落葉松亭日記

ニュース・評論スクラップ、凡夫の日々雑感、山歩記など

加瀬英明氏「日本の政治風土を考える・総理と大統領の違い」

2014年12月02日 | 政治・外交
■「加瀬英明のコラム」メールマガジン<info@kase-hideaki.co.jp>
日時: 2014年12月2日 02:00:06JST
件名: 日本の政治風土を考える 総理と大統領の違い
http://www.kase-hideaki.co.jp/magbbs/magbbs.cgi

 10月に、ワシントンに戻った。国務省の元日本担当者で、国防大学の教授をつとめている友人と、昼食をとった。
 すると、「安倍首相は日本にとって、久し振りに世界に通用するリーダーだ。ところが、安倍内閣は順調だったのに、どうして2年しかたたないのに、大幅な内閣改造を行ったのか」と、たずねられた。
 私は「『指導者(リーダー)』という言葉は、日本語に明治に入るまで、存在していなかった。日本は決定が合議(コンセンサス)によって行われたから、リーダーという西洋語が入ってきた時に、新しい翻訳語が必要となったために、造ったものだ」と、説明した。

もちろん、日本には、今日でもリーダーはいない。

 アメリカの大統領
 アメリカの大統領をとれば、本来の言葉どおりの指導者(リーダー)であって、かつて絶対権力を握っていた王に近い。
 閣僚も、各省庁の幹部も、上から下まで「プレジデンシャル・アポインティ」(大統領任命官)と呼ばれて、大統領によって任命されて、その地位にいるから、全員が大統領の代理人である。1人ひとりが、“大統領の人格の延長”であるとされている。

 指導者も独裁者も輸入語
 ところが、日本は歴史を通じて合議制をとってきたから、「指導者」という言葉も、「独裁者」という言葉も、明治に入ってからしばらくたつまで、存在していなかった。2つとも、いわゆる明治翻訳語である。
 日本の閣僚は、首相の代理人ではない。そこで、西洋人には理解しがたいことだが、首相が与党の支持をとりつけるために、内閣を頻繁に改造して、閣僚を入れ替えなければならない。

 『雙解英和大辞典』をひいてみると
 私は神田の古本屋で求めて、いまから130年あまり前になる明治25(1892)年に発刊された、『雙解英和大辞典』(東京共益商社)を私蔵している。
 分厚い辞書で、1288ページにわたる。先人たちがいかに英語と苦闘したか、偲ばれる。
 この辞典でリーダーleaderをひいてみると、「案内者、嚮導(きょうどう)者、先導者、指揮者、首領、率先者、巨魁(きょかい)、総理、首唱者」と説明されている。まだ、「指導者」という言葉がなかった。
 今日では、「独裁者」という言葉も、日本語のなかにすっかり定着しているが、ディクテーターdictatorをひくと、「命ズル人、独裁官、主宰官(危急ノ時ニ当リテ一時全権ヲ委ネラレタル)」としか、説明されていない。

 比較宗教と神話の研究

 私は比較宗教と神話の研究者であるが、世界の文化のありかたを、それぞれの宗教と神話によって、説明することができる。

 日本の神話の最高神は女性
 日本神話では、女神の天照大御神が最高神でいらっしゃる。
 至上神が、女性であるのは、他の主要な神話にみられない。
 中国の最高神である天帝は、男だ。朝鮮の檀君(タンクン)神話の至上神は上帝恒因(ソンジェファンイン)であるが、やはり男性神である。

 ギリシアの最高神
 ギリシア神話では、男性神のゼウスが最高神である。ローマ神話のユピテルも男であって、ゼウスと同じように雷を武器として、高天から世界を支配する。北欧神話の最高神で、男神のオーディンは風の神であり、「吹く」という意味だ。どの宗教も、神話も、それぞれの地域の人々が造った、いってみれば民芸品なのだ。

 インドの最高神
 インドのヒンズー神話の最高神も、男性だ。古代エジプトの最高神のラーも、男性神であって、太陽神である。バビロニア神話と、ペルシア神話の主神であるマルドゥクと、アフラ・マズダーも、男性神である。

 これらの最高神は、絶対権力をもっているリーダーである。
 神話を古代人による造り話だといって、斥けてはなるまい。神話はそれぞれの文化を、模している。
 日本神話を読むと、今日でも日本人のありかたが、あの時代からほとんど変わっていないことを、教えてくれる。

 天の岩屋戸の物語
 天照大御神が、天の岩屋に籠(こも)られると、全宇宙が暗闇に閉ざされてしまった。
 八百万(やおよろず)の神々が、天(あめ)の安(やす)の河原に慌てて集まって、どうしたらよいものか、相談――神謀(かむばか)る。さまざまな知恵が、講じられる。
 天の岩屋戸の物語は、きわめて日本らしい。
 八百万(やおろず)の神々が、「神集(かむつど)ひ集(つど)ひまして神謀(かむばか)る」が、リーダーが不在なのだ。他国の神話には、このような場面はみられない。他の国々の文化であれば、全員をまとめて決定する主神がかならずいる。

