もう終わってしまったんですけど、7月18日から10月12日まで東京都現代美術館で開催されていた『ここはだれの場所?』展の事を書きたいと思います。
一般的にはこの展覧会、会田誠さん一家の出品した作品が物議を醸して話題になりました。
しかし今日は別の作家の方の作品について書きたいと思います。それはドイツ人デザイナー、故ヨーガン・レールさんの作品です。
ヨーガン・レールさんは石垣島に暮らしていたそうです。しかし海岸に流れ着く大量のプラスチックゴミに心を痛め、それらを用いて作品を制作する事を決意。拾ってきたゴミを洗浄、色分けしてランプにしたのです。詳しくはこの解説文をご覧ください。
※ちなみに最近の展覧会は撮影OKというのが増えてきましたね。
そうして出来たのがこちらです。
人が捨てていった(あるいは忘れられてしまった)物達に美や意味を見出す。僭越ながら何となく片手袋研究に近いものを感じ、親近感を覚えてしまいました。
しかしさらに片手袋研究と接近するような作品がもう一つあったのです。それがこちら。
何だかお分かりになりますか?これは海岸に流れ着いたビーチサンダルなんです。先程のプラスチックゴミは美しかったですが、人が身に付けるものだとまた違う迫力がありました。
そしてこれを見た瞬間、近年片手袋研究において注目を浴びている、“放置型海岸系片手袋”を思い浮かべたのです。
※発生の経緯など、まだまだ謎が多い存在です
近年、海岸へ行くたびに目を皿のようにして片手袋を探していたのに、ビーチサンダルの存在に気付かなかったことが不思議でなりません。逆に、きっとヨーガンさんの目には片手袋は映ってなかったはず。
事実、会場には石垣島の海岸の写真が展示されていましたが、どの写真にも片手袋は映りこんでいませんでした。石垣島の海岸にだけない、という事は考えられないので、プラスチックやビーチサンダルを撮ろうとするヨーガンさんの目には、片手袋は入らなかったのだと思います。
同じ海岸という場所で、同じ漂着物に、同じような思いを抱きながら、見ているものは違う。やはり人間て世界を見ているのではなく、世界に思いを投影しているのだな、と感じました。
とても面白い展覧会でした。