季節はすっかり秋。イチョウの並木道を散歩するのが日課になっていた。真っ直ぐな道なりに黄色のイチョウの木がずらっと並んでいる。
走っているおじさん。イチョウの葉っぱをかき集めている少年。手をつないでいるカップル。セーラー服の女学生。
その中を私は、静かに歩いていた。イチョウの葉っぱを数えるように。秋だなと呟いた時に、見慣れた女性が前から歩いて来た。赤いコートを羽織った女性は、並木道で一番目立っていた。背が高くて、目がくっきりとした女性だった。
どこかで見た顔だと思っていたら、高校生の時に好きだった女性だった。名前は、ユキエだった。少し淡い恋が思い出された。思い出していると、向こうも気付いたらしく、手を振って話しかけてきた。
「カズ久しぶりだね。何年ぶりかしら」ユキエを近くで見ると、更に照れてしまった。吸い込まれそうな瞳で見つめられたからだ。遠い昔にこの目に恋をしたのを思い出した。
「本当に久しぶり。高校以来かな。ユキエは元気だった?」私は戸惑いながらも聞いた。
「元気だったよ。そっちは?」
「もうバリバリよ。」何がバリバリだったかは分からない。恥ずかしくて目を見れなかった。
「カズはやっぱり何も変わらないよね。」変わってない方がいいのか。変わった方が良かったのか。少し考えた。
近くで落ち葉を拾っている少年がチラッと見ていた。恋人同士と思われているのかもしれない。
「それはお互い様だろ。あれから十年か。色々あった?」
「あったよ。辛いことばかりだけどね。」ユキエは、顔を伏せた。瞳に涙をためて、悲しい顔をしていた。
少し黙った後、「辛い事ばかりでもないけれどね。」と笑顔になっていた。そういえば昔このプラス思考な考え方が好きだったんだ。
「色々あったみたいだね。俺は平凡な人生だよ。会社行って、先輩から怒られて、家に帰って寝るだけだよ」
「そうなの。恋人はいないの?」一番聞かれたくない質問をされてドキッとした。最近同棲していた彼女から振られたばかりだった。
「今いないよ。そっちは?」ユキエも戸惑っていた。彼氏の話しの事をされたくないような感じだった。
「私もいないよ。最近別れたばっかり。」笑いながら、大きな目が沈んでいた。
「そうなのか。それじゃ、いないもの同志でこれからコーヒーでも飲みに行かない。昔の話しでもしようよ」私は、強気で言った。昔の自分じゃ出来ない事だなと思った。思い出ばかりを振り返ってはいけない。未来は自分の手で切り開いていくしかない。
昔、私の親友とユキエは付き合っていた。とてもくやしくて毎日泣いていた日々を思い出した。
「それもそうだね。」ニコッとユキエが笑った。笑った顔も昔好きだった。
これから、喫茶店に行って昔の話しをたくさんするだろう。親友の事。ユキエを好きだった事。
それからは、何をするのだろうか。
お互いの住所を交換して、電話番号を交換して、恋人になってくれるのだろうか。そんな事を考えながら、イチョウの並木道を二人で肩を並べて歩いていた。
空では、大きなトンビが気持ち良さそうに一羽舞っていた。
走っているおじさん。イチョウの葉っぱをかき集めている少年。手をつないでいるカップル。セーラー服の女学生。
その中を私は、静かに歩いていた。イチョウの葉っぱを数えるように。秋だなと呟いた時に、見慣れた女性が前から歩いて来た。赤いコートを羽織った女性は、並木道で一番目立っていた。背が高くて、目がくっきりとした女性だった。
どこかで見た顔だと思っていたら、高校生の時に好きだった女性だった。名前は、ユキエだった。少し淡い恋が思い出された。思い出していると、向こうも気付いたらしく、手を振って話しかけてきた。
「カズ久しぶりだね。何年ぶりかしら」ユキエを近くで見ると、更に照れてしまった。吸い込まれそうな瞳で見つめられたからだ。遠い昔にこの目に恋をしたのを思い出した。
「本当に久しぶり。高校以来かな。ユキエは元気だった?」私は戸惑いながらも聞いた。
「元気だったよ。そっちは?」
「もうバリバリよ。」何がバリバリだったかは分からない。恥ずかしくて目を見れなかった。
「カズはやっぱり何も変わらないよね。」変わってない方がいいのか。変わった方が良かったのか。少し考えた。
近くで落ち葉を拾っている少年がチラッと見ていた。恋人同士と思われているのかもしれない。
「それはお互い様だろ。あれから十年か。色々あった?」
「あったよ。辛いことばかりだけどね。」ユキエは、顔を伏せた。瞳に涙をためて、悲しい顔をしていた。
少し黙った後、「辛い事ばかりでもないけれどね。」と笑顔になっていた。そういえば昔このプラス思考な考え方が好きだったんだ。
「色々あったみたいだね。俺は平凡な人生だよ。会社行って、先輩から怒られて、家に帰って寝るだけだよ」
「そうなの。恋人はいないの?」一番聞かれたくない質問をされてドキッとした。最近同棲していた彼女から振られたばかりだった。
「今いないよ。そっちは?」ユキエも戸惑っていた。彼氏の話しの事をされたくないような感じだった。
「私もいないよ。最近別れたばっかり。」笑いながら、大きな目が沈んでいた。
「そうなのか。それじゃ、いないもの同志でこれからコーヒーでも飲みに行かない。昔の話しでもしようよ」私は、強気で言った。昔の自分じゃ出来ない事だなと思った。思い出ばかりを振り返ってはいけない。未来は自分の手で切り開いていくしかない。
昔、私の親友とユキエは付き合っていた。とてもくやしくて毎日泣いていた日々を思い出した。
「それもそうだね。」ニコッとユキエが笑った。笑った顔も昔好きだった。
これから、喫茶店に行って昔の話しをたくさんするだろう。親友の事。ユキエを好きだった事。
それからは、何をするのだろうか。
お互いの住所を交換して、電話番号を交換して、恋人になってくれるのだろうか。そんな事を考えながら、イチョウの並木道を二人で肩を並べて歩いていた。
空では、大きなトンビが気持ち良さそうに一羽舞っていた。
季節を先取りした、このお話がとても新鮮で、それでいて懐かしくて…しみじみした気分にさせてもらいました。
ふたりの微妙な距離感…。でも、進展ありそうで、明るいお話、ですよね!
またひとつ、心の小箱にしまう、ちいさないとしいおはなしが、ふえましたよ.......。
秋はせつない季節です。恋人がいれば暖かいのでしょうけど。
恋は明るく感じる恋が好きです。昔好きな人って心に一生残っているものなんですよね。
いつか、お互い再会して、また恋が出来ればそれはそれで素晴らしい事だと思います。