『ARAHAN/アラハン』(04)や『相棒/シティ・オブ・バイオレンス』(06)で熱きアクション魂を我々に見せ付けた《新世代韓国アクション映画の旗手》リュ・スンワンの幻の作品を鑑賞することが出来た。その映画とは…『タチマワLee』(98)だ!!
実はこの映画、劇場用作品ではなくインターネットのみで公開された35分の短編映画であるが、監督お気に入りの70年代韓国アクション映画のテイストがモロ画面からにじみ出ていて、「その手」の愛好家であるならば愛さずにはいられない作品である。
ストーリーは(あってないようなものだが)、地方の街にふらり流れてきた好漢・タチマワ・リーが地回りヤクザに絡まれていた女性を救い、チンピラたちはおろかボスまで一網打尽にしてしまうといったもので、キャラクターの行動はもちろん、話の展開までもがすべて「お約束」で構成されている。限られた予算や上映時間を逆手にとってヘンにアーティストぶらず、普通に楽しめる作品になっているのはさすがというべきか。
さっき70年代韓国アクション映画のテイスト…と書いたが、証拠に主人公や主要キャラクターが70年代風ファッションであること(ほかのチンピラたちは今風のカッコをしてるのがおかしい)、リーの台詞回しが(意味は分からんが)大時代的であること等が挙げられ、そのあまりのクサさに映画好きの感性が反応しクスリとさせられるはずだ。韓国クラシック・アクション映画好きならその何十倍だろう。
そしてこう呼ぶに違いない、
「韓国の『オースチン・パワーズ』だ」と!!
実際予算の大小はあれど、レトロテイストなのとクラシックなアクション映画に対するリスペクト加減に(あと主人公がトンチンカンなのも!)両作は通じるものがある。
「レトロ」「古めかしい」と散々書いてきたが、格闘アクションはさすがリュ・スンワン作品で、最初のチンピラたちとの戦いは冗談ぽく演出されていたが(それこそコントのように)、ラストのボスとその手下との対決では落ち葉が舞う寺の敷地内でそれまでがウソのように、テコンドー仕込みのハイキックがうなる激しい格闘が展開されるのだ。たぶん思うに予算の殆どがこのラストの立ち回りに投入されたに違いない!(笑)
ちなみにこのヘンな主人公の名前は、実は日本語の「立ち回り」が語源で、格闘アクション映画の事を「タチマワリ」と呼んでいた事に由来しているそうだ。
今年(08年)8月に公開され、あの大韓ウェスタン『良い奴、悪い奴、変な奴』に並ぶほどの人気を博した『タチマワ・リー/悪人よ、地獄行き急行列車に乗れ!』は本作のセルフリメイクである。あ~早く観たい…