流石に朝夕は気温が下がって、外に出たすぐには少し寒い感じがする。玄関から杏月ちゃんが全速力で外に飛び出すわけだが、門のところで足踏みするときに鼻を鳴らす音が、幾分外気との寒さのためにくしゃみをしているように聞こえる。いや、そう感じるのは僕の気分のせいだろうけれど、寒い方が犬にとっては気合いが入りなおすというか、嬉しそうな雰囲気も感じるのであった。
朝はいつの間にかまだ暗い状態になっていて、坂道を下る先から僕らの姿を確認して驚くおばさんなんかとすれ違ったりする。だいたいが寂しい路地なんかを選んで歩いているので、相手だって誰かとすれ違うなんて想定していないのだ。杏月ちゃんは比較的黒い犬なので、小さい物体が動くと驚かせてしまうのだろう。
しかしながら空はぼんやり明るくなっていて、地上の暗さとのコントラストが鮮やかだ。田んぼの畦では狂ったようにサギだか何だかの鳥がギーギー鳴いて、うるさくて仕方がない。山裾の靄が浮いたように流れている。まだ、寝静まっているだろう家々のたたずまいが、なんだか不思議な感じさえする。もう既に地球は目覚めているのに…。
朝の交通整理のために坂道を下ってくる老人会のおじさんが
「すっかり空が高くなりましたね」
と挨拶してきた。そうか秋は空が高いのか、と思ったのであった。
朝はいつの間にかまだ暗い状態になっていて、坂道を下る先から僕らの姿を確認して驚くおばさんなんかとすれ違ったりする。だいたいが寂しい路地なんかを選んで歩いているので、相手だって誰かとすれ違うなんて想定していないのだ。杏月ちゃんは比較的黒い犬なので、小さい物体が動くと驚かせてしまうのだろう。
しかしながら空はぼんやり明るくなっていて、地上の暗さとのコントラストが鮮やかだ。田んぼの畦では狂ったようにサギだか何だかの鳥がギーギー鳴いて、うるさくて仕方がない。山裾の靄が浮いたように流れている。まだ、寝静まっているだろう家々のたたずまいが、なんだか不思議な感じさえする。もう既に地球は目覚めているのに…。
朝の交通整理のために坂道を下ってくる老人会のおじさんが
「すっかり空が高くなりましたね」
と挨拶してきた。そうか秋は空が高いのか、と思ったのであった。