毎日、子供が泣いている。朝から晩まで泣いている。何をそんなに泣いているの。私が泣きたくなった。
旦那は、会社へ行っていつも家にいない。家に帰ってきたらきたで「メシ、フロ、ネル」の言葉しか言わない。
休みの日は、会社の上司の接待役。ゴルフや飲み会に行っている。私を構ってくれない。いつ構ってくれるの。セックスは、三ヶ月していない。時々、家族を捨てて逃げたくなる時がある。
一人ボンヤリと洗濯物をたたみながら、部屋の片隅で考えていた。
今の旦那と出会ってなくて、違う男と結婚していたらどういう人生だっただろうか。今より幸せになったのだろうか。きっと今の方が幸せに決まっている。
旦那は、一応会社の係長だ。後輩の面倒見も良い。後輩の人からいい旦那さんですねと言われた事がある。社交辞令だとしても、うれしいものだった。
休みの日は、あまり家にいないけど、いる時はちゃんと子供の面倒を見てくれる。
私も、他で働かず家で専業主婦が出来るというだけで幸せなのかもしれない。
だけど、こんなに何をモヤモヤしているのだろう。
幸せって何なのか最近考えてしまう。
今までにいい男がいないわけじゃなかった。
サトルは元気だろうか。この前偶然に町でばったりとあった。私が買い物から帰っている時に、サトルから話しかけてくれた。
「やぁ久しぶり」髪型をきめていてスーツを着ていたから最初誰だか分からなかったが、話しをしていると笑顔が昔のサトルと変わらなかったので、すぐに分かった。
サトルは、昔付き合っていた男だ。今仕事は、広告代理店に勤めていると言っていた。昔から、イラストや絵が好きだった。夢を叶えたようだ。
自分の好きな事をして、お金がもらえたらこんな幸せな事はないと熱く語っていた。それに比べて私は何をしているのだろう。ただの専業主婦だ。
家族さえいれば幸せだとばかり思っていた。あの時、サトルは輝いて見えた。もしサトルと結婚していたら、今の私はもっと幸せだっただろうか。
相談したい事があったらいつでも電話してと言って、番号を渡された。
今から電話したらすぐにあってくれるだろうか。
苦しくて、サトルに電話をした。コール音が三回なった。でない。六回目。十回目。一回ずつのコール音が胸に響いた。十五回目でやっと出た。少しドキドキとした。口の奥から暖かい唾が出てきた。
「もしもし。」サトルが出た。
「もしもし。トモミですけど。」電話をしたのはいいが、何を話していいか分からずに戸惑っていた。
「あ、トモちゃんなの。本当に連絡してくれたんだ」
「うん。迷惑だった?」
「いやそんな事無いよ。もうすぐ仕事が終わるから、駅前のシャララというバーで待ってて。すぐ行くから。」電話が切れた。私は、電話が切れた後も受話器を大事に持っていた。一瞬だけ、旦那と子供の事が頭に浮かんだ。
寝ている子供をチラッと見て、少しくらいいいよね。と呟いた。
近くの友達の家に子供を預けに行って、少し化粧を厚めにして、お洒落をして、シャララというバーに向かった。
店に入ると、ジャズが流れていた。静かな雰囲気のバーだった。店の雰囲気だけでも酔いそうな感じだった。
見渡すとサトルは来てなかった。周りは若い男女が多かった。その中にもおじさんやおばさんがチラホラと見えた。私もおばさんの中に入るのかもしれない。
ジャズを聴きながら思い出した。私は、久しぶりにバーに来たのだ。昔はよくサトルとこういうバーに来た記憶があった。
サトルが頼むカクテルがおいしかったのを憶えている。
「おいしいだろう」と笑顔で語っていたサトルが好きだった。
思い出を振り返っていると、サトルが店に入って来て手を振った。
「トモちゃん。ごめん遅くなったね。」サトルは笑みを浮かべて、私の前の席に座った。スーツをイスにかけた。
「私も今来た所。ちょっと話したくなってね」
「どうかしたの?旦那さんとうまくいってないの?」
「いや、そういう訳じゃないけど。」私は、誰かにか構ってほしかったのだ。
サトルが話しをさえぎって、ちょっと待っててと言って、カクテルを持ってきた。
私は、カクテルを一口飲んだ。遠い昔の甘い味がした。
サトルは、私の顔をじっと見て頷いて聞いてくれた。昔から聞き上手だった。サトルの顔を見ていると気になったので質問した。
