ラジオ深夜便「明日へのことば」を聴き、富山県生まれの鉛筆画家の木下晋さんの生き様に引き込まれた。16歳の時、自由美術協会展にクレヨン画を出展し、最年少で入選し注目される。また高校中退で美大をでたわけでもないのに東京大学工学部建築学科講師を10年ほど勤められた異色の画家だ。建築家の安藤忠雄さんも同じ教壇に立たれている。最初、東大の授業で教室に入った時、学生たちが雑談をやめずザワザワとした学級崩壊のような状態だったようだ。助手が「君らは恥ずかしくないのか」と一喝てくれたおかげで静かになったのだとか。
鳶職の父、軽度の知的障害があり放浪癖のある母親のもと、貧乏のどん底の生活保護家庭で育つ。小学校の校長先生の話が凄かった。空腹のあまりパンを盗んで食べた時、児童相談所に来られた校長先生がビクトル・ユーゴーの児童向け「ああ無情」をさりげなく置いて帰られる。それを泣きながら読み、希望の灯を掴み、木下さんが立ち直るきっかけとなる。
ニューヨークで鉛筆画に目覚める話もよかった。瞽女の小林ハルさんとの出会いも運命的だ。
ある女性と駆け落ちをするが、それが今の奥さんで、木下さんのアートのモデルになり、その後、病床に伏された奥さんを長く介護をされている。
波乱に富んだ半生だけど、力強い生き方だなあ。朝からいい話を聴かせてもらった。