カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

不条理。そして変な映画(2020年をふりかえる)

2021-01-16 | なんでもランキング

 「泳ぐひと」は、いろいろと解説のなされている作品である。何しろ普通に観ていても、たぶんほとんど意味は分からない。何かの寓意があるはずだとは分かるが、それはいったいなんなのだろう。最初にあったアメリカ的な明るさは、段々とぐらつき、そうしてついには、アメリカ的な不安と絶望に変わっていく。変な映画だけど、素晴らしいのである。
 「よこがお」は、不条理ホラーといっていい作品かもしれない。そうして復讐の物語である。最初から、このミステリ自体がどういう設定なのかよく分からない。分からないが、何か彼女の行動には意味があるらしい。その意味が分かると恐ろしいのだが、しかしこんな復讐のやり方ってあるんだろうか。僕は男だからだろう、やはり、女は恐ろしいと思ってしまうわけだが、そういう考えでは、本当の恐ろしさなんて分かっていないのかもしれない。
 「木琴」はストーカーの話である。これもじわじわ来る恐ろしさがあるのだが、この異常さは、彼女の持っている固有の異常さなのだろうか? そのように考えてしまう人は、単なる鈍感なる持ち主かもしれない。確かに、段々と軌道を逸してしまっているように見えるが、これは実話をもとにしている。だからなのか、なんとなく一貫性が無くちぐはぐだ。そうして、これは普通の恋愛でもありうるのではないだろうか。
 「ボーダー」は、特殊メイクで異形の世界を描いているが、この雰囲気自体が、やはり日本のものとは違う暴力性を思わせる。ちょっとパワーが違うな、という感じだ。僕は結構感心して観たのだが、他の人はどう感じるのだろう。人種問題や、差別などのことも考えさせられる。素直に気持ちが悪いながら、それを肯定しなければ、偏見はぬぐえない。難しい宿題が、そこには明確にある、ということを考えさせられるのである。

泳ぐひと/フランク・ペリー監督
よこがお/深田晃司監督
だれかの木琴/東陽一監督
ボーダー 二つの世界/アリ・アッバシ監督
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ショートのプレイがチームを救う   守備の極意

2021-01-15 | 読書

守備の極意/チャド・ハーバック著(早川書房)

 体が細く、バッティングは今一つだが、ショートの守備においてはほれぼれするようなプレーをする少年を見つけた大学生のマイク。その名ショート、ヘンリーをさらに鍛え上げ、自らの大学の救世主としてグングン伸ばしていく。このヘンリーがバイブルのように持ち歩きながら読んでいる本の名前が「守備の極意」。そしてこの本を書いたアパリシオ・ロドリゲスの持つ連続無失策記録に並ぶまでに快進撃を成し遂げるまでになる。マスコミにも注目され、ドラフトの目玉選手とまで言われるほどになるのだが、そういう時になんでもないゴロをさばいて大暴投をしてしまう。何の狂いが出たのか分からぬまま、大スランプに陥ってしまうのだったが……。
 要するに熱血野球小説なのだが、実は、野球の試合をやっているのが中心になった話なのではない。恋の物語であり、友情であり、そして同性愛など、人間の常識や倫理に関する問いかけでもある。確かに野球に異常にのめりこむあまり、その地獄の特訓で尋常さを超えてしまう日常を送っている。それはまるで漫画のスポ根には違いないのだが、それは恐らく一種のユーモアで、中心になっているのは、それらを織りなす人間模様だ。マイクの野球にかける情熱の異常さが、その周りの人間を巻き込んで、さらにヒートアップする。しかし同時に、実は彼が話の主人公なのかはよく分からない。出てくる人間のそれぞれの人生模様が、実に活き活きと描かれて、まさにアメリカの今を伝えている。
 文章を読んでいるそのこと自体が、楽しいという小説である。何かとぼけているようでいて、実に細かく饒舌で、しかし計算されつくしている。長い物語には違いないが(上下二巻)、9年の歳月を費やして完成したという逸話も、納得のいく構成の素晴らしい作品だ。そうして人間模様は、いったいどこに行くのか分からなくなる。これだけいろいろなものが壊れて、そうして爆発するような出来事が続いて、しかし、悲しいながら爽快な気分を放っている。要するに素晴らしい。これぞ、「THE文学」なのではなかろうか。
 実は絶版になっていて、長らく手に取れなかった。ふと地元の図書館で手に取って拾い読みして、これは買いだ! と思って飛びついた。今は値が崩れているので、まさに買いだ! と思う。これだけ面白いのだから、なんで絶版になったのか、本当に不思議だ。文庫化して再販すべきであろう。
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なんとなくいい映画(2020年をふりかえる)