「サトルは今彼女いないの?」
「いないよ。仕事が忙しいから、付き合う暇も無いよ」
「そうか。」心の奥で忘れていた感情が少しずつ出てきた。サトルとずっといたいと思った。この時間がずっと続けばいいなと思った。
なんで、こんないい男を振ったりしたのだろう。あの頃は若かったからかな。三十歳すぎて魅力が出てきたのかもしれない。
約二時間バーで話した。サトルは頷いてずっと愚痴を聞いてくれた。
旦那が構ってくれない事、子供がいつも泣く事。ストレスが溜まっている事。何でも聞いてくれた。
頷いた後、サトルは腕時計に目をやった。
「もうそろそろ、旦那さんが心配するんじゃない?」
「やばい。もうこんな時間。帰らないと。」私は、サトルとずっと話したかった。そういうわけにはいかない。
お酒を飲んだせいか。サトルと話したせいなのか。心がすっきりとした。ただ、話し相手がほしかっただけなのかもしれない。
「ごめん。サトル愚痴ばかり聞かせて。」
「別にいいよ。また、話したい事があったらいつでも言って」
「ありがとう。」目から涙が溢れ出た。サトルは、やっぱり昔から優しいのだ。ひょっとしたら、私の事がまだ好きなのかも知れない。
そんな事はどうでもいい事なのだ。現実を見ないといけない。
浦島太郎も帰りたくなくて竜宮城にずっといたかったに違いない。家に帰るときが必ず来るのだ。一時の時間だからこそ楽しく感じるのかもしれない。
私には旦那や子供がいる。暖かい家族がいる。今から家族の所へ戻らないといけない。
帰ったら、ちゃんと旦那や子供が迎えてくれる。
「おかえりなさい」
私が一番幸せを感じる瞬間なのだ。
旦那は、会社へ行っていつも家にいない。家に帰ってきたらきたで「メシ、フロ、ネル」の言葉しか言わない。
休みの日は、会社の上司の接待役。ゴルフや飲み会に行っている。私を構ってくれない。いつ構ってくれるの。セックスは、三ヶ月していない。時々、家族を捨てて逃げたくなる時がある。
一人ボンヤリと洗濯物をたたみながら、部屋の片隅で考えていた。
今の旦那と出会ってなくて、違う男と結婚していたらどういう人生だっただろうか。今より幸せになったのだろうか。きっと今の方が幸せに決まっている。
旦那は、一応会社の係長だ。後輩の面倒見も良い。後輩の人からいい旦那さんですねと言われた事がある。社交辞令だとしても、うれしいものだった。
休みの日は、あまり家にいないけど、いる時はちゃんと子供の面倒を見てくれる。
私も、他で働かず家で専業主婦が出来るというだけで幸せなのかもしれない。
だけど、こんなに何をモヤモヤしているのだろう。
幸せって何なのか最近考えてしまう。
今までにいい男がいないわけじゃなかった。
サトルは元気だろうか。この前偶然に町でばったりとあった。私が買い物から帰っている時に、サトルから話しかけてくれた。
「やぁ久しぶり」髪型をきめていてスーツを着ていたから最初誰だか分からなかったが、話しをしていると笑顔が昔のサトルと変わらなかったので、すぐに分かった。
サトルは、昔付き合っていた男だ。今仕事は、広告代理店に勤めていると言っていた。昔から、イラストや絵が好きだった。夢を叶えたようだ。
自分の好きな事をして、お金がもらえたらこんな幸せな事はないと熱く語っていた。それに比べて私は何をしているのだろう。ただの専業主婦だ。
家族さえいれば幸せだとばかり思っていた。あの時、サトルは輝いて見えた。もしサトルと結婚していたら、今の私はもっと幸せだっただろうか。
相談したい事があったらいつでも電話してと言って、番号を渡された。
今から電話したらすぐにあってくれるだろうか。
苦しくて、サトルに電話をした。コール音が三回なった。でない。六回目。十回目。一回ずつのコール音が胸に響いた。十五回目でやっと出た。少しドキドキとした。口の奥から暖かい唾が出てきた。
「もしもし。」サトルが出た。
「もしもし。トモミですけど。」電話をしたのはいいが、何を話していいか分からずに戸惑っていた。
「あ、トモちゃんなの。本当に連絡してくれたんだ」
「うん。迷惑だった?」
