韓国で空前の大ヒットを飛ばした話題の大韓ウエスタン『良い奴、悪い奴、変な奴』(08)は凄い映画である。
豪華俳優陣はもちろんの事、ロケーションの広大さや屋外セットの大きさ、エキストラの多さなど韓国娯楽映画史上一番お金がかかっているのでは?と思うくらい。この陳腐とも言えるバカげたジャンル映画の為に使われた莫大な製作費はこの映画の製作者にとっては正に一か八かの賭けだったに違いない。…そして賭けに勝った。公開初日に40万人もの観客動員を数え、歴代3位の興収記録を打ち立てたのだった。
チョン・ウソン、イ・ビョンホン、ソン・ガンホという韓国を代表する三人の名優たちが旧満州を舞台に、宝物の在処が記されているという地図を中心に、繰り広げる騙しあいと闘いに我々観客は胸を踊らせる。ヒーロー然したウソン、悪の魅力がプンプン匂うビョンホン、トリックスター的存在のガンホ。各自それぞれが魅力的な描かれ方をしているので、どこでどう彼らが絡むのか、そして一体誰が生き残るのか?と一瞬でも目を離す事ができない。そして物語がクライマックスに近づくにつれバラバラだった人間関係が一点に集まる瞬間、興奮は一気に加速する!これぞ娯楽映画の醍醐味である。
キム・ジウン監督はこの映画を作る際、セルジオ・レオーネの西部劇などに影響を受けたと言っている様に、本作はまさにその通りの画作りになっている。話からして『続・夕陽のガンマン』を思わせるような民・官入り乱れての大騒ぎだし、何もないだだっ広い砂漠に疾走する機関車や登場人物が一人たたずんでいる光景はまるで『ウエスタン』だ。シネマスコープ画面を有効に使った三つ巴の対決なんて見ると、もう、どこからどう取ってもレオーネ・テイスト一色でうれしくなっちゃう!
実は韓国には60年代頃に“満州ウエスタン”なる擬似ウエスタンのジャンルが存在してて、大陸浪人たちが広い満州の地でドンパチやっている映画が多数製作されていたとの事。最初この映画を観た時、「東アジアでウエスタン的世界を構築するには満州あたりが最適だよなぁ」と何気に思っていた。ほら、岡本喜八監督の『独立愚連隊』もそうでしょ?…やっぱり考えることは一緒なんだよ。
いつか“満州ウエスタン”の諸作品を観られる日が来ればいいなぁ。でも、タイの“トムヤム・ウェスタン”も観たいし、インドの“カリー・ウェスタン”ももっと観たい。フィリピンの“タガログ語ウエスタン”だって…あぁ!
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