恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

2.イルミネーション

2006年11月17日 | 身近な恋
 テレビもない。ラジオもない。布団もない。お金もない。仕事もない。保険証もない。帰る家もない。会社をリストラされ、私はとうとうホームレスになってしまうのだろうか。
 目の前で、ダンボールを広げ、空き缶が無造作に横に積み上げられ、髪は伸び続け、真っ白な髭も髪以上に伸び、泥だらけの素足の老人がニヤッと私の方を見て笑っていた。
 私に何か囁いている様に感じた。「こっちへおいで居心地がいいよ。」と言っているのだろうか。
 よく考えてみれば、私もそちら側の人間の様な気がする。生きる希望もなく下を向き、死ぬ事をただ待っているだけの方がお似合いなのかもしれない。むやみに就職を探すほうが間違っている様な気がした。
 外は身も凍るほど寒かった。ハローワークで仕事を探していたが無駄足だった。
 歩いて帰っていると、イルミネーションが綺麗な場所があった。
 昼間は分からないが、夜になると赤や青や黄色で作られた光のサンタクロースやトナカイやクリスマスツリーが神秘的に輝きだす。
 「もうすぐクリスマスか。」私が呟くと白い息が漏れた。慣れない都会に来て随分と時間が経った。老いた父親と母親は元気だろうか。何とか一人前になりたいと思って出てきたのはいいが、現実がこうじゃ話しにならなかった。サンタクロースがいたら私の願い事を叶えてくれるだろうか。
 池の上に架かっている青色の光で作られた橋も素晴らしく開いた口がふさがらなかった。
 「リストラされた私でも通っていいのだろうか。」毎年見るだけだったが、通ったら良い事がありそうな気がして、前で手を繋いでいるカップルと一緒に通ってみた。橋の中も青色に染まっていて、空へと上って行くような感じがした。
 これが明日への入り口だったらどれほどいいだろうか。
 橋を通り抜けると、オレンジ色に輝く馬車が現れて、桃色のお姫様が迎えてくれた。紫色の紳士のお爺さんが扉を開けて、私をお姫様と一緒に夢の国へと連れて行く。
 ふと気がつくと、青い光の橋を渡りきっていた。私がボンヤリとしていたので、前のカップルが「変なおじさんがいる」と笑っていた。
 一時の間、そんな夢を見るのも悪くない。
 両手をポケットに入れ、誰も知らない明日への希望を胸に一歩前へと進んでいた。
 
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3 コメント

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Now!!!←意味は特にナシ (ゆば)
2007-02-25 01:43:57
誰だって落ち込むこといっぱいいっぱいありますよね~どんなことにも悲しいことがあります…でも美しいもの一つで希望になるならとてもとてもそれは素敵なことですよね( ´ё`゜)
返信する
素敵! (もゆ)
2007-02-28 16:05:13
キーボーさんのお話も
ゆばさんのコメントも、素敵!!

人は心の持ち方ひとつで
美しい世界に入れるのだと、

おふたりのトークを読んで思いました。


わたしもせめて
美しく七色に輝く橋を
渡る気になってみようかな・・・・・・
返信する
コメントありがとう。 (キーボー)
2007-03-01 16:30:12
<ゆばさん。
 人だから落ち込むことは必ずあると思います。
 恋がうまくいかなかったり、仕事がうまくいかなかったり、悲しくて、崖から飛び降りたくなる時が人だからある事だと思います。
 私は、現実がうまくいかない分、このブログで発散していますが、素敵なイルミネーションや素敵な人などと会ったりすると、気持ちも素敵になると思います。
<もゆさん。
 久しぶりです。コメント来ないので、ブログ辞めようと思ってましたよ。
 もうみんな飽きちゃったかな。

 七色に光る橋僕も渡ってみたーい。
 彼女と(笑)
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