恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

18.お風呂屋さん ②

2018年03月18日 | お風呂屋さん
 私がお風呂のフロントに立っていると、ザンバラな白髪で、白雪姫に出てきそうな70歳くらいの魔女が話しかけてきた。
 お風呂の入浴券が毒リンゴに見えた。
 そのおばさんは、家のドアで中指をザックリ切って、12針縫っていた。
 フロントで、ずっと話しかけてくるから、めんどくさい。
 「指をお湯につけると、血が出るからつけられない。」といって指を見せる。先週も同じ話を聞いている。
 「そうなんですね。気を付けてください。」私が答える。
 「指を12針縫って、血がでてねぇ。お湯大丈夫かね。」更に指を見せ続ける。
 「つけないようにして入って下さい。」
 「大分よくなったよ。ほら見て。」まだ見せている。
 「そうですね~。」私は、苦笑い。
 「まだ、完全じゃないけど、大分よくなった。」
 「そうですね~。一か月前に比べると本当よくなりましたね。あと少しです。」私は、医者ではないからよく分からないが、もう傷もなくて、治っているような感じがしたが、ずっと言い続けている。
 しかも、この話を毎週聞いている。多分来週も指を見せながら自動ドアを入ってくるんだろうなと思った。
 お風呂に入って帰りにも、「指大丈夫だった見たい。大分よくなった。」また、中指を見せる。
 「よかったですね~。」私は、ちょっと喜んでいるふりをする。
 「あと少しだね~。」
 「ですね~。来週になったらもっとよくなると思いますよ~。」
 「そうだといいけどねぇー。」中指を上げて、帰って行ったが、外国人に見せたら、ケンカ売っていると勘違いするのではないだろうか。
 その後に、50代くらいの男性が、「アウアウ。ウーウー。」とうめき声に近いような感じで、フロントに入ってきて、叫んでいた。
 一時聞いていると、ジェスチャーをしてきたので、話すことが出来ない人だと分かった。
 隣にいた、掃除のおばさんと変なお客さんが多いので、苦笑いを浮かべた。
 また、ジェスチャーで私に何か伝えている。その後連れの人が来たからよかったが、何か冗談を言っているようだった。
 連れの女の人が「直腸ガンで、手術もしている。」と言った。
 癌で、しゃべれないって、最悪の様な気がするが、一生懸命私に伝えようとしていた。
 その後、ポケットから一枚の紙を取り出した。
 「市役所で、手話を月、水、金と教えています。」って、ちゃっかり営業しているんじゃないか。
 私たちよりもしっかりとしている。
 クレームをいつも言うお客よりも、思っている事を素直に声に出す事が出来ないこの人の方がよっぽど人生が深いような気がする。
 ジェスチャーで、指を口にあてて「静かにしないといけないね。」という動作をしてウィンクらしい事をした。
 コミカルで、チャップリンの映画を見ているようだった。
 生きるって、本当に大変だなと思った。
 それが終わったかと思ったら、次は、爆乳の外国人が大きな荷物を持って、自動ドアを入ってきた。
 「コンニチワ。」片言の日本語なので、こちらも「イラッシャイマセ。」と片言になってしまう。
 いつの間にか隣にいたエロ店長が、爆乳を見てニヤついていた。
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