「泳ぐひと」は、いろいろと解説のなされている作品である。何しろ普通に観ていても、たぶんほとんど意味は分からない。何かの寓意があるはずだとは分かるが、それはいったいなんなのだろう。最初にあったアメリカ的な明るさは、段々とぐらつき、そうしてついには、アメリカ的な不安と絶望に変わっていく。変な映画だけど、素晴らしいのである。
「よこがお」は、不条理ホラーといっていい作品かもしれない。そうして復讐の物語である。最初から、このミステリ自体がどういう設定なのかよく分からない。分からないが、何か彼女の行動には意味があるらしい。その意味が分かると恐ろしいのだが、しかしこんな復讐のやり方ってあるんだろうか。僕は男だからだろう、やはり、女は恐ろしいと思ってしまうわけだが、そういう考えでは、本当の恐ろしさなんて分かっていないのかもしれない。
「木琴」はストーカーの話である。これもじわじわ来る恐ろしさがあるのだが、この異常さは、彼女の持っている固有の異常さなのだろうか? そのように考えてしまう人は、単なる鈍感なる持ち主かもしれない。確かに、段々と軌道を逸してしまっているように見えるが、これは実話をもとにしている。だからなのか、なんとなく一貫性が無くちぐはぐだ。そうして、これは普通の恋愛でもありうるのではないだろうか。
「ボーダー」は、特殊メイクで異形の世界を描いているが、この雰囲気自体が、やはり日本のものとは違う暴力性を思わせる。ちょっとパワーが違うな、という感じだ。僕は結構感心して観たのだが、他の人はどう感じるのだろう。人種問題や、差別などのことも考えさせられる。素直に気持ちが悪いながら、それを肯定しなければ、偏見はぬぐえない。難しい宿題が、そこには明確にある、ということを考えさせられるのである。
泳ぐひと/フランク・ペリー監督
よこがお/深田晃司監督
だれかの木琴/東陽一監督
ボーダー 二つの世界/アリ・アッバシ監督