2021-01-14 | なんでもランキング

 今回は、いわゆる佳作というか、でもそれだけも無くて、いわゆるあんがいいい映画じゃん、というような印象に残った作品の紹介である。
 「恋のドッグファイト」は、アメリカのようなところでも、こんなシャイな恋愛があるんだなあ、という感じかもしれない。おそらく十代なので、性的にも興味があってひかれあう年頃である(いつでもそうだといえばそうかもしれないけど)。でもまあ、最悪なことをしてしまって、お詫びというか、いきがかり上というか、二人は一晩いろんな体験をする。はっきり言って何でもないようなことばかりなのだが、これで二人の一生が、事実上決まるようなものだ。お互いを信用しあうというのは、そういうことなんじゃなかろうか。
 「ひみつの花園」は、ものすごく変な話だけど、ものすごく力のある作品じゃないかと思う。主人公は馬鹿には違いないが、人生というのはバカみたいなものなのである。でも、そのためにどう生きたらいいのかということは、多くの人には分かっていない。しあわせとか幸運とか、どこからか降ってくるのを待っているような人生ほど、つまらないものは無いのかもしれない。
 「すべては海になる」は、ひょっとすると女の人のやさしさというものが、自分自身の人生の多くを奪ってしまっているのではないか、ということに気づかされるのではないか。僕もこれを観て、なるほど、そういう人がいるのかもしれない、と改めて考えさせられた。女の人は自分の性を、同情心のようなもので、相手に与えてしまっている。それは、自分に返ってくるはずの期待であるはずだ。しかしその期待は、恐らくだが返ってくるはずが無いのだ。そんなのあたりまえである。自分の主体性とは何か、とか、性と感情は一体であっていい、という当たり前の話なのだが、まあ、深読みしすぎですかね。

恋のドッグファイト/ナンシー・サヴォカ監督
ひみつの花園/矢口史靖監督
すべては海になる/山田あかね監督
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時代が悪いか相手が悪いか   Cold war あの歌、二つの心

2021-01-13 | 映画

Cold war あの歌、二つの心/パヴェウ・パヴリコフスキ監督

 著名な音楽家と、オーディションで選ばれた歌手との恋物語。音楽家は、いわば立場が上の存在だが、歌い手の女の子は、見出された才能の持ち主だ。共産主義下のポーランドが舞台で、政治的に虐げられた芸術世界にあって、窮屈さに音楽家は亡命する。そうして二人の仲は引き裂かれ、時を経て、ともに別のパートナーを持つことになる。しかしながらお互いに忘れがたい存在だったらしく、再会するとまた、愛が燃え上がる。時代の変遷やすれ違いはあるが、パリでの再開でお互いのパートナーを捨てやっと結ばれる。音楽家の男は、彼女を正式にスターとして売り出そうと試みるが、その過程で女は男の過去の女に嫉妬などして、せっかくの仲は破局してしまうのだった……。
 共産主義統治下のポーランドにあって、芸術家は遠征で諸外国へ行くことができた訳だが、才能のある人間は、それだけ亡命のチャンスがある。そこで何度も国境を隔てた関係があるからこそ、再会後にまた思いが激しく燃え上がるのかもしれない。
 映像的な説明は最小限で、なおかつ、時間軸がどんどん飛んでいく。民族音楽やジャズなど素晴らしい演奏や踊りなどが、うつろう時間や感情を見事に表現している。何故か白黒なのだが、暗いポーランドの共産主義の影や、パリなどの歴史的な街並み、そしてこのカップルのその時々の表情を豊かに表現している。
 この芸術的ともいえる作風のためか、諸外国の数々の映画賞にノミネートされ、それなりの賞も受賞した。ただし、芸術的だからお高く留まっている映画という訳ではなく、時代に翻弄される中で苦悩する男女の悲哀を味わう娯楽作にもなっている。特に奔放なヒロインには、主人公の男のみならず、観客も翻弄されるのではあるまいか。最後は物語なりに皮肉なハッピーエンドなのだが、こんな人生まっぴらである。
 しかしまあ、恋に落ちたのなら仕方がない。恋愛とはある意味で命がけである。そうして命はいくつも無いから、人の命を使って考えるより仕方ない。自分の命は誰に使うか、それが決まっているなら、素直に従うべきである。
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最も美しいセオリー(2020年をふりかえる)

