「夜麻登弊爾 由玖波多賀都麻<ユクハダガツマ> 許母理豆能<コモリズノ> 志多用波閇都都<シタハヘツツ> 由久波多賀都麻」
わざわざ自分に逢うために難波の都から、あの大后「石之日売命」を欺いてまでして、この吉備の国へ来て下さった天皇に対して、黒日売は、改めて、お慕いする心が、日々に、深まるのでした。しかし、この恋が永久に続くとは、決して、思っては居ません。だって、天皇は日本国を統治する責任者です。自分一人の為に、この難波から遠く離れている吉備の地に留めておくわけにはいかない事くらいはちゃんとわきまえておりました。何時か、悲しい別れが来るだろう運命は此の地に来られた時からよく分かっております。自分が天皇と、再び、難波に行くことも、大后の嫉妬を恐れて、出来ません。「別れ」は必然になっております。そんな心持が此の歌には現れております。
”由玖波多賀都麻<ユクハダガツマ>”
です。
「あなた!!!行っておしまいになられました。もう二度とお会いすることはないでしょう。恋するあなた。出来る事なら、もう一度あなたのお顔がこの目て見とうございます。決して、お忘れはいたしません。でも、致し方ありません。私は遠くこの吉備の空から終生お慕い申し上げております。どうぞお元気で・・・・」
今にも泣き崩れんばかりの悲壮な思いがこの短い歌には秘められております。
もい一度書いておきます。声に出して御読みください。
“夜麻登弊爾 由玖波多賀都麻<ユクハダガツマ> 許母理豆能<コモリズノ> 志多用波閇都都<シタハヘツツ> 由久波多賀都麻”