携帯、顧客無視の「無理販」 大手の代理店評価が拍車
携帯値下げ 競争の壁(上) 日経ニュース
携帯電話各社の料金引き下げが相次いだ。高止まりする通信料に政府が法改正などでメスを入れてきた結果だ。
携帯はもはや生活インフラとなっているだけに、より透明性の高い競争環境を整える必要がある。見えにくい壁はなお残る。
評価が下がると赤字になるから、お客様が要らないものを売りました」。ソフトバンク代理店の元経営者は声を潜めて話す。
ソフトバンクは代理店を営業成績によって5段階でランク付けしていた。
最下位が続けば他のオーナーに事業売却する「商流変更」を強いられる。実質的な閉店措置だ。
利益が出るのはせいぜい上位2ランク。評価を高めない限り、どのみちもうけはでない。
本来重視すべき消費者の利益を軽視し、売る側の論理が先に立つ。
例えば携帯契約者にタブレット端末を無料で配り、通信契約を結ばせる。
通信費は携帯とは別で、端末代金も契約中は割賦代金が免除されているにすぎない。
「販売話法も大手のマニュアルがある。お客様は知識が無いので店員を信じる。もう手を染めたくない」
業界で「無理販」と呼ばれる悪質な手法は後を絶たない。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクを中心とした代理店従業員への総務省のアンケート調査では、
顧客の意向とは無関係に高額プランを勧めた経験があるとの回答が4割を超えた。
代理店の収益は、端末販売など物販収益と顧客の通信費の一定割合を受け取るストック収益が柱だ。
商材は大手から仕入れる。販売手数料などの割がよくなる高額プランに誘導しがちになる。
公正取引委員会は6月、代理店との取引が独占禁止法上問題がないか報告するよう大手3社を行政指導した。
総務省も7月、評価体系が不適切な営業を助長していれば業務改善命令を発動する方針を示した。
携帯はもともと料金プランが複雑で、売り手と買い手の情報格差が大きい。
顧客の知識や経験に応じた商品販売を求める「適合性の原則」は既に16年施行の改正電気通信事業法で義務化された。
その後も実際は消費者軽視の営業がまかり通ってきた。
代理店は全国に約8000ある。
大手の契約の6割強を占める中心的な販売ルートだ。オンラインより対面の手続きに慣れたシニア層の利用も多い。
政府は携帯代理店をデジタルの知識を社会に普及させる拠点とも位置づける。不透明な慣行の改善は急務となる。
かねて政府が力を入れてきた値下げはようやく目に見えるかたちになってきた。
大手3社は21年春、20ギガバイトの割安プランを導入した。
総務省は6月、契約者の約1割が新プランに移り、消費者負担は年換算で計4300億円軽くなったとの試算を公表した
21年春時点の総務省の世界6都市の比較調査でも、東京はシェア1位の事業者の20ギガの料金がロンドンに次いで2番目に安かった。
前年の最高額から下がった。問題は手続きのわかりにくさだ。民間調査では契約変更などの簡便さは東京が最も低いままになっている。
携帯市場の問題に詳しい野村総合研究所の北俊一パートナーは「顧客本位の業界に変わる必要があり、継続的な監視が必要だ」と指摘する。
・・・・・・・・・・
携帯代理店の評価制度 公取委「独禁法上、問題の恐れ」 2021年6月10日
公正取引委員会は10日、携帯電話市場の実態調査報告書を公表した。
携帯大手が販売代理店を営業成績に応じてランク付けし、
支払う手数料を増減する「評価制度」を巡り、
一方的に販売目標を引き上げるなどした場合、「独占禁止法上、問題となる恐れがある」と結論づけた。
消費者の必要以上に高額なプランを勧める不適切営業を助長することにも懸念を示した
独禁法は優越的地位を乱用して不利な取引を強いたり、販売価格を拘束したりすることを禁じる。
消費者が最適なプランを選べなければ料金値下げの恩恵が広がらない面もある。
公取委はNTTドコモなど携帯大手3社に違反を未然に防ぐための改善策を求める。
代理店は携帯大手との契約に基づき利用者の勧誘や販売促進などを担う。
携帯大手は評価基準の達成具合に応じて代理店をランク付けする。ランクごとに手数料が変動し、経営に影響する。
報告書は一部の携帯大手で、成績不振が改善されない代理店の契約を打ち切る仕組みがあると指摘した。
評価制度を変更する際、代理店の意見を聞かないこともあった。
制度変更時に代理店に十分に説明し、移行期間を設けることが望ましいとした。
目標達成のため、販売員が消費者が必要としない高額プランを推奨する実態も判明した。
厳しい目標基準の設定が過度な勧誘につながり、消費者が適切なプランを選べなくなるのは好ましくないと記した。
携帯大手との関係で代理店が端末の販売価格を自由に決められなくない実態も問題視した。
本来、代理店は携帯大手から仕入れた端末の価格を自由に決められる。
聞き取り調査では、端末料金に上乗せしないよう携帯大手側が口頭で要請したり、見回り調査したりしていることが分かった。
成績次第で事後的に手数料が変わるため、仕入れ値を下回る価格での販売は赤字リスクがある。
販売価格を事実上拘束していれば独禁法上問題となる恐れがあると指摘し、「見直しを行うことが望ましい」と強調した。
公取委は2018年にも携帯大手の販売・取引慣行を調査し、
通信と端末のセット販売や契約の「4年しばり」などの方法が問題になる恐れがあるとの見解を示した。
その後、通信と端末の分離を求めた改正電気通信事業法が施行された。20年からの再調査では代理店との関係や消費者への悪影響に注目した。
大手3社が契約数に占める割合は8割以上で寡占市場が続く。
代理店全体の取引額のうち大手3社が占める割合は大きく、契約解除されれば新たな契約先探しは難しい。
携帯大手の地位が代理店より優越している場合がある。
消費者も不利益を被る。
代理店の無理な勧誘や「大容量プラン」など必要以上の契約を求められる問題が指摘される。
公取委は今後NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク3社に対し自主的な改善を促し、報告を要請する方針。
NTTドコモは「点検および改善など必要な対応を行う」とコメントした。
KDDIは「真摯に指摘を受け止める」、ソフトバンクは「報告書で示された考え方や指摘事項について現状・実態に照らして確認する。
総務省の有識者会議で検討されている事項もあり、併せて対応を検討する」とした。
・・・・・・・・・・・・・・・
楽天モバイル、500万回線突破 3カ月無料など奏功?(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース
携帯電話・PHS契約数|一般社団法人 電気通信事業者協会(TCA)