恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

2.通り雨

2010年07月17日 | 雨の物語
 久しぶりに車で遠出をした。山奥にあるレストランで食事をして、家に帰っている所だ。助手席の彼女も機嫌が良いみたいだ。
 「美味しかったね。今日は最高のデートだった。ありがとう。」
 「気に入ってくれたならよかった。」そんな会話をしてクネクネとした山道を進んでいると、ザァザッーと強い雨が降って来た。通り雨のようで遠くでゴロゴロと雷もなっている。
 「急に降るなんて、ついてないね。」彼女がボソッと呟いた。だんだんと彼女の雲行きも怪しくなっているようだ。こうなると早く帰った方がよさそうだとアクセルを踏み込んだ途端に、ストンとエンジンが止まった。
 オイオイ、冗談だろう。こんな所でとまるか普通と思った。
 「何、急に。」
 「どうやら車がエンストしたみたいだ。」
 「うそー。超最悪。」
 「そんな事言わないで、ちょっと待っててエンジン見てくるから。」
 「外、雨ひどいよ。少しやんでからにしたら。」
 「だけど、早く帰りたいだろう。ちょっと見てくる。」
 「分かった。」ドアを開けると、大降りの雨が車に入ってきた。前のエンジンを開け、様子を見る。エンジンが焼きついているように見えるが、原因が分からない。
 どうするか。車を買った所に電話をしようと思い携帯を取り出したが、電波が届かない。
 ジッ・エンドとジョークを言っている場合じゃなく、何とかしなければならない。車に乗り込んでまた考えた。
 「どうだった。」彼女が眉毛をへの字に曲げて聞いてくる。
 「どうやらエンジントラブルのようだね。すぐ動くよ。心配ない。」といって、鍵を回し、エンジンをかけてみるが、カカカッカカッと空回りをしている。まったく、どうやってもかかってくれないのか。
 外は、絶え間なく雨が降り続いている。山の中だから車も1時間に一台通ればいい方だ。
 「他の車が来るまで、待とう。」
 「やっぱり、動かないんだね。だいたい、こんな山奥に行く事自体が悪い。」彼女が膨れっ面になった。言い返す気力もなく、外の景色をただボンヤリ眺めていた。
 一時すると、降り続いている雨の中を裸の小さい子供がこっちに向かってくるのが分かった。後ろにも何人かいる。
 寝ている彼女を起こすと、ビックリしていた。
 「何あの子供。」
 「分からない。十人くらいいるみたいだ。みんな裸で踊っているように見えるけど。」
 「意味わかんない。」
 「俺だって。」車のライトを照らしてよく見ると、確かにいる。円を描いて歌を歌っている。
 「カッパ。カッパ。雨は喜び。嬉しいな。」歌声が聞こえてきた。その歌を聞いた彼女が言った。
 「カッパの歌なんじゃない。」
 「確かに、頭の上に皿が乗っているかも。」
 「カッパだよ。私たちを連れ去りに来たんだわ。」
 「大丈夫だよ。カッパだとしても、車の中にいれば、鍵だってかかるし大丈夫だよ。」鍵をロックして、クラクションをならしてみた。
 そのクラクションの音で更に近づいてきた。河童の群れが車の周りを取り囲み、グルグルと回りだした。
 「なんなのよ。いったい。」彼女が叫んでいる。
 「ひょっとしたら、俺たちの事を助けようとしてるのかも。」もう一度、エンジンをかけた。すると、ブルンと勢いよく車が動いた。
 「すごい。」彼女が喜んだ。エンジン音が響くと河童の群れは、踊りながら山の小道へと帰っていった。
 その後に、雲の切れ間から晴れ間が出てきて、何事もなく、月がポッカリと空に浮かんでいた。
 
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