カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

美しさは最大の権力   ヘルタースケルター

2023-02-20 | 映画

ヘルタースケルター/蜷川実花監督

 原作は岡崎京子の漫画。カリスマ・モデルのりりこは、実は違法の美容整形を受けた完全な人造人間である。性格も悪く、ドラッグをやってて支離滅裂である。様々な危ない橋を渡っているけれど、その人造の美貌は多くの人の心を捉えて離さないために、大人気を誇っている。本人もある意味で登り詰めたスターの座に君臨する、現代の女王だ。しかし無理な整形を繰り返したために肌のシミのようなものを隠さなければならないし、その人工的な美貌の維持のために、定期的な整形手術を受け続けなければならない。そのうえ性格も悪いだけでなく、ドラッグに依存し続けてもいて、献身的なマネージャー・カップルを使って悪事も働く。そうして新しい美しさで注目を集めるライバルが登場して台頭してくるので、プレッシャーで押しつぶされそうになっていくのだった……。
 主人公を演じているのが沢尻エリカで、彼女を知っている我々は、実に彼女そのものの映画ではないか、と疑いを持つに違いない。しかし彼女は演じている訳であって、本人を地でいっているわけではないかもしれないところが、最大のみそである。とにかくそれは本当に演じているのが本人なのか、よく分からなくなって凄いことになっていく。最初からそうなるのではないかという予感は当然あるが、どんどんその期待のままお話は突き進んでいって、本当にひどくなってしまう。僕は原作も読んでいるはずだが、ほんとにこんな話だったっけ? と思ってしまうほど、かえってリアリティがあるかもしれない。これほど漫画的な映画なのに、それでいいのだろうか……。    もちろん、いいのだが……。
 セックスにドラッグに裏切りに嫉妬に、もう大変である。危ない橋ばかり渡っているけど、きれいであるうちは、そのすべてが上手く行く力になっている。それは本人自身が一番よく分かっていて、その美しさのために様々な苦痛に耐え抜いている。それは本当に自分のためなのか、実は人々の期待の為なのだろうか。本人の狂気のはずなのに、それが人々の彼女にそそぐ願望そのものではないか、とも思われる訳である。そこらあたりがこの映画の映画的なところなのだろう。嫌悪的な酷さだが、しかしそれが人間の持つ欲望の果てなのである。
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