約半月前にウチの近く…ではなく、かなり遠い場所にあるBOOK OFFで全三巻が105円均一コーナーで出ていたので、即効で購入。邦訳武侠小説なんてチャンスを逃すと、今度いつ出会えるかわかったもんじゃない。この日は他所のBOOK OFFで『金田一耕助の冒険』中古VHSをこれまた105円でげっちゅー。こう安く、しかもいい出物を買える日ってのはなかなかないもんですな。
それで『梟覇』であるが、この本、新刊時代に本屋でチラリと立ち読みした事があって、その時は購入しなかったのだが、改めて腰を落ち着けて読んでみるとこれが面白い!
童顔でありながら性格は冷酷無情、奥義「冥天九剣」を携え江湖に轟く大組織「青龍社」を仕切る《梟覇》こと燕鉄衣の活躍を描いたこの小説は、キャラクターの面白さと謎が謎を呼ぶストーリー展開で武侠小説の楽しさ・面白さを味わせてくれる好編だ。台湾武侠小説の定番である架空の中国を舞台にしているので、金庸作品のように多少の中国史の素養がなくてもスラスラと読めてしまうのがとても良い。ということは日本における武侠小説紹介は大御所・金庸作品からではなく古龍を代表とする台湾武侠小説からのほうがより広がったのではないか?なぁんてタワ言をヌカしてみましたが。誰もが納得する名作もいいけど、箸にも棒にも掛からない何てことはない作品も紹介してこそ、真の武侠小説像が見えてくるのでは?
著者の柳残陽は本文中の紹介文によれば『如来神掌』の原作である『天佛掌』という作品を書いているそうだが、原作って上官虹じゃなかったっけ?と思ったのだが、どうもこの柳残陽作の『天佛掌』を元に書かれているらしい。今の若いクンフー映画ファンには周星馳の『カンフーハッスル』の元ネタとして記憶されトンデモ映画だと思われがちだが、実のところ武林における各門派による対立構造が話の基本なので、「江湖裏社会の闘争」を好んでテーマとしている柳残陽が『如来神掌』原作者でも別に不思議でもないのである。