風になれ

大自然のふところで山歩きを楽しむ生活。
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新しい資本主義-希望の大国・日本の可能性

2018-11-02 | Weblog


 ハナ金の夜、原丈人さんの「新しい資本主義-希望の大国・日本の可能性」を読み終えた。2009年5月に発刊された古い本だけど、今読んでも新鮮な切り口で公益資本主義の論理を見事に展開されている。
 実際に今の世界情勢を見ると、原丈人さんの指摘通り、金融工学の限界と金融資本主義の破綻、そしてポスト金融資本主義の公益を見据えた社会経済システム構築の課題が見えてくる。



 日本には古くから近江商人の三方良しの考え方が息づいている。「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」で、売り手と買い手がともに満足するとともに、社会貢献も行うのがよい商売という心得だ。この心得は日本で経営理念や企業哲学の中に脈々と息づいているし、原丈人さんが説く公益資本主義はこの心得に通じるように思える。
 「会社の事業を通じて、会社が関係する経営者、従業員、仕入れ先、顧客、株主、地域社会、環境、そして地球全体に貢献すること」こそが価値として認められる資本主義。
 「企業が事業を通じて社会に貢献し、貢献したことによって儲け、さらに儲けることで社会に貢献するという資本主義」で「人びとが豊かに幸せになることを究極の目的とする資本主義」だ。



 もっぱら資産圧縮するなどして財務諸表を化粧直しすることで短期的にROEを上げて配当性向を高めて株価に結びつけようとするアメリカ金融資本主義とは違う日本独自の公益資本主義だ。
 短期的に利益を最大にすることより長期的な課題に取り組んだ経営の方が株主にとっても長期的にいいことであることは間違いない。米中をはじめとする経済大国の列強諸国の国内情勢がオカシクなっている今、公平性と長期持続性を重視した公益資本主義の道を極めて行ける可能性があるのは世界で日本だけかもしれない。だからこそ日本には世界にあるべき姿を示す責任がありそうだ。



 原丈人さんの本書を読むと終始、論理の展開に波長が合った。そして「大きな希望を世界に発信できる力と素質をもつ国」に暮らす民であることに誇りと責任を感じさせられた一冊だった。