 聖徳太子が『十七条憲法』
 そのはるか後の604(推古12)年に、聖徳太子が『十七条憲法』を制定した。
第10条目では、「自分だけが頭がよいと思ってはならない」と、諭している。第17条では、「重要なことを、ひとりで決めてはならない。大切なことは、全員でよく相談しなさい」と、定めている。
 このような衆議による伝統は、神代からあったものだ。
 「神話」という言葉も、明治に入るまでは、日本語のなかに存在しなかった。
 「神話」も英語のミソロジーmythologyを訳するために造られた、翻訳語である。
 先の英和辞典でmythologyをひくと、まだ「神話」という訳語がない。「神祇譚、神代誌神怪伝(異教ノ)」としか、説明されていない。

 「ふること」の意味
 徳川時代が終わるまでは、神話を「ふること」といった。古事(ふること)、古言(ふること)という漢字が、あてられた。『古事記』は「ふることぶみ」と、読む。
 このごろでは、日本民族の成り立ちである神話を否定して、原発の「安全神話」が崩壊したといったように、現実から遊離した造りごとか、虚構といった意味で使われている。
 だが、明治訳語はいまだに新入りであって、私たちから遠いところにあるはずだ。「神話」は、「ふること」と呼びたい。

 女親のふところ包む親心
 男親が子どもたちに優劣を競わせて、規律を課すのに対して、女親はできる子も、できない子も均しく守って、暖かく包む。女性を最高神とする日本は、優しい文化であってきた。

 国の呼び名「母国」の暖かさ
 日本では祖国を指して、「母国」としか呼ばない。英語、ドイツ語ではファーザーランド、ファーターラントという。フランス語にはラ・パトリ――父国という、表現しかない。
 大化改新が行われた皇極4(645)年に、皇極天皇が詔(みことのり)を発して、「独(ひと)リ治ムルベカラズ。民ノ扶(たす)ケヲ俟(ま)ツ」と、述べている。衆議を定めている17条憲法と、同じものだ。

 このようなことは、あの時代に専制政治体制がとられていた、中国、朝鮮、ヨーロッパなどの諸国では、考えることができない。
 何ごとも合議によるから、謙虚である。日本の歴代の天皇は、国土が天災によって襲われると、自分の過ちであり、徳が備わっていなかったからだといって、反省する詔をしばしば発してきた。

 天皇は民と共に
 平城天皇(在位774年から824年)は、大規模な水害に見舞われた後に、「朕の真心が天に通じず」天災を招いたが、「この災いについて考えると、責任は朕一人にある」と詔のなかで、自らの不徳を責めている。
 このような詔は、平城天皇だけに限らず、聖武天皇、清和天皇などの多くの天皇によって発せられている。他のリーダー諸国では、ありえないことだ。
 江戸時代が終わるまで、上に立つ者は、頭(おかしら)、頭目、頭立(かしらだつ)、重立(おもだて)、主立(おもだて)などと呼ばれたが、合議によって、人々を統率した。

 「自然」という言葉も、ネイチュアの明治訳語である。それまで、日本には人とネイチュアを区別するような、発想がなかった。
 いまでは、「神話」という言葉が「古事(ふること)」を置き換えている。
 西洋に傾(かぶ)くようになって、日本人らしさが失われるようになっている。



台湾統一地方選挙・国民党惨敗

2014年12月02日 | 政治・外交
民進党に惨敗した台湾国民党 「中国政府もショック」
http://www.epochtimes.jp/jp/2014/12/html/d38098.html

【大紀元日本12月1日】29日に投開票された台湾次期総統選の前哨戦となる統一地方選挙は、与党国民党の大敗、最大野党民進党の圧勝で幕を閉じた。親中派の国民党の惨敗について、大紀元時報米国本社のコラム二ストは「中国政府も大きなショックを受けたに違いない」と指摘した。

 6直轄市を含む22の県市のトップや地方議員など九つの選挙を同時に行う台湾史上最大規模の選挙戦。総人口の約7割を占める6直轄市長選で国民党は新北市のみ死守した。22の県市のトップ選挙においては、国民党の6県市に対し、民進党は倍以上の13の県市で勝利を収めた。

 国民党の党首、現職の馬英九総統は29日夜、敗北を認めて支持者に謝罪した。

 投票所の出口調査によれば、民進党と無党派に若者層の支持が集まったほか、30~50代の従来の国民党支持層の票も大量に流入した。有権者が馬政権にはっきりと「ノー」を突き付けた選挙結果ともいえる。

 馬英九総統は2008年の就任以来、両岸の経済・貿易往来を強化する対中融和策を推進してきた。また、中国資本が台湾メディアに参入するなど、中国政府の台湾に対する各方面の影響力が日増しに強まっている。市民の間では、この現状への懸念が広がる一方だ。今年3月、中国・台湾間の市場開放を目指す「サービス貿易協定」の調印に反対する学生たちが立法院(国会)を占拠し大規模な抗議運動を引き起こした。また、格差社会の広がりや住宅価格高騰、食の安全問題など馬政権に対する有権者の不満も高まっている。

