安倍首相の訪米、演説、日米共同声明について高評価が続いている。
今や第一次安倍内閣当時のひ弱な感じはない。
今や第一次安倍内閣当時のひ弱な感じはない。
鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第186号(5月1日)
http://melma.com/backnumber_190875/
*パーフェクト・ゲーム
今回の安倍総理の訪米について、相変わらずの対米従属外交と批判する向きがあるようだが、それは全く違う。寧ろ逆で戦後続いてきた対米従属からの脱却を目指したものであり、そしてそれに成功したとも言える。
3月上旬、イスラエルのネタニヤフ首相が米議会で演説した。イスラエルは中東における米国にとっての最重要同盟国であり、その演説は今回の安倍総理と同様、上下両院合同会議の場で行われた。
ところが安倍総理と決定的に違うのは、ネタニヤフ首相はオバマ大統領と会談しなかった点だ。ネタニヤフは米議会の招きで訪米したのであり、オバマ政権が招待したわけではなかった。 米議会は上下両院とも共和党が多数を占め、民主党のオバマ政権とことごとく対立している。オバマ政権の中東外交に批判的なイスラエルの首相を米議会が招聘しホワイトハウスが不快感を示していたのである。
永遠の同盟の様に言われてきた米英関係も実は亀裂が生じている。オバマの英国嫌いは就任当初から徹底していて、ホワイトハウス入りするや、執務室に置かれていたチャーチルの胸像を英国に返還した。
チャーチルは米英同盟の定礎者であるから、この行為は米英同盟の破棄通告と受け取られかねない。中国の提唱するアジアインフラ投資銀行(AIIB)構想がこれだけ勢力を得たのも、米国の反対を無視して英国が参加を表明したためだ。
おかげで欧州各国が続いて参加表明し、AIIBは米国経済を脅かしかねない経済圏構想の様相を示し始め米中対立の新たな火種となった。米国の外交の手詰まりはもはや誰の目にも明らかだ。 これをオバマの外交能力だけに帰する訳には行かない。むしろ米国が外交の方向性を喪失した。いいかえれば米国民の間に外交の方向について合意がなくなったのが原因だと見た方がいい。
そんな米国に安倍総理は地球規模の日米同盟を提案した。もとより単なる思い付きで言い出した訳ではない。一昨年2月に訪米した際、安倍総理は日米首脳会談後の講演で「日米同盟はアジアのみならず中東、アフリカの安定にも有効」だと述べた。
本誌ではこれを「復活・拡大した日米同盟」と形容したが(2013年2月24日号)、
http://melma.com/backnumber_190875_5768113/
この時点で既に安倍総理が地球規模の日米同盟を模索していた事は明らかだ。
今回の訪米に先立ちインドネシアのジャカルタで開かれたアジア・アフリカ会議で中国の海洋進出を牽制し、AIIB構想にも釘を刺した。これに力を得たアセアン首脳会議は中国の南シナ海進出を懸念する議長声明を出した。
その安倍総理をオバマ大統領は暖かく迎え、上下両院議員は拍手喝采した。米国の政府も議会も、与党も野党も一致して安倍構想を受け入れた訳だ。方向を見失った米国の外交に安倍総理は明確な方向を与えたのである。
もはや破綻寸前と見られていたTPPは対中戦略として再構築され、反日の象徴的存在だった韓国の女性大統領パク・クネは胃けいれんで入院し、北朝鮮の金正恩はロシアで開かれる反ファシズム記念式典への出席を取りやめた。
パーフェクト・ゲームである。
軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
著書:
「領土の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=321212000089
「国防の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201203000167
「戦争の常識」(文春新書)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166604265
「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)
共著:「総図解よくわかる第二次世界大戦」
http://www.kadokawa.co.jp/product/301310010411/
監修:
「イラスト図解 戦闘機」
http://www.tg-net.co.jp/item/4528019388.html
「超図解でよくわかる!現代のミサイル」
http://www.tg-net.co.jp/item/486298102X.html?isAZ=true
インターネット動画配信中:
「現代戦闘機ファイル」
http://www.nicovideo.jp/watch/1411697197
