スマホ決済、消耗戦限界 PayPayが店舗手数料有料に・・日経ニュース
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日本のキャッシュレス決済の市場が転機を迎えた。QRコード決済で最大手のPayPay(ペイペイ)は19日、加盟店から得る決済手数料を全面有料化すると発表した。大盤振る舞いで顧客を囲い込む体力頼みの普及策には限界が見える。海外に出遅れた日本のキャッシュレス決済の浸透を後押しするには、魅力あるサービスを持続的に提供できる事業への発展が欠かせない。
「この3年、スマートフォン決済がキャッシュレス化をけん引してきた。事業者として持続可能な経営をしていく」。19日の記者会見でペイペイの中山一郎社長は、無料の決済手数料が果たした役割を強調したうえで、新たな手数料体系の導入を発表した。
ペイペイは2018年10月にQRコード決済市場に参入し、中小店舗の手数料は21年9月まで3年間無料としてきた。ペイペイに出資するソフトバンクの営業網を生かし加盟店は340万カ所を超えた。「100億円キャンペーン」などで利用者を伸ばし取引高のシェアは68%に達した。
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ただ、ペイペイの21年3月期の営業損益は726億円の赤字(前の期は822億円の赤字)と厳しい。顧客獲得に一定のメドがついたとみて、収益確保にカジを切る。
新たな手数料は10月から中小店舗向けに導入する。クーポンの発行機能などを含む月額1980円のプランでは1.6%、決済のみでは1.98%とした。2~3%台の主要なQRコード決済各社より低くし、クレジットカードの3~5%の半分ほどにした。通常3%程度の交通系など電子マネーと比べても低水準だ。
有料化には加盟店離れを招く懸念もある。無料のために加入した中小店舗も多い。加盟店が減れば、会員の減少にもつながりかねず、他社や他の決済手段と比べた優位性を保つために手数料率を低くした。銀行系クレジットカードの関係者はペイペイの手数料率について「想定以上の水準で脅威だ」と話す。
キャッシュレス決済の年間取扱高はクレジットカードが61兆円と最も大きく、電子マネーが6兆円。QRコード決済は4.2兆円と3番手だ。
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クレジットカードは「ビザ」や「マスターカード」といった世界共通の国際ブランドを持ち、国や地域をまたいで使える。新型コロナウイルス禍の逆風が吹くが、旅行や宿泊など高額利用はカード決済が中心だ。
一方、QRコード決済は手数料を低く設定できる強みがある。自前で加盟店からの決済情報を処理するシステムを持つためだ。クレジットカードはカードの発行会社だけでなく、加盟店の管理会社や国際ブランドが接続して決済を処理する。多数のプレーヤーが複雑につながる業界構造で手数料がかさみやすい。
ペイペイの発表を受けて、NTTドコモなどQRコード決済の競合は対応を迫られそうだ。ある携帯会社幹部は「加盟店舗を守るためにも各社が手数料を合わせていくだろう」と予想する。別の通信系決済会社の関係者は「競争力を高めるため様々な施策を用意している」と話す。
収益化は各社共通の課題だ。経営難に陥った独立系の「オリガミ」は20年にメルペイが買収。スタートアップのpring(プリン、東京・港)は21年7月、米グーグル傘下に入ると明らかにした。LINEは今月19日、10月から実店舗に対する加盟店の新規募集を停止すると発表した。ペイペイを傘下に持つZホールディングスとの経営統合に伴い、サービスの共通化を加速させる。
日本のキャッシュレス比率は3割程度で、7~9割の中国や韓国、5割前後の米国や英国を下回る。日本政府は25年に40%の目標を掲げる。
中国ではアリババ集団系の「アリペイ」と騰訊控股(テンセント)の「ウィーチャットペイ」の2社が寡占し、決済手数料は高くても0.6%程度とされる。決済で獲得した利用者を収益性の高い融資など金融サービスに誘導している。日本企業もビジネスモデルの見直しや、再編によるシェア拡大が欠かせない。
(駿河翼)
スマホ決済、普及と収益の両立探る
収益を犠牲にして顧客を広げてきたスマートフォン決済の業界が、普及と収益の両立を探る段階に入ってきた。日本ではキャッシュレス決済の比率は3割程度で伸びしろは大きい。一方、PayPay(ペイペイ)の2021年3月期の営業損益は726億円の赤字で、消費者への高い還元を維持するための原資も必要になっている。
キャッシュレス推進協議会によると、20年のQRコード決済の取扱高は前年比4倍の4.2兆円と過去最高だった。クレジットカード(61兆円)にはおよばないものの急成長している。取扱高では銀行口座から代金を引き落とすデビットカード(2兆円)を超え電子マネー(6兆円)に迫る。
もっとも、日本の20年の国内個人消費に占めるキャッシュレス決済比率は3割程度。7~9割の韓国や中国を大きく下回り、主要国の中でも出遅れている。先行する中国・アリババ集団系のスマホ決済「アリペイ」の手数料率は1%を下回り日本勢より大幅に低い。
ペイペイの決定を受けて、競合各社が手数料水準を見直すかどうかが焦点になる。中小向けの手数料率は、NTTドコモの「d払い」とKDDIの「au PAY」は2.6%と定めているが、9月末まではキャンペーンで無料としている。楽天グループの「楽天ペイ」は3.24%で展開する。