神なる冬

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コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 無限記憶

2009-08-24 23:44:27 | SF
『無限記憶』 ロバート・チャールズ・ウィルスン (創元SF文庫)





今年の星雲賞を受賞した『時間封鎖』の続編。全3部作予定の第2部。

夜空から星が消えるという衝撃的シーンから始まり、少年の淡い恋物語が壮大な宇宙の物語に繋がる前作は、SF的アイディア、スケール、ストーリーテリング、すべての面で素晴らしく、星雲賞の受賞に依存はない。

しかし、この作品はどうだろう。

前作の設定が無ければ、シャマラン監督の新作映画みたいな感じ。突然、空から奇妙な灰が降ってきて、その吹き溜まりから異様な生態系が現われる。灰の中に取り残された主人公達の運命は!?
特にラスト近くの逃避行なんてそんな感じ。よくショッピングセンターにこもるよね、ああいう映画(笑)

作品中に出てくる名前は“クーブリック”だから、そっちを狙ったのかもしれないけど。

地球を封鎖した存在(仮定体)が、神か、超生命体か、ただのオートマトンか、といった議論はあり、タイトル通り過去のすべての記憶を持っているところまでは明らかになるが……。アーチで繋がった新世界はただの新西部だし、結局、曖昧なほのめかしだけで、驚くような真実が明らかになるわけでもなく。

水準以上の面白さはあるんだけど、前作からの期待感にはぜんぜん答えてくれない肩透かしだった。

3部作の2作目というのは、えてしてこんな感じになりがちだが、3作目の中で「あれが伏線だったのか」と唸る展開があったりするので侮れない。

そんなわけで、この作品の評価は第3部の『Vortex』が出るまで保留。
って、未訳じゃなくて、未刊かよ!