五木寛之さんの「下山の思想」を読了。もはや時代はがむしゃらに華やかな山頂を目指すのではなくて、成熟した時代に入って穏やかな心で下山を楽しむ時代なのだという考え方に共感する。大国のアメリカ、中国、ロシアとは違う日本の地味な国づくり。下山の途中にある今、足元に広がる景色を眺めながら一人ひとりの満足度を高める国づくりは、もったいない精神の息づく日本人の得意技だ。
これからの時代は実り多い成熟した下山をこそ思い描くべきであり、下山のなかに登山の本質を見いだすべきなのだろう。
五木寛之さんの言葉を噛みしめる。
「下山する、ということは決して登ることにくらべて価値のないことではない。一国の歴史も、時代もそうだ。文化は下山の時代にこそ成熟するとは言えないだろうか。
私たちの時代は、すでに下山にさしかかっている。そのことをマイナスと受けとる必要はない。実りある下山の時代を、見事に終えてこそ、新しい登山へのチャレンジもあるのだ。」