「よくわかる!ミサイル白書」
http://www.nicovideo.jp/watch/1383640409
http://melma.com/backnumber_190875/
*パーフェクト・ゲーム
今回の安倍総理の訪米について、相変わらずの対米従属外交と批判する向きがあるようだが、それは全く違う。寧ろ逆で戦後続いてきた対米従属からの脱却を目指したものであり、そしてそれに成功したとも言える。
3月上旬、イスラエルのネタニヤフ首相が米議会で演説した。イスラエルは中東における米国にとっての最重要同盟国であり、その演説は今回の安倍総理と同様、上下両院合同会議の場で行われた。
ところが安倍総理と決定的に違うのは、ネタニヤフ首相はオバマ大統領と会談しなかった点だ。ネタニヤフは米議会の招きで訪米したのであり、オバマ政権が招待したわけではなかった。 米議会は上下両院とも共和党が多数を占め、民主党のオバマ政権とことごとく対立している。オバマ政権の中東外交に批判的なイスラエルの首相を米議会が招聘しホワイトハウスが不快感を示していたのである。
永遠の同盟の様に言われてきた米英関係も実は亀裂が生じている。オバマの英国嫌いは就任当初から徹底していて、ホワイトハウス入りするや、執務室に置かれていたチャーチルの胸像を英国に返還した。
チャーチルは米英同盟の定礎者であるから、この行為は米英同盟の破棄通告と受け取られかねない。中国の提唱するアジアインフラ投資銀行(AIIB)構想がこれだけ勢力を得たのも、米国の反対を無視して英国が参加を表明したためだ。
おかげで欧州各国が続いて参加表明し、AIIBは米国経済を脅かしかねない経済圏構想の様相を示し始め米中対立の新たな火種となった。米国の外交の手詰まりはもはや誰の目にも明らかだ。 これをオバマの外交能力だけに帰する訳には行かない。むしろ米国が外交の方向性を喪失した。いいかえれば米国民の間に外交の方向について合意がなくなったのが原因だと見た方がいい。
そんな米国に安倍総理は地球規模の日米同盟を提案した。もとより単なる思い付きで言い出した訳ではない。一昨年2月に訪米した際、安倍総理は日米首脳会談後の講演で「日米同盟はアジアのみならず中東、アフリカの安定にも有効」だと述べた。
本誌ではこれを「復活・拡大した日米同盟」と形容したが(2013年2月24日号)、
http://melma.com/backnumber_190875_5768113/
この時点で既に安倍総理が地球規模の日米同盟を模索していた事は明らかだ。
今回の訪米に先立ちインドネシアのジャカルタで開かれたアジア・アフリカ会議で中国の海洋進出を牽制し、AIIB構想にも釘を刺した。これに力を得たアセアン首脳会議は中国の南シナ海進出を懸念する議長声明を出した。
その安倍総理をオバマ大統領は暖かく迎え、上下両院議員は拍手喝采した。米国の政府も議会も、与党も野党も一致して安倍構想を受け入れた訳だ。方向を見失った米国の外交に安倍総理は明確な方向を与えたのである。
もはや破綻寸前と見られていたTPPは対中戦略として再構築され、反日の象徴的存在だった韓国の女性大統領パク・クネは胃けいれんで入院し、北朝鮮の金正恩はロシアで開かれる反ファシズム記念式典への出席を取りやめた。
パーフェクト・ゲームである。
軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
著書:
「領土の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=321212000089
「国防の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201203000167
「戦争の常識」(文春新書)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166604265
「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)
共著:「総図解よくわかる第二次世界大戦」
http://www.kadokawa.co.jp/product/301310010411/
監修:
「イラスト図解 戦闘機」
http://www.tg-net.co.jp/item/4528019388.html
「超図解でよくわかる!現代のミサイル」
http://www.tg-net.co.jp/item/486298102X.html?isAZ=true
インターネット動画配信中:
「現代戦闘機ファイル」
http://www.nicovideo.jp/watch/1411697197
「よくわかる!ミサイル白書」
http://www.nicovideo.jp/watch/1383640409