■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 医療のからくり
「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。
■ 今日のおすすめ
『医療のからくり』(和田 秀樹著:文春文庫)
■ 医療を聖域視せずに事実を知ろう(はじめに)
最近、医療の分野について内情を知りたいと思っていました。ある医師から勧められたのがこの本です。「医療の世界を知る導入本としては面白く読めるからぜひ読んでご覧」と勧められました。
この本を読んで最初に目が行った処は、「医学」と「医療」とは違うという部分です。「医療」の分野は、大幅な規制緩和と経営革新により、大きな成長分野になる可能性を持っています。規制緩和と経営革新により、社会貢献とともに、良い戦略の最終結果である「sustainable profit(持続的長期利益)」を生み出す事ができると思いました。
■ 日本の医療は“護送船団方式”
【日本の医療の特徴】
日本の医療の特徴は、国民皆保険制度、自由開業制、自由標榜制、出来高払い制、全国一律料金制の五つです。国民皆保険制度を除く全てが不合理なシステムなのです。自由開業制のもとでは、臨床能力がなくても自由に開業できるので、大学で面倒な臨床は学ばずに、研究に没頭していられる。自由標榜制だから、外科しかやっていない人でも、内科の看板を出そうが、皮膚科の看板を出そうが構わない。健康保険から払ってもらえる出来高払い制だから、患者を検査漬け、薬漬けにしてしまう。全国一律料金性なので、腕を磨いてもメリットがない。先進国で免許更新制がないのは、日本だけ。日本の医者の質が欧米並みになるのは、五十年かかるとこの本では書かれています。
【日本の手術は東南アジアに完敗】
国際水準の心臓バイパス手術は、速さも、正確さも日本が格段に落ちる。大半の手術において、技術の差は、オーストリア、マレーシア、シンガポール等の後発の国より、はるかに低いレベルになってしまった。小学校の野球チームとプロ野球選手ほどの差がある。指導的地位にある医師たちが、教授選に勝ち抜くための論文書きに没頭している間に、こんな情けないことになってしまったと、この本は書いています。
【薬害が起こっても、損害賠償責任は製薬会社】
製薬会社と医者の庇いあいの体質があると本書は指摘する。各医療分野の専門医たち彼らこそが新薬開発試験のデータを作り、適用範囲を広げ、ガイドラインを作成し、製薬メーカーの先兵となって、一般医師を誤誘導し、間違った薬の使い方を定着させてきたという面がある。薬害事故が起こっても、開発にかかわった専門医たちは、何の責めを受けず、製薬会社が全面的に責任を負う体質だと本書は言う。
■ 医療業界の規制緩和に期待する(むすび)
最近マスコミでも、医療業界の革新・規制緩和についての記事が目立ちます。
病院再編のための新型法人に向けた規制緩和(2013.5.13 日経)、成長戦を問う‐医療㊤㊥㊦(2013.5.17、5.20、5.21‐日経)など、矢継ぎ早にマスコミで採り上げられています。
その中のキーワードをいくつか挙げてみますと、コスト管理の視点を持った医療ビジネスの「増収モデル」から「増益モデル」への転換、医療・薬事分野の『司令塔「日本版N・I・H(アメリカ国立衛生研究所)」』の創設による規制緩和の推進と成長モデルの推進、医療・健康食品産業の輸出産業への育成、等です。
ご紹介の本は医療業界を知る入り口の本として捉えて下さい。同時に規制緩和で大きく変わろうとしている、医療分野、それに関連する薬事分野・健康食品分野に目を向けて行こうではありませんか。
【酒井 闊プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm
【 注 】
著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。
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