落葉松亭日記

ニュース・評論スクラップ、凡夫の日々雑感、山歩記など

原油安

2014年12月20日 | 政治・外交
一頃170円/Lだったガソリンが今や140円台、有り難いことである。
しかし、これでもまだ原油安を充分に反映しておらず、本当に安くなるのはもう少し先とのこと。
なぜ安くなったのかは、中東やロシア等の産油国やアメリカのシェールガスなどの状況がからみ、武器を使わない戦略的経済戦らしい。
原油安で貿易赤字も縮小傾向、日本にとっては結構なことと思いきや、来年は経済危機が来るかも知れないという説もある。
鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第169号(12月19日)
http://melma.com/backnumber_190875/

サウジの原油戦略

 原油価格が1バーレル60ドルを割り込んだ。5年5か月ぶりだという。世界で最も効率よく原油を生産できるのはサウジアラビアである。従ってサウジが原油を増産すれば、原油価格は下がり、減産すれば価格は上がる。
 つまりこの低価格もサウジの戦略である。ではサウジの狙いは何か?一説には米国のシェールガス開発を阻止する為だとも言われるが迂遠な説明であろう。

 現在のサウジアラビアにとって最大の脅威はイスラム国である。イスラム国はイラクの原油精製施設を占拠し原油を密輸して軍事費を賄っている。だから原油価格の低下はイスラム国の軍事費減となる訳だ。
 これは同時にサウジにとって長年の敵であるイランに対する打撃にもなる。イランは1979年のホメイニ革命以来経済制裁を受けてきたが、やはり原油を密輸することで軍事費を賄い、核ミサイル開発を推進してきたのである。
 だが価格低下の影響はこれらに留まらない。ロシアも原油収入で軍事費増額を図ってきたから当然国防戦略の変更を迫られることになる。ウクライナ問題でも妥協的にならざるを得なくなるから西側にとっては歓迎すべき事態である。
 中南米の反米主義国ベネズエラも原油収入があればこそ米国に対して強気でいられた訳で、価格が低下すれば盟友キューバを支援できなくなる。キューバは悲鳴を上げて米国との関係改善に乗り出さざるを得なくなった。

 こうして見るとサウジの原油戦略は日米を含めた西側陣営にとって好ましい戦略だといえる。だがこの戦略に問題はないかと問われれば、やはり問題はある。それは他ならぬサウジアラビア自身の問題だ。
 サウジもまた国庫収入の殆ど全てを原油収入に頼っている。サウジ王室は日本の皇室と異なり歴史的な権威を持たない。原油で得た莫大な収益を国内の有力部族にばら撒いて統一を維持している。
そんなサウジアラビアにとって原油価格の低下の長期化は実は国家分裂の危機をはらむのである。

軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
著書:
「領土の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=321212000089
「国防の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201203000167
「戦争の常識」(文春新書)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166604265
「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)
共著:「総図解よくわかる第二次世界大戦」
http://www.kadokawa.co.jp/product/301310010411/
監修:
「イラスト図解 戦闘機」
http://www.tg-net.co.jp/item/4528019388.html
「超図解でよくわかる!現代のミサイル」
http://www.tg-net.co.jp/item/486298102X.html?isAZ=true
インターネット動画配信中:
「現代戦闘機ファイル」
http://www.nicovideo.jp/watch/1411697197
「よくわかる!ミサイル白書」
http://www.nicovideo.jp/watch/1383640409

アングル:原油安で貿易赤字は来春半減か、不安は「逆石油ショック」 2014年 12月 17日 15:18 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0JV0E020141217/?sp=true

[東京 17日 ロイター] - 11月貿易赤字は、前年比で31.5%減と大幅に縮小した。内需停滞で輸入数量が減少したことに加え、原油輸入価格の前年比下落も赤字縮小に直結した。
しかし11月の原油の輸入価格は1バレル=87ドル程度と、足元の大幅な相場下落からみればまだかなり高めで、来春には貿易赤字が現状の半分程度に縮小する見通しも浮上している。逆石油ショックが起これば、輸出もマイナスに転落して経済収縮に直面するリスクもある。
11月の貿易赤字は前年同月比で3割程度縮小し、8900億円となった。円安で輸入価格は増加したが、内需の低迷で輸入数量が大きく減少したためだ。原油輸入も円安による価格上昇を原油安が緩和した面もある。
もっとも原油価格の下落はまだ十分反映されておらず、1バレル=87ドル(ニッセイ基礎研試算)での輸入価格となっている。年初の110ドル程度に比べると2割程度下落しているが、現状の60ドル割れの原油相場が反映されるのはもう少し先となる。
相場下落が入着原油に反映されるまでのタイムラグや、為替相場が1年前の1ドル100円程度から116円程度(11月平均)まで円安が進行したことも、円ベースの輸入価格がさほど下がらないことに影響している。

年間で27兆円の鉱物性燃料の輸入金額が2割低下しただけでも6兆円分の輸入額削減につながり、年間貿易赤字額が半減されることになる。
ニッセイ基礎研究所・経済調査部長・斉藤太郎氏は「現時点の9250億円の赤字(季節調整済)は、15年春ごろには5000億円程度の赤字まで縮小する」と指摘、来春にも赤字が半減するとの予測も浮上している。
一方、11月の輸出金額は5%程度の増加となった。数量ベースでは9、10月の持ち直しから11月に1.7%減と、一進一退が続いているものの、ドル建て分の輸出は円安の効果で金額増につながった。
今後の輸出環境を見渡せば、しばらくは円安の恩恵で輸出金額自体は伸びていくことになりそうだ。

