペースを刻み続けている。15kmを44分16秒で通過。2時間4分31秒が予想ゴールタイムだ。4年前のテルガトが2時間4分55秒でゴールした時よりも、30秒も速い。
最近の欧州の都市マラソンでは、ナンバーカードの前面に、ランナーのファースト・ネームをプリントしている。ハイレも「HAILE」のカードを付けているが梅木も名前入りのカードを付けている。昨年の3位入賞者として丁重に扱われているのだろう。ただし、その時はハイレとは8分近い差をつけられていた。昨年のレースは大荒れでハイレが5分台でゴールしたのに、2位以下は全て10分オーバだった。
ワミも15kmを49分58秒で通過。2位の坂本は1分35秒遅れで通過。
(つづく)
※ハイレの世界新記録リストは、くろまきさんが作成したものを引用させていただきました。
昨年に引き続き、今回のテーマは「ハイレ・ゲブレセラシエの世界新記録挑戦」である。ハイレの名前を知らない人に、彼のことをどう説明しようか。
「'93年のシュトゥットガルトから'00年のシドニーまで、4回の世界選手権と2回の五輪で10000mで金メダルを獲得した男」
というだけでも、十分かもしれないが、もう1つ、彼がこれまで作った世界新記録の数を上げれば、彼が現在、「皇帝」と呼ぶにふさわしい長距離ランナーであることが自ずとわかるだろう。
1994.06.04 ヘンゲロ 5000m 12:56.96
1995.05.27 ケルクラーデ 2mile 8:07:46*
1995.06.05 ヘンゲロ 10000m 26:43.53
1995.08.16 チューリヒ 5000m 12:44.39
1996.01.27 ジンデルフィンゲン 5000m(i) 13:10.98
1996.02.04 シュツットガルト 3000m(i) 7:30.72
1997.02.20 ストックホルム 5000m(i) 12:59.04
1997.05.31 ヘンゲロ 2mile 8:01.08*
1997.07.04 オスロ 10000m 26:31.32
1997.08.13 チューリヒ 5000m 12:41.86
1998.02.15 バーミンガム 2000m(i) 4:52.86*
1998.06.15 ヘンゲロ 10000m 26:22.75
1998.06.13 ヘルシンキ 5000m 12:39.36
1999.02.14 バーミンガム 5000m(i) 12:50.38
2002.12.11 ドーハ 10km(r) 27:02
2003.02.21 バーミンガム 2mile(i) 8:04.69*
2005.09.04 ティルビュルヒ 10mile(r) 44:23*
15km(r) 41:22
2006.01.15 フェニックス half(r) 58:55
20km(r) 55:48
2006.03.12 アルフェンアンデンレイン25km(r) 1:11:37※EPO検査が行われなかったため非公認
2007.06.27 オストラバ 1時間 21285m
20000m 56.26.0(56.25.98)
*はIAAFの公認種目ではないため、WR(世界記録)ではなくWB(世界最高)。
(i)は室内種目 (r)はロード種目。
'90年代の後半から、彼がマラソンを走れば、2時間3分台は可能だと言われ続けてきた。初の国際マラソン(10代の頃に、アジスアベバでマラソンを走っていたといわれている)となった'02年のロンドンでは2時間6分35秒で3位。この時の2位は4年前にベルリンで世界新記録を作ったポール・テルガトであり、優勝したのは、テルガトの前の世界記録保持者のカリド・ハヌーシだったのだ。以後、6回マラソンを走り、優勝は3回。昨年のベルリンで、2時間5分56秒の自己ベストで優勝し、年末の福岡でも「皇帝の走り」を見せつけた。しかし、今年のロンドンでは途中棄権。既に34歳を迎え、限界説も出たが、この6月に1時間走の世界記録を作り、健在ぶりを見せた。
ベルリン・マラソン、今年は4万人(!)ものランナーが出場、スタート地点には、坂本直子の姿も見られる。シドニー五輪で7位入賞以来3年ぶりのマラソン出場だ。
日本からは他にも昨年のこの大会で3位に入賞した梅木蔵雄、アジア大会4位の入船敏、30kmロードではサブ90(分)の記録を持ちながらマラソンの実績がない瀬戸智弘がエントリー。
スタート時の天気は曇り、気温13.6℃、湿度73%。雨上がりのひんやりとした空気が画面から伝わる。
5人のペースメイカーに囲まれたハイレ、赤いランシャツに黒いパンツ。1km過ぎて他のランナーを置き去りにしていく。彼が希望したペースは中間点で1時間2分30秒。
カメラは女子の先頭集団とも煩雑に切り替わる。トップは昨年優勝のゲテ・ワミ。坂本も女子の2位集団につけている。今回の放映は、地元放送局が作成した国際映像を見ながら、フジテレビのアナウンサーが実況を担当し、金哲彦氏が解説するというスタイル。日本人女子ランナーのタイム・トライアルでなければ、地上波では放映されないが、その時の日本人女子ランナーばかりを映し出す中継とは異なる、「本来のベルリンマラソンの姿」を見ている。
5kmをハイレの集団は14分44秒で通過。梅木と入船も含む2位集団も14分59秒で通過だ。女子の先頭、ワミは16分33秒で通過。2時間20分を切るペースだ。2位の坂本も17分12秒、25分台ペースで通過だから悪くない。
ハイレは小柄なランナーだ。身長165cm。しかし、金氏に言わせれば
「腰の位置が高いのでストライドが広い。」
だから、身長の高いペースメイカーたちのリズムにしっかりと合っている。
10kmを29分27秒で通過。速いペースで安定している。梅木も入船も29分50秒で通過する2位集団にしっかりつけている。ケニアとエチオピアの選手ばかりの集団の中では一際目立つ。オーストラリアのリー・トループもついている。
ワミも10km通過。33分21秒。2時間20分を少し上回るペース。彼女のストライドも広い。頭1つ大きな男子ランナーと全く変わりない。
瀬戸智弘の姿も映し出される。2位集団から約20秒遅れの第3集団の中心に位置取っている。ここにもペースメイカーがいる。ちょうどサブテンのペースだ。アナウンサーがしきりに「初完走を目指す」と口にしているが、瀬戸、今年のびわ湖、2時間30分オーバーであるが完走していたはずだが。
レースは完全に3つに分かれた。ハイレのタイムトライアル、そして男子の2位争いと女子のレース。
ハイレは時計をしていない。それでいて、正確なペースを刻み続けている。15kmを44分16秒で通過。2時間4分31秒が予想ゴールタイムだ。4年前のテルガトが2時間4分55秒でゴールした時よりも、30秒も速い。
最近の欧州の都市マラソンでは、ナンバーカードの前面に、ランナーのファースト・ネームをプリントしている。ハイレも「HAILE」のカードを付けているが梅木も名前入りのカードを付けている。昨年の3位入賞者として丁重に扱われているのだろう。ただし、その時はハイレとは8分近い差をつけられていた。昨年のレースは大荒れでハイレが5分台でゴールしたのに、2位以下は全て10分オーバだった。
ワミも15kmを49分58秒で通過。2位の坂本は1分35秒遅れで通過。
(つづく)
※ハイレの世界新記録リストは、くろまきさんが作成したものを引用させていただきました。
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