カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

北欧の冬は厳しい(たぶん)   好きにならずにいられない

2025-01-11 | 映画

好きにならずにいられない/ダーグル・カウリ監督

 舞台はアイスランド。かなり太ったオタクで、母と一応は二人暮らしで、独身で、おそらく童貞の中年男の恋物語である。
 その太っちょ男のフーシは、空港で荷物を扱う仕事をしているが、同僚からは馬鹿にされ、ほとんどいじめられている。ミニチュアで過去の戦場を再現するなどを趣味とした、軍事オタクな面や、ラジコンなど、おそらく子供のころから好きなことをずっと大人になってもやっている感じだ(その仲間もいる)。母親に彼氏ができて、その彼氏からダンスレッスンのチケットをプレゼントされる(少しでも女性ときっかけができるように、という意味らしい)。気が乗らずダンススクールのスタジオの前で車から眺めていると、外は吹雪になってしまい、帰れなくて困った女性が、乗せて送って欲しいとフーシの車に乗り込んでくる。そのまま無事に送り届け、翌週からダンススクールに行く気になる。奔放に見えるこの女性に、いわゆる惚れてしまうのだ。一緒に食事に行ったり、趣味の話をしたり、どんどん親密になっていくのだったが……。
 魅力的な女性ではあるが、ちょっとした問題を抱えている。いや、それなりに深刻な問題すぎるとも言えるが。献身的にフーシはふるまうことになるが、うまく行っているように見えない。フーシはふだんの生活でも、子供の誘拐犯と間違われたり、同僚たちから性的なプレゼントを受けても素直に反応できず拒否したり、もう散々である。そういった痛い日常が、坦々と描かれていく。
 太りすぎのオタクというのは、その見た目だけでもかなり社会的な偏見にさらされるということが、外国でもあることが分かる。しかしながらこのフーシをみていると、オタクだがその技術的なことを他の人にひけらかすこともしないし、行きつけの店の店主からも好意を持たれているし、ラジオのリクエスト先からも、ちゃんと敬意を払われている。いわゆる居場所がそれなりにしっかりしているし、日本のオタクの痛い人とは、なんだかかなり違ういい人間である。いじめられてもからかいだとして、告発することすらしない。彼女に好かれるために旅行を提案するなどは、少し展開を早まりすぎだとはいえるが、意思表示をちゃんとしているとも言えて、オタクでも偉いオタクである。だから本当に嫌われるような存在には、見えないのである(実際、あんがい好かれているわけで)。
 そういう訳で、観ている人間としては、かなりフーシのことを応援してしまう訳だが、そこらあたりはそれなりにシビアなのであった。まあ、それも考え方だが、北欧というのは、そういう厳しい冬を体験する強さがあるのかもしれない、と思ったことだった。
コメント
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