2021-01-12 | なんでもランキング

 前から好きだったのかもしれない分野なのだが、また個人的なブームが再燃している。理由はストレートに、面白いから。きっかけはコロナだったかもしれない。ウイルスのおかげで、生物のことをいろいろ考えるようになって、結局また進化論に来てしまった。そうして、どうやら僕は生半可にしか進化論関係を読んでいなかった。
 「現代によみがえる」は、少し古い筈なんだが、改めて総合的に俯瞰するには、最適な本だ。おおもとのダーウィンは、本当に古くなっていないのだ。その時代背景にありながら、いかに自由に、そうして科学的に、ダーウィンは思考を深めていったのだろうか。廻りの人間を含めて、人間の思考錯誤が面白いのである。
 「系統樹」という分類については、生物の世界にはいつもついてまわる問題だ。系統樹をもって今や過去を知る手法なんて、ありふれている一手法だと思っていた。ところがこれがとんでもない。系統樹で考えるというのは、ダイレクトに歴史がそのまま科学であるという姿そのものなのだ。この面白さは、ちょっといろいろはみ出しすぎて、手に余ってしまうのだった。
 本当は先のほんの前に「理不尽な」を読んでいて、途中であれっと思ったのが、そもそものきっかけだった。言っていることは分かるのだが、なんだか僕が理解していることとは違うのか? それももう確定して違うのか? そのさまざまな論をこれまで読んでいて気づかなかった僕が愚かだった。僕は完全に進化論を誤解していた。様々な進化論の本を読んできて、確かになんとなくモヤモヤしたものがあったはずなのだ。そのモヤモヤの道筋がやっと見えてきた感じだ。楽しいブックガイドにもなっていて、これは道の始まりなのである。
 「王様気取りの」は、けっこう恐ろしい名著である。人間は改めて人間で、そうして驚異の地球の環境の中で暮らしている。そうして、実際に様々な感染症にかかる可能性があり、そうしてあるいは、それらの感染と共存しながら存在している。これはもう、人生は運だというのは明確だ。我々はある意味で生かされている。我々は狭い社会の中でしか生きていけない弱きものだったのだ。
 そうして「マリス博士」なのだ。マリス博士は現在世界中でもっとも有名なノーベル賞受賞者だろう。ええっ、知らないはずないですよ。マリス博士がPCR検査を発見したのだ。それも彼女とドライブ中に思いついて、そのまま熱中してその理屈を確立してしまった。そうしてサーフィンして気ままに暮らしましたとさ。まったく変な人がいたもんだ。本当に世界を変えてしまったのだ。ま、楽しく生きたものが、人生の勝者である。

現代によみがえるダーウィン/長谷川真理子、三中信宏、矢原徹一著(文一総合出版)
系統樹思考の世界/三中信宏著(講談社現代新書)
理不尽な進化/吉川浩満著(朝日出版社)
王様気どりのハエ/ロバート・S・デソヴィツ著(紀伊国屋書店)
マリス博士の奇想天外な人生/キャリー・マリス著(ハヤカワ文庫)
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ちょっと変、別にお勧めではないはずだが(2020年をふりかえる)

2021-01-12 | なんでもランキング

 「クーリンジエ」は、映画関係者には評判のいい映画だ。映画の枠から考えると長すぎる尺なのだが、二三回に分けて観るドラマのようなものだと思えばいいかもしれない。一つのコマに納めることのできなかった監督の力量不足ともいえるし、そもそもそんなこと関係ねえさ、という開き直りかもしれない。そういうところは気に入らないのだが、しかし見ていくと、非凡なのは確かなのだ。映画なのだが文学性が高いというか、なんとなくハマり観てしまう。まあ、お暇ならどうぞ、なのだけど、語り合いたい映画かもしれない。
 「誰もがそれを」も、妙な映画である。サスペンスであり、緊張感も確かにある。しかしこれは究極の愛でもあり、ずるがしこい詐欺でもある。こういう感覚は、南米や南ヨーロッパにはたまにある。愛がすべてで愛のためなら何でもやる、という美徳感があって、しかし人を騙して儲かるような人間が偉いのである。これは日本人にはほとんど理解できない倫理観なのだが、しかしやはり愛の前に勝てない人間が出てくるのだ。人はそれを最大限利用しようとする。まあ、馬鹿とお人よしは同格だということなんでしょうか。
 「甘い生活」は、一応名作ということで定着している。しかしながら、この映画の意味が分かっている人なんてほとんどいないだろう。作った監督だって、意味を知っているかどうか怪しいものだ。しかしながら物語は進み、混沌は深まる。何か気分的にいい映画を観たという錯覚は残る。ほんとに不思議な映画は、そうやって神格化してしまうのである。
 「女王陛下のお気に入り」も不思議な物語だ。貴族という廃退的な世界に使われる人間が、どのような方法でのし上がっていくか。手っ取り早いのは気に入られることだ。しかしながら、直接気に入られるのは最も重要であるのだけれど、周りにも気に入られるために努力や地位を保っている人々だっている中でのことだ。そういうバランスの中にあって、どのような生き方を人間はすべきなのだろうか。ほとんどホラー映画みたいな緊張感がある。しかし勝負の行方も気になるところではないだろうか。
 「フレンチアルプス」は、気まずいコメディである。夫婦という他人を見事に描いてはいるんだろうが、実際は単なる個人のエゴだ。それもきわめてヨーロッパ的な、他人が悪いというエゴだ。胸糞が悪くなり、せっかくのパーティがすべて台無しになる。そんな感じ。そういうのを楽しめる人種がいるらしく、こういう映画がある。普通なら勧めないけど、大人ならば観てもいいかも、という思いで紹介するのである。
 「ファントム・スレッド」は、僕はいい映画だと思うが、さて、そう一般的にそう思われるのかどうか自信がない。ラストも愛があれば当然、と思う。それは神風を生んだ日本男児の末裔だから? まさかね。でも本当に、僕なら同じようにしますとも。仕事のために選んだ女性に愛が無いとでも思ったんでしょうか? 女の人というのは欲張りだと、僕は思います(まあ、そういう話だから仕方ないんだけど)。