ただ、輸出環境については、原油価格の下落が世界経済への不安を誘い、米国経済のみが好調さを維持したとしても、世界全体の低成長リスクはぬぐえない面がある。
それでも輸出環境の改善を見通すエコノミストも多い。「米国向け輸出の主力製品である自動車については、国内メーカーの現地生産化の進展によって伸び悩んでいるものの、企業部門の回復に伴い、資本財を中心とした輸出の増加が期待される。米国依存度が高い中国以外のアジア新興国経済に関しては、米国の景気拡大にけん引されて増勢を強める」(大和総研・チーフエコノミスト・熊谷亮丸氏)といった見方がある。
こうした輸出金額の改善が期待通りに進めば、輸入額削減とあいまって貿易赤字の縮小にも寄与するはずだ。

原油安はサウジアラビア初め中東諸国の減産の意思が見られない中で、底が見えない状況が続いている。原油輸入価格が円安に阻害されずにストレートに輸入金額の減少に反映されれば、懸案のエネルギーコスト上昇から解放される。
日本経済全体に交易利得をもたらせば、それが企業や家計にもさまざまな恩恵が及ぶとして、政府としても、急速な円安の一段落と原油価格の下落のシナリオが来年の日本経済に恩恵をもたらすと期待感を示している。
ただ、その前に原油価格の下落が急速に進んでいることで、新興国懸念を起点として世界のマーケットに「逆石油ショック」が波及しかねない情勢も見え始めてきた。株安が広がれば、リスクオフ心理が実体経済を収縮させる懸念も、足元で急速に広がっている。
そのケースでは、輸入額とともに輸出額も減少に転じ、経済収縮のスパイラルに陥る危険性もある。プラスになるかマイナスに転ぶか──。その帰すうは、原油価格の下落ペースが握っていると言えそうだ。
(中川泉 編集:田巻一彦)

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成26年(2014)12月19日(金曜日)通巻第4419号
http://melma.com/backnumber_45206/

ロシア、想定外の経済苦境だが西側へ衝撃的な対抗策を発表
ルーブル下落をいう経済危機は「克服可能」と表明(プーチン大統領)


 ロシアのプーチン大統領は12月18日、恒例の記者会見をおこない、「最悪のシナリオは、このルーブル安、原油下落という経済苦境を脱するのに二年かかる」とした。「しかしながら資本規制は見送る」。
 原油安はロシアばかりか米国を撃った。シェールガス開発が一気に挫折する展望となって、サウジアラビアの思惑は着々と図に乗っている。
 三月のクリミア併呑とウクライナ問題を契機に欧米はロシア制裁にでた。濾紙ロシアは農作物輸入を留めるなど対抗措置を講じた。
 ロシアに経済政策を継続する欧米には、一方でドイツのようにエネルギーをロシア依存する国があってEUの制裁強硬路線に反対する国もがあり、他方ではフランスのように武器取引を制限する国などとの温度差が顕著である。

 ブリスベンのG20で、プーチンは予定を切り上げて急遽帰国した「事件」があった。プーチンは前夜、ヒルトンホテルでメルケル独首相と六時間密室の会談をしており、ウクライナ問題を討議したが、その翌日だけに様々な憶測を呼んだ。
 メルケルは東独出身でロシア語が流ちょう、プーチンはKGB時代にドレスデンに滞在したためドイツ語が流ちょうである。

 プーチンが帰国後、ロシアは重大な路線変更を発表した。
 ロシアは原油とガスの輸送ルートを大幅に変更すると衝撃の発表だっただが、日本のマスコミでは話題となっていない。不思議である。
 つまりウクライナ経由の対欧輸送ルートをトルコ経由とするのである。
EU諸国のなかでも、ロシアへのエネルギー依存度に濃淡があって、フランスから南欧にかけてはロシアとは貿易額もエネルギー依存度も低いから衝撃は薄いが、このロシアの路線変更に狼狽した国々がある。

 ▼ユーラシアの新しいグレートゲームが始まった
 こうしたプーチン大統領の西側接近外交から東へ向きを変えるという外交路線の変更はピョートル大帝以来のロシアの基本姿勢の変更にいたるか、どうか。ともかくG20から帰国後のプーチンは中国寄りをさらに鮮明にし、その上でトルコに急接近した。また先週はインドを訪問している。
 「ノーザンストリーム」(北海からドイツへのルート)はそのままだが、「サウザンストリーム」(黒海からルーマニアを経由して欧州へ輸出)をトルクメニスタン、アゼルバイジャンからトルコを経由してバルカンで分岐させ、オーストリア、イタリアなどへの輸出ルートに変更する。
このための投資は50億ドル。半分をガスプロムが負担するとした。
従来の「サウザンストリーム」は黒海からブルガリアを経由する計画だったため「通過料」を失うブルガリアは欧州議会に対ロ制裁を解くよう強く抗議した。

最大の裨益者はトルコである。
しかもトルコはイラン原油がイラクを経由してシリアに運ばれる輸送ルートの建設に反対し、カタールのガスをイラクからシリア経由トルコへ運ぶルートを提案していた。
小誌はトルコのイスラム回帰と脱欧州の動きに注目してきたが、欧米マスコミで悪評高いエルドアン大統領は「勇士連合」に加わったもののISIL対峙には消極的であり、むしろオスマントルコ帝国復活の夢を描いてきた。

 2015年の展望は経済危機が続行され通貨戦争が再発することになるだろう。