私はバスが怖い。
車内からボーっと外を眺めている時、路上に片手袋を発見してしまう事がある。私は「出会った片手袋は(死なない限り)必ず撮影する」ということを公言している。
だから、バスから降りる。そして撮りに行く。当然、物凄く無駄な時間とお金のロスになる。必然、バスに乗る時は伏し目がちになる。外の景色を見ないように。
しかし昨日はラッキーだった。車内のチラシ置き場に介入型片手袋。
撮影していると車内の人々に怪しまれる危険性はあるものの、強制的にぶらり途中下車の旅になるよりはずっと良い。
(初めて出会うパターンだな。“ご自由にお取りください”の所に、むしろ置いちゃってるのが良いね~)
などと浮かれてしまったのがいけなかった。つい外を見てしまったのである。そして、しっかり路上に見つけてしまった。
(しまった!)
もう遅い。慌てて降車ブザーを押し、ぶらり途中下車。
(おやおや、ファッション類介入型ガードレール系片手袋ですかぁ~?)
脳内に滝口順平のナレーションが流れる。目的地まではまだ数駅あった。しかしもう一度バスを待って乗るのはなんか嫌だ。私はトボトボと寒い冬の町を歩き始めた。
その夜。母から一通のメールが入った。
「今日、バスに子供用の片手袋がありました」
トータル、なんだかよく分からない一日であった。