牯嶺街(クーリンジエ)少年殺人事件/エドワード・ヤン監督
誰もがそれを知っている/アスガー・ファルハディ監督
甘い生活/フェデリコ・フェリーニ監督
女王陛下のお気に入り/ヨルゴス・ランティモス監督
フレンチアルプスで起きたこと/リューベン・オストルンド監督
ファントム・スレッド/ポール・トーマス・アンダーソン監督
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人間は動物的に同じ倫理をもっている   ダーウィンの思想

2021-01-11 | 読書

ダーウィンの思想/内井惣七著(岩波新書)

 副題に「人間と動物のあいだ」とある。おそらく現代人の誰もが知っているダーウィンの進化論だが、同時にあまり読まれていないだろうことでも有名だ。ふつうに翻訳されて売られてもいるし、僕なんかは持ってもいるが、ちゃんと読んだことは無い。少しだけ読んで、なんだか面倒になってやめてしまうのだが。そうして入門書を読む。普通ならそれらの一つだと紹介しても良いのだが、そのそれらというものの中には、ダーウィンを理解してないまま書かれているものがそれなりにある。ダーウィンを理解しているうえで書かれている入門書の一つと紹介するべきであろう。
 200年近く前のダーウィンの育った環境においては、進化論が人間も関係している理論だということを考えることがいかに困難だったか。実際たいへんだったわけで、そういう背景もあって、ダーウィンは慎重に慎重に、様々な事実を集めて論証し、進化論という流れの正当性を組み上げていたのだ。そうしてダーウィンが更に凄いと思われるのは、人間の道徳心というようなものでさえ、進化論で解けるとしたことだ。さすがにこれは理解できなかった人や反発を覚えた人がたくさんいたようで、そのためがあったせいだとばかりとも言えないが、結局その当時は進化論自体は驚きの反応がありながら、その後は一時期停滞する。しかし時代は進み新しく化石が見つかったり、地層の時代検証が正確に行われるようになったりなど様々な目覚ましい進歩を遂げ、ダーウィンの進化論はどんどん新しい成果として証明がなされるようになっていく。そうでありながら、人間の生きている時間はあまりにも短い。感覚としての進化というのは、例えばスポーツ選手が激しい訓練を積んで新たな記録を打ち立てるなど、そのような進化論となまるで関係ない事象を含んだ物言いを可能にしてしまうような錯覚を起こしてしまう。そうして現代人にとっての進化論は、一般的に誤解だらけのものばかりがあふれてしまうのである。それはある意味で仕方のないことではあるものの、だいたいの感じとしての進化論の壮大な流れと我々の考えの癖のような本能的なものを、進化論を交えて考え直してもいいのではあるまいか。
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これぞ傑作(2020年をふりかえる)

