ゾッキ/竹中直人・山田孝之・斎藤工監督
監督が三人いるが、誰がどれを撮ったのかは知らない。群像劇になっていて、一応地域性があって、なんとなくだがそれぞれがちょっとずつ絡んでいるという設定らしい。まあしかし、別の話である。
どういう理由か分からないが自転車で旅に出る青年が遭遇する漁村のあれこれと、彼の過去の女の子との痛い思い出がある。また、これがメインだが、変なもの同士が親友になり、勘違いで美人らしい姉のことが気になるようになる。しかし実際は姉などはいないのではあるが、せっかく友だちになったので本当のことが言えず、実は姉が死んだと言い、中学のころに好きだった女の子の写真を遺影にする。後に男は姉の遺影の女の子に出会い結婚するのだった。
子供を連れて高校のころのボクシング部の部室に忍び込んでサンドバックを盗んだ際に、幽霊と出合う話もある。この父はその後別の女と出奔する。10年して戻っては来るが……。
というような話がまぜこぜになっていて、一つの話になっているのかどうかは不明だ。いちおう緩いギャグというか笑いのネタになっているはずで、作っている人たちは、面白いと思って描いていると思われる。俳優たちはそれなりに豪華で、演じている役柄とのずれはあるものの悪くないが、設定がちょっとわざとらしいかもしれない。少なくともカマトトである。まあ、そういうズレを楽しむ、ということなのだろうけど。
メインの話と思われる、姉ということにしておいた好きだった女性を親友に横取りされる(むしろさせる、ということだが)という悲恋がメインだが、この筋だけが物語としてのひねりがあるという感じだろうか。しかしやはり設定には無理がある。いくらでも秘密がバレる要素が多すぎる。恋愛の感情も性急すぎだろう。
というような訳で感心しないのだが、普段は演じる方の人たちが、何を面白いと思って映画を作ったのかという興味においては、なるほどな、とは思う。演劇の人たちは、こういう機微を面白がるのだろう。いわゆる身内ネタっぽいが。米国にもそのようなネタを映画にしたものは多いのだが、総じて大して面白くはない。どういう訳か批評家ウケは良かったりするのだが、別に通ぶって気取っても仕方がない。単にそういう分野があるというだけのことであろう。