神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 楽園への疾走

2009-08-08 16:09:40 | SF
『楽園への疾走』 J・G・バラード (創元SF文庫)





嫌な本読んじゃったな、というのが感想。
痛快になれる本もあれば、感傷に浸れる本もあるが、この本はひたすら嫌な感じになる本。

アホウドリを核実験から救うために南太平洋の無人島へ乗り込んだ女性医師バーバラ、16歳の少年ニール、そして、その取り巻きの一団が楽園で狂気に向かって疾走していったという話。

最初は環境保護運動の現実を滑稽に描いた作品かと思った。さすが、バラード、先見の明があると。
しかし、途中から物語は楽園の崩壊を描いた映画『ザ・ビーチ』のようになり、『蝿の王』のようになり……。

バーバラの過去に安楽死のエピソードを置いたのが強烈なミスリードの伏線になっていて、それしかないだろうという真相を覆い隠している。それだけに、バーバラの真意が明らかになったときは、コーヒー吹いたというか、そりゃないだろ的な衝撃が大きかった。いや、それしかないのはわかっていたのだが、そういう意図だったのかいという。

バーバラの主張は狂人の戯言で説得力がないと思うんだが、いったいいつからバーバラはそんな主張をするようになったのかというのはちょっと気になる。島に来る前から狙っていたのか、島に来た後に狂っていったのか。

そもそも、狂ってなんかいない。それは正当な主張であると解釈も出来るだろうが、当の女性はどう思うのだろうか。
男としてニールはうらやましくなんかないです。あれこそディストピア。

そんなこんなで、読み進めるにつれて、どんどんイヤーな感じになっていく小説。
どうしてもイヤーな気分になりたい人にオススメです。

イヤー!!!


[SF] S-Fマガジン 2009年9月号

2009-08-08 15:46:13 | SF
『S-Fマガジン 2009年9月号』 (早川書房)




ずだーん!
いきなり表紙にグインのアップ。栗本薫追悼特集。
やっぱり、グインは加藤直之だよなぁ、と惚れ惚れしてしまう。天野喜孝も悪くないんだけど、他の作品のイメージも強いし。

栗本薫、全仕事リストとか載っているが、あんまり読むトコない。たぶん、まだ衝撃から抜け切れておらず、再評価はこれからなのだろうか。

自分の中で、栗本薫の全作品から、シリーズもの以外で好きな作品を上げろといわれたら、「時の石」かな。
あと、栗本薫くんは好きだったが、伊集院大介はそんなに好きじゃなかったとか。

グインサーガは130巻までリストに載っているので、そこまでは出るということか。

栗本薫の再収録作品を除くと、読みきりは菅浩江のみ。これも栗本薫の死の衝撃がいかに大きかったかの証明のひとつか。




『求道に幸あれ』 菅浩江
 ○:整形手術解禁のモデルコンテストとか、サイボーグ化前提のスポーツ大会とか。
   是か非かと言われれば、是としか答えようが無いが、確かに遺伝子治療と優生主義の境目をどこにおくかは難しい。
   太古のエピソードも無いし、コスメシリーズの最終話っぽい流れかと思ったら、12月号にも継続するらしい。