「いやそんな事無いよ。もうすぐ仕事が終わるから、駅前のシャララというバーで待ってて。すぐ行くから。」電話が切れた。私は、電話が切れた後も受話器を大事に持っていた。一瞬だけ、旦那と子供の事が頭に浮かんだ。
寝ている子供をチラッと見て、少しくらいいいよね。と呟いた。
近くの友達の家に子供を預けに行って、少し化粧を厚めにして、お洒落をして、シャララというバーに向かった。
店に入ると、ジャズが流れていた。静かな雰囲気のバーだった。店の雰囲気だけでも酔いそうな感じだった。
見渡すとサトルは来てなかった。周りは若い男女が多かった。その中にもおじさんやおばさんがチラホラと見えた。私もおばさんの中に入るのかもしれない。
ジャズを聴きながら思い出した。私は、久しぶりにバーに来たのだ。昔はよくサトルとこういうバーに来た記憶があった。
サトルが頼むカクテルがおいしかったのを憶えている。
「おいしいだろう」と笑顔で語っていたサトルが好きだった。
思い出を振り返っていると、サトルが店に入って来て手を振った。
「トモちゃん。ごめん遅くなったね。」サトルは笑みを浮かべて、私の前の席に座った。スーツをイスにかけた。
「私も今来た所。ちょっと話したくなってね」
「どうかしたの?旦那さんとうまくいってないの?」
「いや、そういう訳じゃないけど。」私は、誰かにか構ってほしかったのだ。
サトルが話しをさえぎって、ちょっと待っててと言って、カクテルを持ってきた。
私は、カクテルを一口飲んだ。遠い昔の甘い味がした。
サトルは、私の顔をじっと見て頷いて聞いてくれた。昔から聞き上手だった。サトルの顔を見ていると気になったので質問した。
「サトルは今彼女いないの?」
「いないよ。仕事が忙しいから、付き合う暇も無いよ」
「そうか。」心の奥で忘れていた感情が少しずつ出てきた。サトルとずっといたいと思った。この時間がずっと続けばいいなと思った。
なんで、こんないい男を振ったりしたのだろう。あの頃は若かったからかな。三十歳すぎて魅力が出てきたのかもしれない。
約二時間バーで話した。サトルは頷いてずっと愚痴を聞いてくれた。
旦那が構ってくれない事、子供がいつも泣く事。ストレスが溜まっている事。何でも聞いてくれた。
頷いた後、サトルは腕時計に目をやった。
「もうそろそろ、旦那さんが心配するんじゃない?」
「やばい。もうこんな時間。帰らないと。」私は、サトルとずっと話したかった。そういうわけにはいかない。
お酒を飲んだせいか。サトルと話したせいなのか。心がすっきりとした。ただ、話し相手がほしかっただけなのかもしれない。
「ごめん。サトル愚痴ばかり聞かせて。」
「別にいいよ。また、話したい事があったらいつでも言って」
「ありがとう。」目から涙が溢れ出た。サトルは、やっぱり昔から優しいのだ。ひょっとしたら、私の事がまだ好きなのかも知れない。
そんな事はどうでもいい事なのだ。現実を見ないといけない。
浦島太郎も帰りたくなくて竜宮城にずっといたかったに違いない。家に帰るときが必ず来るのだ。一時の時間だからこそ楽しく感じるのかもしれない。
私には旦那や子供がいる。暖かい家族がいる。今から家族の所へ戻らないといけない。
帰ったら、ちゃんと旦那や子供が迎えてくれる。
「おかえりなさい」
私が一番幸せを感じる瞬間なのだ。
気づかずに読み終えました。
よくありがちな主婦の日常だったんで女の人は書いてるとばかりw
また遊びに来させてくださいね。
この物語は、結婚しても違う男性を好きになれるかどうかです。やはり、最後は家族の幸せを願い、自分の幸せはそこにあるんだと信じて終わったようにしています。
こういう終わり方は、ぱぷ子さんに怒られるかな?
いったい幸せって何でしょうね。
冒頭からトモミの状況と心境わかりすぎて、「うん、うん」と頷きながら、ニヤケながら読みました。(私とは状況違うとこ多いけどね)
婚姻後の恋愛は、一種のスパイスと思ってます。自分も、周りの人も、今以上に幸せになるための、ね。…わっかるっかなあぁ.....。
結婚してないからまだ、よく分かりません。そういえば、彼女もいなかった。
好きになったらヤッパリ一途が一番だと思います。
今以上幸せにになる為のスパイスいい表現ですね。何となく分かるような気がしてきました。
早く良い彼女を作って、結婚したいですね。