2021-01-10 | なんでもランキング

 本来はこれからスタートすべき企画だったはずである。それというのも、昨年僕が見た中で、文句なしに傑作で、誰もが楽しんで観られるだろう作品たちだからである。ちょっと意外に感じられる作品も入っているかもしれないが、しかしこれを皆が見た後であれば、日本全国どこであっても、なるほどそうだったかもしれないな、と思うはずだと思う。僕の個人的なものがあるとはいえ、それくらい普遍的に面白いものは面白く、優れているものは優れているのである。
 という前置きがあって、やっぱり面白くて凄い作品というのは「パラサイト」であろう。社会批評性を高めてカッコつけて描きたくなる題材を、重層的でなおかつギャグをちりばめて、ミステリでありながらしっかり心理ホラーも混ぜ込み、そうして社会性をしっかり担保している。要するにごちゃごちゃとしていながら整合性があり、エンタティメント性がしっかりした上で、人々を感心させてしまうのだ。興行的にも成功である。もう一つ言えるとしたら、やはり韓国映画であって、日本でも「万引き家族」は出来るんだけど、「パラサイト」みたいに、ひょっとするとハリウッドでも作られそうな感じにはならない。まあ、そこのところはいくぶん議論はあるかもしれないけど、そういうメジャー感はさすがだと思う。
 「盲目」も最初に言っておくと、まあ、インドらしいというのは言えるのだが、それでも国際性もやっぱりあるってことである。この状況はさすがにインドだろうってことだけど、言っていることは、かなり国際性が高いというか。しかしやっぱりこれは、インドだから面白いんですけどね。かなりホラーでブラックなことになるんだけど、ギャグでもあって、人情噺だったりもする。そういうのが、本当にもうこてこてに盛られていて、観ている方が心配してしまうのである。爆発力もあって、しっかり娯楽として楽しめるだろう。これでいいのかどうかは、後から考えてもよく分からないんだけどね。
 「婚前特急」は、こんなに面白い映画を見逃してたのか! という反省として。ツボにはまったというのはあるかもしれないが、こういうコメディはそう簡単にできるものではない。キャラクターが生きていて、現実でもこのキャラで起こりそうなことが次々起こって、見栄も手伝って大騒動になる。二転三転のどんでん返しがあったりして、本当にそうなっちゃうんだ! って大爆笑である。ま、そうならない人はごめんなさい。こういうのこそ本当の傑作だと僕は思います。ちょっとしたアイディア次第でいろんなことができるんだという、夢と希望が湧いてくるような、真に素晴らしい作品ではないだろうか。

パラサイト 半地下の家族/ポン・ジュノ監督
盲目のメロディ~インド式殺人協奏曲~/シュリラーム・ラガヴァン監督
婚前特急/前田弘二監督
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悪い奴らから金はとっていいのか   ハスラーズ

2021-01-09 | 映画

ハスラーズ/ローリーン・スカファリア監督

 もともと夜の街で働いていた東洋系の女性が、ストリップ・ダンスを売りにする店で働くことになる。そこで知り合ったトップダンサーと友情を深め、そこそこ稼げるようになったところでリーマンショックを迎え、業界は激しく落ち込んでしまう。夜の街以外にろくに仕事ができない女たちは、まだ証券業界では稼いでいる男たちから、金を巻き上げることにするのだったが……。
 ジェニファー・ロペスの迫力あるエロチックダンスなどが話題になり、それなりにヒットした作品である。エロ目的の人が多かっただろうことは考えられるが、監督さんが女性なので、男目線からすると派手な割にそんなにエロくは無い(これはもう仕方ないことだが)。さらにお金を稼いだ男たちから、お金を巻き上げて何が悪いのか? という倫理観が根底にあって、そういうところがこの犯罪の面白さのような見せ方になっている。もちろんやばいことをやっている自覚はあるのだが、いわゆる反省のかけらも無い。悪い奴らが汚い金を稼いで、女にうつつを抜かして金を使うのを手伝った、程度にしか思っていないからだ。しかしながら、やっていることは相手の酒に薬を混ぜて眠らせて、キャッシュカードの番号を夢うつつの男から聞き出して引き出して逃げるというもの。映画でははっきりとは描かれてはいないが、恐らく起きているときに、簡単にはひとには言えないことをしている可能性が高い。だから男たちの多くは被害届けも出さず泣き寝入りしてしまう。そこに付け込んで、またターゲットを釣り上げて、犯行を繰り返していたわけだ。
 日本でもぼったくりバーが話題になったことがあるが、そういうのには警察も民事不介入なので厄介なことにはなるにせよ、大金を無謀に盗られたら被害届を出す。盗んだお金は返すのが筋だ。要するにそのような犯罪を断行し、失敗に至るお話である。その当時はそれだけ華やかに金を使う馬鹿なお金持ちがたくさんいて(たぶん今もいるはずだが)、それに乗じてこのようなことをして稼いだ武勇伝があるということなんだろう。
 こういう映画をどう評価するのかは、あんがい難しい。倫理の点で引っかかってしまって、そういう中での犯罪心理が上手く理解できないからだ。女性たちの友情はいいのだが、今時マフィアのボスだって、もう少しは自分なりの倫理観があるに違いないのである。子育てのために仕方がなくやったということであれば、高価な毛皮のコートが本当に必要なのだろうか? 
 まあ、娯楽作である。悲しみもあって評価が高いということなら、それはそれでいいでしょう。なるほど迫真の演技と華やかな犯罪劇の顛末と、男達への制裁を考えてみる映画なのだろう。
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コメディ(2020年をふりかえる)