 今年6月から続いてきた香港での学生ら民主派の抗議活動も、一国二制度の形骸化を台湾社会に印象付けた。そもそも、一国二制度は当初、台湾との統一のために提案された構想だった。香港への露骨な政治干渉に多くの台湾人は「明日は我が身」と危惧している。

  中国大陸・国務院台湾事務弁公室(国台弁)の張志軍主任が、柯文哲氏が当選した場合、同氏も対話・交流の基礎として92年コンセンサスの共通認識を持つことを望むとするコメントを出したが、柯氏は選挙活動中、「92年コンセンサスはどういう内容ですか」と疑問視する発言をした。

 今回の選挙結果を受け、与党国民党の主導権が弱まるのは避けられない。中国政府は今後、両岸の交流に慎重的な民進党と接しなければならないことになる。大紀元時報米国本社のコラム二スト楊寧氏は、「中国政府にとって大きな悩みであるに違いない」と指摘した。
(翻訳編集・叶子)

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成26年(2014)12月1日(月曜日)通巻第4409号

http://melma.com/backnumber_45206/

台湾統一地方選挙で国民党が惨敗したが
  すでに次の運動は2016年、総統選挙へ移行


 11月29日に投開票が行われた台湾の統一地方選挙で、中国国民党は歴史的な大敗を喫し、江宜樺・行政院長(首相に相当)が引責辞任した。
 6つの直轄市で中国国民党候補が勝ったのは新北市のみ。それも民進党候補に約2万4千票差に迫られる接戦だった。この直轄市6市を含む22の県・市で、中国国民党は15席から6席となり、民進党が6席から13席に倍増、無所属も1席から3席に増えた。
 中央選挙委員会によると、投票率は67.59%、有権者数は1851万1356人。29日夜11時25分にすべての開票作業が終わった。
 今回選挙の最大の特徴は台北市に現れている。組織に頼らない無所属の柯文哲候補が24万票もの大差をつけ、中国国民党の連勝文候補を下した。連候補は、中国国民党の正統を象徴する連戦・中国国民党名誉主席の御曹司。一方の柯候補は台湾大学医学部の外科医で無所属。いわゆる藍(ブルー)と緑(グリーン)という2大政党によるイデオロギーのぶつかり合いとはならなかった。

 柯候補は民進党に頼ることなく、自らの力で民意に訴えた。民進党は遠巻きに支持するだけだった。台北市民は柯候補を選んだ。
 これは、ひまわり学生運動の学生たちが示した構図だ。民進党などの政党に頼ることなく、自らの力で立法院を占拠し、中国とのサービス貿易協定に異を唱えたのとまったく同じ構図だ。民進党は学生たちを遠巻きにして応援するしか術がなかった。
 選挙中、連候補の父の連戦氏は、ひまわり学生運動世代について「社会の不安定を招いている」と批判した。しかし、民意はひまわり学生運動を支持した。
 今回の選挙で、台湾の民意は、政党によるイデオロギー対立を望んでいないことが明らかになった。社会の不安定を招いていたのは政党対立だったのだ。台湾の民主主義は新たな段階に入った。
 今回の選挙結果で、2016年の初頭に行われる立法委員と総統の国政選挙では、俄然、民進党が優勢になったのかもしれない。しかし、この見方は浅いのではないだろうか。
 当選した柯文哲氏が記者会見で「政治を信頼することはすなわち良心を取り戻すことだ」と述べたように、台湾の民意は政党のイデオロギー対立ではなく、台湾人としての良心を取り戻すことにある。民進党は大幅な路線修正を求められている。大勝して浮かれているときではない。
       ◇  ◇  ◇
2014九合一選舉 各縣市長選舉結果【自由時報:2014年11月30日】
http://www.ltn.com.tw/
(カーソルを選挙区に合わせると、全候補者の政党や得票数、得票率が示されます) 次点との差が3万票を切った接戦地区は以下の通りです。

新北市:24,528票
朱立倫(国民党)959,302票(50.06%) 
游錫●(民進党)934,774票(48.78%) ●=方方の下に土

桃園市:29,281票
鄭文燦(民進党)492,414 票(51.00%)
呉志揚(国民党)463,133票(47.97%)

新竹県:5,611票
邱鏡淳(国民党)124,309票(46.94%)
鄭永金(無所属)118,698票(44.82%)

南投県:5,642票
林明?(国民党)149,361票(50.96%)
李文忠(民進党)143,719票(49.04%)

台東県:10,412票
黄健庭(国民党)64,272票(54.41%)
劉櫂豪(民進党)53,860票(45.59%)

澎湖県:5,631票
陳光復(民進党)29,164票(55.34%)
蘇崑雄(国民党)23,533票(44.66%)

金門県:8,819票
陳福海(民進党)23,965票(52.77%)
李沃士(国民党)15,146票(33.35%)

        (「李登輝友の会メルマガより転載」)
         ◇□ ▽□