恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

3.紅白歌合戦

2010年12月31日 | 冬の物語
 賑やかな町並みを抜けると、細い路地裏にはひっそりと屋台が立っている。
 「おじさん。熱燗ちょうだい。」ドレスの様な服を着た女性は、酒焼けた声で頼んだ。
 「今日は冷えるね。はいよ。」ネジリはちまきの店主は慣れた手つきで焼き鳥をクルクルと回し、熱燗をカウンターに差し出した。
 古びたラジオからは、紅白歌合戦の生中継が流れている。それを聞いた女性が呟いた。
 「そういえば、今日は大晦日だね。」大きな目が泳いでいた。
 「そうだよ。ねぇさん故郷はどこだい?」
 「故郷。そんなものがあったかどうか。忘れちまったよ。」女性は、お猪口を指で弾いた。
 「こんなご時世だからね。忘れるのも無理ないさね。」店主は明るく答えた。
 「おじさんこそ、大晦日にこんな所で働いていて、家族が心配してるんじゃないの?」
 「わしの事か。昔から遊んでいたら、女房子供逃げちまったよ。」店主が、ライオンの様に笑った。その笑い声が、静かな路地裏に響き渡った。
 「おじさんも私と一緒だね。」女性は、微笑んだ。その時、北島三郎の「風雪ながれ旅」が流れ始めた。
 店主が、「この曲好きなんだ。」と言って、ラジオの音量を上げた。
 「そういえば、おじさん。サブちゃんに似てるね。」
 「ねぇさん。嬉しいこというね。サービスしちゃう。」おでんの大根をカウンターに出した。女性は、大根を箸で潰しながら、泣き出した。
 「からしがきいたかい。今年のからしは、一番辛いからな。」
 「おじさん。おいしいよ。こんな美味しい大根食べたの生まれてはじめてだよ。」屋台の提燈が、北風で揺れている。粉雪がゆっくりと降り始めていた。
  
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (カズ)
2011-04-11 12:06:22
恋愛ブログタイトルきになって、拝見させていただきました、僕も恋愛ノウハウブログ書いています☆
また、遊びにきます☆http://blog.kzaki.net/
応援もしましたよ☆
返信する
ありがとうございます! (キーボー)
2011-04-15 02:18:50
最近忙しくて物語が書けないので、自分も寂しいです。
恋愛ブログぜひ見に行きま~す。応援ありがとうです。

また見てやってください!
返信する

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