2021-01-08 | なんでもランキング

 これは最初に分類に難があるのかもしれないが、コメディのみで括りを付けたら二作品しかなくなってしまった。実はほかで分類してしまった中で、コメディが混ざっているからである。コメディとして優秀であるばかりでなく、別に考えることがあったということだろう。ということはこの二作品が、コメディとしての純粋さがあるのかというと、確かにそういうところはありながら、ちゃんと僕自身が笑えたということもあるんだと思う。実際は、他の分類と同様、別に考えさせられる視点はちゃんとある。しかしながら、それでもこれらは純粋に笑っていいのだと思う。あんまり考えなくていいのだと思う。でも後から考えると、それなりの教養も必要とするわけだが……。
 それで「アドルフ」なのだが、これは、実はちょっとやりすぎだと思う。僕はこういう遊びをするような人たちを、本当は素直に好きにはなれない。いたずらなのだが、引き時が悪いのだ。そうして取り返しのつかないことになってしまう。一応映画では、後味の悪くない演出はなされてはいる。しかしながら途中では、見ながら本当に途方に暮れてしまう。すべてがぶち壊しだ。破壊されまくって荒野が広がっている。呆然と立ち尽くし、歩く気力も失ってしまうだろう。そういう風景を観ながら、人は笑っていられる。まあ、そういうことを言いたいと、観ている僕は思ったわけだ。
 「亀岡拓次」は、それなりに傑作だと思う。いわゆる笑わせている仕掛けがあるが、いや、ふつうはこれは渋いのである。そうして情けない。恋愛の物語でもあるが、それがなかなかにいい感じなのだが、でもあれっとずっこけてしまう。悲しいがおかしい。そうしてどうしようもなく切なく情けない。まあ、はまってしまうと、続編を観たいとも思う。続編の予定はあるんだっけ? 知らないが、出来るはずであろう。


お名前はアドルフ?/ゼーンケ・ヴォルトマン監督
俳優 亀岡拓次/横浜聡子監督
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特権階級の社交界を覗く   舞踏会の手帖

2021-01-07 | 映画

舞踏会の手帖/ジュリアン・ディヴィヴィエ監督

 おそらくお金持ちでずいぶん年配の夫だったのだろう、夫が亡くなって若くして未亡人になった美しい夫人が、20年前当時自身が16歳だったころにデビューした社交界のダンスパーティで自分を誘った男たちを記した手帖をもとに、当時愛をかわした男たちを探して回る旅に出るという物語。
 20年の月日を経て、男たちの境遇は様変わりしている。あるものは当時から非常に魅力的だった夫人にふられて自殺したものや、うらぶれて病気になったような者もいる。おそらく未亡人は、それらの男たちをふったうえで、一番資産家で手堅い年上の男を選んだのであろう。舞踏会で出会った男たちの中に、ひょっとしたらほんとうのしあわせをつかめたかもしれない夢を追っているのかもしれない。
 一人二人と探し求めていくうちに、20年という歳月と、現在の残酷な現実を向き合うことになる。そうして最後はどうなるのか? ということになるが、まあ、確かによくできているお話かもしれない。
 1937年のフランス映画だが、その華やかさのためか、戦中戦後と日本では二回にわたって封切られたものだという。当時の日本人が、このきらびやかな異国の世界を、どのような感情をもって観たものであろうか。日本にも貴族はいたのかもしれないが、本場のヨーロッパのフランスにおける貴族というのは、文化も違うことながら、その華やかさのレベルは段違いであったことだろう。おそらくその憧れと、畏敬の視点がまじりあって、この皮肉な物語を味わったのではあるまいか。必ずしもハッピーなお話では無いものの、そのような映画的な娯楽が、当時の大衆の欲するところと同調したのかもしれない。
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ホラー(2020年をふりかえる)

