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グランドセントラルステーション判決お勉強ノート(その1)


1978年にアメリカの連邦最高裁が出したニューヨークのグランドセントラル駅に関する判決は
歴史的建造物や街づくりの関係では結構有名な判決だと聞いているのですが、
先日BLOGでその件に触れようと思ってググッてみたところ、案に相違して全然出てこない。。
しょうがないので地元の図書館に参考書を求めてみました。

で、以下の記述は「英米法の諸相」(東京大学出版会・1980)収録論文である
「アメリカにおける都市環境の保護と財産権―グランド・セントラル・ターミナル判決(1978)の法の背景―」
(執筆は高橋一修・法政大学教授)
による訳ですが、基本法律にも都市計画にも素人なプラナリアが適当に纏めていますんで、

内容は保証しません

が、ネット上で情報が拾えないみたなのと、市民団体等による差止め訴訟だと思っている人が
建築家の中にも結構いるみたいなんで、お勉強ノートにすぎませんがこの際アップしちゃいます。

グランドセントラルターミナル判決(1978)とは?

1.背景となる法制度など

1956年:
ニューヨーク州 自治体が特別の歴史的・景観的価値を有する建造物、地域を保全するため、
合理的な規制を行うことができるとする授権法を制定
1965年:
ニューヨーク市 「歴史保全法」(条例)制定、歴史保全委員会設置
・市内の建造物のうち「特別の歴史的・景観的価値」のあるもので築30年以上を経たものを「landmark(歴史建築)」、
 またはその建築物の所在する土地を「landmark site(歴史建築所在地)」として指定
・「historic district(歴史地区)」「interior landmaark(歴史的内装)」「scenic landmark(歴史的景勝地)」についても指定
・指定にあたり、公聴会等の一定の手続きを経る
・指定は市のPlanning Commission(都市計画委員会)の報告を考慮し、
 Board of Estimate(市評議会:市長、助役、市議会議長等からなる不動産関係の最高議決機関)により決定
・歴史的建築の指定を受けた場合;
 所有者は外観及び外観に影響する内部構造の保全・補修義務を負う
 改修・取り壊し・新規建設の場合は保全委員会からの許可が必要
 1)歴史的建築の特質に無影響であるとの許可
 2)影響があっても適切であるとの許可
 許可が得られなかった場合で、所有者が現状では合理的な収益をあげえないことを証明した場合には、
 委員会が収益をあげえる計画を作成しなければならない
*1977年までに歴史地区31ヶ所、歴史建築400件以上の指定が行われた。
1968年:
ゾーニング条例改正、歴史的建造物の所有者が、余剰空中権を隣接または道路・交差点を横切った地点の
自己所有地に売却・移転できるとしたTDR(transferable development rights:移転しうる開発権)制度が制定される
1969年:
TDR制度、自己所有地が連続している(道路・交差点の介在も連続と考える)限り、
余剰空中権は隣接地に限らずどこまででも移転しうると改正される

メモ;
授権法とは■州授権法による自治体都市計画権限の付与
(アメリカ合衆国においては)連邦レベルで都市計画を位置づける法律は存在せず、
各州の授権法(都市計画授権法、ゾーニング授権法)によって自治体(市や郡)の都市計画権限が位置づけられている。
(財団法人土地総合研究所HP解説「アメリカの都市計画・土地利用制度」より引用)

公聴会について■公聴会とは何か
日本で「公聴会」と言うと、一般の公式会議とは別に、住民から意見を聞く特別の会議ととらえられるのが普通だ。
しかし、アメリカでは一般の公式会議が限りなく公聴会(Public Hearing)に近く、厳密な区別はないと言ってもいい。
(「アメリカにおける都市計画と市民参加/岡部一明『東邦学誌』第32巻第2号・2003年12月」より引用)

(続く)

*2009.4.22.TDRの説明を追記しました
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