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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】408 日本の農業復活

2020-07-17 05:46:00 | 【経営】 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】408 日本の農業復活

 

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

      今日のおすすめ

 

 『日本の農業が必ず復活する45の理由』(浅川 芳裕著:文芸春秋)

 

      TPPは第三の黒船(はじめに)

 

 『菊と刀』を書いたアメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトは日本人の文化を「恥の文化」と位置付けています。これは非常に重要な示唆に富んだ分析と思います。この「恥の文化」が長所として現れたのが、「モノづくり日本」です。短所として現れているのが「内向き思考」「体面・保身・身内意識」「誤った集団的固定観念」など挙げるときりがありません。

 

 KOF(チューリッヒ連邦大学内のスイス国際研究所)が出している「グローバル化指数」という指標があります(「経済」「社会」「政治」の三つの指標を統合したもの)。この中の「経済」に限ると、最新の2012年の順位では日本は120位と、なんと中国の107位よりさらに下になっています。それだけ規制が多い、ビジネスが多くの障壁があってやりにくいということを示しています。

 

 私達の「誤った集団的固定観念」が典型的に表れている産業が農業ではないでしょうか。その具体的実例はこの本を読むとよくわかります。

 

 残念ながら、先に指摘させていただいたような、「恥の文化」が短所として現れている部分を正せるのは、唯一外圧でしかない様です。

 

 幕末のペリーの黒船、第二次世界大戦後の占領体制を経て、日本は近代的民主主義・自由主義・資本主義国家に生まれ変わりました。第3の黒船TPPによってしか、世界の普遍的思考により、日本の「誤った集団的固定観念」が改められることはないと思うのです。多少は摩擦も出るでしょう。今の日本の閉塞状態から脱出する唯一の道ではないでしょうか。

 

      農業の視点で「誤った集団的固定観念」の実例を見てみよう。

 

【天下の悪法「主要食糧の需要および価格の安定に関する法律(減反法)」】

 

 「減反すなわち農地があるのに作らないとお金がもらえる」。こんな法律がまかり通っている。これが農業を振興する産業政策として正しいのでしょうか。農業従事者のやる気をそぎ、国費を使い、高い価格で消費者に買わせる。同じお金を使うなら、もっと他のやり方で農業振興ができるはずです。例えば中国の検疫当局の難癖に対抗できる検疫体制を確立し輸出を増やして行くこと等です。「日本のモノづくり」は農業でも間違いなく発揮できるのです。

 

【田植えか乾田直播か】

 

 著者は、日本の稲作技術は「田植えをするのが当然だ」という文化的呪縛によりガラパゴス化したと結論付けています。日本でも乾田直播をし、コストの削減と労働時間の短縮により、削減されたコストと時間をイチゴ栽培に向け、成功を収めている農家が、大農経営の雛形である秋田県大潟村にあるとのことです。稲作は日本の文化かもしれませんが、事業経営であることを忘れてはいないでしょうか。

 

TPPに参加するメリット】

 

 野菜、花、果物の関税はほとんどゼロに近くても、国産比率が90%以上です。青森のリンゴなどは輸出が10%です。これらは正に「日本のモノづくり」の成果です。TPPでは、健全な貿易を促進するための「知的所有権(品種改良)」「衛生植物検疫」などのルールにより、日本の農業政策の意図的政策的弱点を強化し、日本の農業品種をグローバルに広めていく道を広げます。あさはかな保護主義が日本の農業のレベルを下げるのです。TPPに反対しているのは、米を作っていない農水省や農協だと著者は言い切っています。自分の保身ではなく、日本の将来を考える官僚であってほしいとの思いをこの本を読んで一層つのらせます。

 

      世界に通用する経営を(むすび)

 

 この本には、上述の実例のほかにも、我々の固定観念の転換を強いられることが多く書かれています。是非一読ください。

 

 特に興味を引いたのが、オランダの農業と比較した部分です。輸出競争力世界NO1のオランダの農業の経営管理が、オランダ東インド会社から引き継いだプロセス・マネジメントを、一つ一つの農産物に至るまで行っていることです。日本の農業もこの様な経営管理ができる農業に変わっていく必要があると思いました。その様な先駆的農業を支援する政策でなくてはならないと思います。

 

 同時に思うのが、農業以外の産業でもグローバル競争の舞台で生き残っていける経営がどの程度の企業で出来ているのでしょうか。この本に書かれている世界・日本の農業の強み・弱みを教材として、自社の経営を見直すチャンスかもしれません。

 

【酒井 闊プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

 

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