2021-01-06 | なんでもランキング

 「ヘレディタリー」は、もともと変な話なのである。ホラー映画には違いないが、実際は怖いことだけを狙っているのではないのではないか。カメラの映し方が上手いというか、そのカメラワーク自体が、寓話的になっている。見ていて、あれっと思ったら、入れ子状態でお話の中に入っている感覚になる。上手く伝わらないだろうけれど、お話の構造がすでにフェイクなのだ。そうして主人公と同じく、抗いがたい悪意に捕われていくことになる。終わってみると、そういうお話だったのか! と、改めて感服してしまう。まあ、よく考えられた秀作であろう。
 「RAW」は、苦手な分野の気持ち悪さである。僕は血に弱いからだ。人間もある種の肉食人種だが、それにあらがう人もいる。それは、その本性に耐えられないからだろう。日本人には、いわゆる極端な菜食主義者は比較的少ないと思われるが、それは完全に肉食の文化でもないからだと思う。だからその反発心も少ないのだろう。だが、そうではなく、本当に肉食でなければならない人種ならどうなるか。まあ、とにかく気持ち悪いことになるのであろう。
 「デトロイト」と「ムンバイ」は実話の再現である。そこに、ものすごく重みを感じる。人間が行う残酷さとは何なのか。人の命とは何だろう。閉鎖空間のいじめというのは、究極にはこのようなことになるのではないか。子供の問題として放置してはならないのは、これを観れば一目瞭然だろう。いじめの本質や、正義の遂行には、このような結果がある。それは大きな精神や肉体の犠牲を強いるからだ。見ていてただつらい時間をあじわう。それすら拷問で、まったくマゾ的である。ちっとも楽しいわけではないのだが、味わってもらうより無いだろう。そうして相互理解が広がる。いじめや戦争はいけないことである。うわべだけで言ってはならない。これらの映画を観てから言う言葉なのである。
 そうして究極が「幼い依頼人」だ。これはホラー映画ですらない。しかしこれ以上の恐怖を、僕は知らない。いや、知らなかった。何故なら、この恐怖は簡単に防ぐことができるはずなのである。しかし同時に、この子らの力では、自らの力だけでは、絶対にどうしようもなく、逃れる術はない。絶望というのは、このことを言う。そして繰り返されてはならない恐怖なのだ。

へレディタリー継承/アリ・アスター監督
RAW 少女のめざめ/ジュリア・デュクルノー監督
デトロイト/キャサリン・ビグロー監督
ホテル・ムンバイ/アンソニー・マラス監督
幼い依頼人/チャン・ギュソン監督
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ひとの失敗こそ本当に生きる哲学だ   ゲンロン戦記‐「知の観客」をつくる

2021-01-05 | 読書

ゲンロン戦記‐「知の観客」をつくる/東浩紀著(中公新書ラクレ)

 東浩紀がゲンロンという名前の会社を立ち上げて現在に至るまでのお話。哲学者で批評家の若手スターである東が、自分の集まりたい仲間を集めて、恐らく何物の資本にもとらわれない自由なスタイルで活動したいという思いから、会社を立ち上げることになる。出版物など最初からまずまずの滑り出しだったはずなのに、何故か経理が上手く回らなくなり、経営的に貧困する。つまるところ会社内の人間関係などの問題が多発する中、その管理を上手くできない経営者が、何度も失敗するさまを赤裸々につづっている。そうして現在どのような姿で生き残ってきたのか、というある程度のサクセス・ストーリーになっている。
 非常に読みやすい上手い文章になっていて、あれっと最初に思う。本来、東の文章やお話は、読みにくかったり分かりにくいからだ。それというのもこれは語り下ろしということで、第三者が東の話を聞いてまとめたものなのだった。そういうわけで、実にスラスラ面白おかしく読んで、不思議な感動のあるお話になっている。本人も語っていることだが、ほとんどが会社経営をやっている失敗談なのだけど、これがものすごく為になるというか、素晴らしいのだ。人は成功すると本を書くものだが、結局は成功した自慢話だし上手くいった運の良さの話ばかりだし、要するに宝くじを買ったら当たったというたぐいに過ぎないわけで、読んだところでほとんど何の足しにもなりはしない。ところが失敗談というのは、本当に人生において大切な本質的なことがむき出しになっており、なるほどなあ、と感心してしまうのだ。本書の帯に宣伝文句で「涙なしで読めない」というコメントがあるが、なるほどそれもよく分かる。共感をもって理解できる本であることは間違いあるまい。
 それにしても、なんとなく身につまされるというのも実感である。曲がりなりにも僕が経営者だということもあるかもしれない。東の失敗は、一見笑ってしまいそうなこともあるのだが、いやいやどうして、確かに多くの人に当てはまることなのではないかと思う。自分が見て見ぬふりをしてしまうことは、何か面倒だったり、そうして結果的には相手の付け入る隙のようなものだったりするのだ。はい、僕もそれで何度も失敗しました。何とか事業所をつぶさずに済んでいるのは、幸運と、周りに助けられただけのことである。東のような才能のある人でも、こんな失敗をしてしまうのだなあ、と妙な親近感を持ってしまった。そうしてついでにゲンロンの本をいくつか買ってしまったじゃないか! ちょっとやられてしまった感のある本かもしれない。面白いです。
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文芸作品とその作者(2020年をふりかえる)

