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【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業6章 苦悩 3 30分の天国でのひととき

2024-11-08 12:21:00 | 【小説風】竹根好助のコンサルタント起業

  【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業6章 苦悩 3 30分の天国でのひととき 

 
■ 【小説】 竹根好助の経営コンサルタント起業 
 私は、経営コンサルタント業で生涯現役を貫こうと思って、半世紀ほどになります。しかし、近年は心身ともに思う様にならなくなり、創業以来、右腕として私を支えてくれた竹根好助(たけねよしすけ)に、後継者として会社を任せて数年になります。 竹根は、業務報告に毎日のように私を訪れてくれます。二人とも下戸ですので、酒を酌み交わしながらではありませんが、昔話に時間を忘れて陥ってしまいます。
 これからコンサルタントを目指す人の参考になればと、私の友人が、書き下ろしで小説風に文章にしてくれています。 原稿ができた分を、原則として、毎週金曜日に皆様にお届けします。
【これまであらすじ】
 竹根好助は、私の会社の後継者で、ベテランの経営コンサルタントでもあります。
 その竹根が経営コンサルタントに転身する前、どのような状況で、どの様な心情で、なぜ経営コンサルタントとして再スタートを切ったのかというお話です。

 1ドルが360円の時代、すなわち1970年のことでした。入社して、まだ1年半にも満たないときに、福田商事が、アメリカ駐在事務所を開設するという重大発表がありました。
 角菊貿易事業部長の推薦する佐藤ではなく、初代駐在所長に竹根が選ばれました。それを面白く思わない人もいる中で、竹根はニューヨークに赴任します。慣れない市場、おぼつかないビジネス経験の竹根は、日常業務に加え、商社マンの業務の一つであるアテンドというなれない業務もあります。苦闘の連続の竹根には、次々と難問が押し寄せてくるのです。
 日常業務をこなしながら、アテンドという商社マンにつきものの業務を自分なりに見つめ直す竹根です。慣れないニューヨークを中心としたアメリカでのビジネスですが、時として折れそうになってしまいます。そのようなときに、若い竹根の支えとなってくれるのが、本社で竹根をフォローしてくれるかほりで、実務支援だけではなく、存在の有り難さに感謝を竹根です。

◆6章 苦悩
 商社マンは、商品を輸出すれば良い、というのが、それまでの商社の生き方でした。はたしてそれで良いのか、疑問に纏われながらの竹根好助でした。その竹根が、何とか現状で仕事をしながら活路を見いだそうと考えていました。
 しかし、問題は、そんなに簡単なものではなく、苦悩する竹根です。
  ※ 直前号をお読みくださるとストーリーが続きます。
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◆6-3 30分の天国でのひととき
 竹根にとって、二年ぶりの東京である。
 本社に出社すると、社員に囲まれた竹であるが、何か寂しさに包まれていたが、囲まれた外にい高堀の姿を見つけたら、急にジーンとする気持ちに襲われ、周囲の人に対してどの様に対応したかも記憶にない竹根である。
 一通り挨拶が終わると、かほりの方に竹根は近寄っていったが、なんと声をかけて良いのか準備をしていなかった。
「竹根さんは、すぐお帰りになるのですか?」
 思いもよらず、かほりから声がかけられた。
 一瞬、なんと応えてよいのか迷ったが、「ええ、家まで一時間半もかかるので、帰ります」と無粋な言葉が出てきてしまった。
「私も、正月休みは千葉の実家で過ごすので、今日はこれから千葉に戻ります」
 竹根は、かほりが千葉の出身であることも知らず、横浜に両親と住んでいるものとばかり思っていた。
 二人は、従業員専用の出入り口から外に出た。冷たい雨が降っている。
「かほりさん、傘は?」
「置き傘が机にあるので、ここで失礼します」
「東京駅に行くのなら同じ方向だから、よろしければ僕の傘に入っていきませんか」
 竹根らしからぬ言葉に、驚いたのはかほりだけではなく竹根自身であった。
「よろしいのですか?」
「僕はいいけど、やっぱりかほりさんはまずいですよね」
 竹根には、「結婚を控えているかほりさん」という言葉がどうしても出せなかった。
「いえ、よろこんで」
 竹根は、封印していたかほりへの思いが噴出する思いがした。
――男だろう。ここで何とかしろ。そんなことで、アメリカ所長の役目を果たせるのか――
 竹根の中にずっと小さく潜んでいたもう一人の竹根が、有無を言わせないように言う。
 二人で歩き出した。
 小さく潜んでいたもう一人の竹根の勇ましさとは逆に、できるだけかほりとは離れて歩いた。
「竹根さん、それでは濡れてしまいます」
 かほりの方が自分に寄ってきた。かすかに香るお化粧のにおいは、ニューヨークにいる女性のどぎついにおいとは全然違う。小さく潜んでいたもう一人の竹根が鎌首を持ち上げた。
「もし、よろしければちょっとお茶でもどうでしょうか。ご迷惑でしょうけど、普段のあなたの協力へのお礼・・・お茶でお礼なんて失礼か・・・」
 かほりは躊躇するだろうと思っていたのに、「すこしなら」と消え入るような声で答えた。
 かほりが、ちかくの喫茶店を知っているというので、そこに入ることにした。
 ニューヨークの話を聞きたがったが、竹根はかほりの結婚のことを聞きたかった。
「かほりさん、結婚すると聞いていますが、いつ頃ですか?」
 かほりは下を向いてしまった。
――まずいことを聞いてしまったのだろうか――
 竹根の方をじっと見つめて「父が薦める男性がいます。でも、私はまだ結婚するつもりはありません」とはっきりと言った。女心に疎い竹根には、それがどのような意味なのか見当もつかない。しかし、かほりはしばらくは結婚しないことはわかった。それだけでももう一人の潜んでいた竹根に何か明るいものを感じさせてくれた。
 三十分ばかりのひとときだった。
  <続く>
 
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