今更この黒日売の歌を解釈してもどうにもならないのですが、ちょっとばかり知ったかぶりして、解説してみます。
「夜麻登弊爾 由玖波多賀都麻<ユクハダガツマ> 許母理豆能<コモリズノ> 志多用波閇都都<シタハヘツツ> 由久波多賀都麻」
・夜麻登弊爾<やまとへに>、 難波の都ですが「倭の方に向かって」という意味です。
・許母理豆能<こもりずの>、 「隠水の」で、草の下などに隠れている沢や泉で、次の「したよ」 の枕言葉です。
・志多用波閇都都<したよはへつつ>、「したよ」は、しのびかくれるようにして 「はへつつ」は、こっそりと最愛の女性を尋ねてお帰りになる気の毒なようなお姿という意味です。
「そんなにまでして<コモリズノ>私をお尋ねしてくださって、何と言ったらいいか分からないぐらい好きなあなた。もっともっと私の側にいてほしいのですが、それもかなわず、どうぞお元気で国のご政道にお励みください。時には私の事も思い起こして下さいね」
「由久波多賀都麻」<ゆくはだがつま>
此の言葉に込められている黒日売の心はいかばかりであっただでしょうか。想像を絶するような惜別の悲痛な心があったということは想像できます。
此のたった7文字があるために、この黒日売と仁徳天皇の恋の物語が生き生きと我々の前に広がってくることができるのです。
そんなことで、古事記の中でも一番私の好きな巻なのです。どうでしょう。