2021-01-04 | なんでもランキング

 僕は本は読むが、いわゆる文学通なのではない。なのではないが、若草物語くらいは知っている。知っていたが、しかし読んだことはない。では知らないかというと知っている。何故かというと、若草物語的な物語は、繰り返し映画化されドラマ化され、亜種がたくさん作られている。特に女性ファンが多いのではないかと推察するが、要するに感情移入しやすく、感動する作品なのだろうと思う。そういう作者自身の物語はどうなのか? 「ストーリー・マイ・ライフ」はその答えなのだが、若草物語そのものより、実は若草物語だったのだ。文句なしの傑作で、そうして本当に楽しい。素晴らしい映画である。
 「長くつ下のピッピ」は、子供のころにテレビで見ていた。当時は流行っていたのだと思う。そういうわけでなじみがあったのだが、作者のことまでは知らなかった。スウェーデンの国民的な童話作家で、日本だと宮沢賢治みたいな感じなんだろうか。たぶん違うと思うが、ともかく偉大なことは間違いあるまい。映画を観て、その奔放さに改めて呆れて、しかし大人に虐げられてもたくましい女性に育った素地が、しっかりと理解できるだろう。主演の女優さんの熱演もあって、いい映画になっている。
 バージニア・ウルフについてもほとんど知らなかった。文学通には評判がいいらしいとは思うが、なんとなく近づきがたい存在という気がしていた。その伝記的な物語だが、実際の人物も、なかなかに問題のある人のようだった。ちょっとしたミステリ仕立てになっており、そういう楽しみ方もできる。ものすごく面白いという訳ではなかろうが、これも文芸と演技と両方が楽しめるいい作品なのではなかろうか。

ストーリー・マイ・ライフ/私の若草物語/グレタ・ガーウィング監督
リンドグレーン/ペアニレ・フィシャー・クリステンセン監督
めぐりあう時間たち/スティーブン・ダルトリー監督
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やす君に首ったけ

2021-01-03 | 感涙記

 NHKに「行くぞ!最果て!秘境×鉄道」っていう番組があって、これの短縮版というか、一応ミニという名称がついたものが朝から何度も流れていた時期があった。場所によっては音尾琢真さんという人が出ていて、それもたいへんに面白くてよかったのではあるが、しかし、僕が熱中したのはほかでもなく「やす君」で、見だしたら止まらなくなって、家族からは呆れられたのだけど、全部録画して観たのだった。


 やす君が素晴らしいのは、枚挙しても足りない。ああ、そうだった。そもそもやす君というのは、本名を古原靖久さんというらしく、俳優さんとして活躍されているらしい。俳優としては見たことがないので何とも言えないが、この人がものすごく面白いのである。


 秘境鉄道なので、ものすごく不便なところに行く。僕は元バックパッカーの端くれなので、これはものすごく興味があったのという前提はあるかもしれない。行くところはうらやましいところばかりなのだが、ともかく、いったん社会人になったのなら、もう行くには時間的にほぼ不可能なところに行くのだけれど、これがまずはものすごく面白い。でもまあ、誰かが選ばれていくのであれば行くのであろう。しかし,やす君が行くのは、ちょっと様相が違う。何度も予定が狂い、そうして待ちぼうけして、駅とはとても思えないような場所に降り立ち、途方に暮れる。しかし、やす君は、全然めげないのである。うわーッという絶望を目の当たりにして、本当に面白がっている。いや、困っているのだが、もう困るけど仕方ないと達観している。それももう、瞬時に。



 僕はもうほとんど毎回爆笑しながら番組を見ていた。これはやす君の性格番組ではないか。言葉はろくすっぽできないが、通訳がいるので体当たりで、でも大筋では合意していて、暇なら子供と遊び、時には真剣に仕事を手伝い、長距離のレースにも参加し、馬にも乗って、鉄道以外の秘境にも行ってしまう。口に合わない食べ物もあったに違いないが、食べたらうーん、うまいと叫び、どんな味なのか例えを出して教えてくれる。酒を飲む場面はなかったと思うが、旅先で人々と溶け込んで楽しんでいる。そういう雰囲気が、ものすごく見ていて楽しい気分にさせられるのである。秘境鉄道なので、番組はあえて過酷なところにやす君をいざなう。でも、まったくそれにめげてなくて、受けて立って、楽しんでしまうのだ。こんな素晴らしい青年が日本人として居たなんて、僕は驚きながら、感動するのだった。


 もうこのような秘境に行くような機会は、それこそ定年しない限りできないだろうが、でもまあ、若くないとこのような旅というのは、面白くないのかもしれないな、と思う。なにしろ、大変である。現地の人も大変かもしれないが、旅行では、予定というのがある。その枠にはとてもあてはまらないし、時間どころか、金もかかる。番組ではよくわからないが、ものすごくたくさんの不都合の上に、この旅が行われたはずなのだ。いじめや拷問に近い感じすらする設定にあって、最後まで楽しめる人なんて、そうそういるはずがないじゃないか。その代表として、やす君がいるのだ。
 再放送があるのかどうか知らないし、DVD化される予定があるのかどうかも知らない。でも皆さん、そういうことがもしもあるとするならば、迷わず買いである。やす君、今後も頑張ってください。
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