恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

3.コインランドリー

2006年11月29日 | 身近な恋
 一人暮らしをして、一週間が経った。明日晴れるという事で、溜まっていた洗濯物をコインランドリーに持っていき、大きな洗濯機の中へと投げ込んだ。
 金額は300円。機械に入れると、ウィーンと音と共にシャカシャカと回りだした。一週間の汚れが洗い流されて、私も気分がよかった。私の人生もそんな風に洗ってくれたらいいのだがと思った。
 洗濯機が回っている間、暇なので浅田次郎の小説を読むことにした。
 私が読んでいると、両手に紙袋を持ったダボダボのトレーナーを着た若い女性がコインランドリーへと入って来た。
 この女性も家に洗濯機がないのだろうかと横目で見ていた。女性は無造作に洗濯機に洗い物を入れると、私の隣の椅子に座った。
 長い黒髪の間から、シャンプーの香りが漂って来た。女性は天井に付いているテレビを見ていた。音楽番組があっていて、髪が薄い司会者が女性シンガーの名前を紹介すると、歌が始まった。
 私は切なくなり、浅田次郎の小説を読めなくなった。
 洗濯機の音がなるにつれ、コインランドリーの電気が明るくなったり暗くなったりしていた。テレビも時々ノイズが入るようだ。
 女性はテレビに飽きると、携帯電話で目にも止まらぬ速さでメールを打ち込んでいた。
 私が甘い香りに誘われて、話しかけようとしたら、店の前に大きな車が止まった。中から、背が小さいピアスをはめた猿のような男が降りてきて、彼女の荷物を持って一緒に出て行った。
 やっぱり彼氏がいたんだと呟くと、それに答えたかの様に洗濯機の終わりの合図がピピピとなっていた。
 
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