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グランドセントラルステーション判決お勉強ノート(その2)


2.裁判の流れと結論

1967年:
グランドセントラルターミナル(以下GCT)、歴史的建築の指定を受ける
1968年:
GCT上空への高層ビル建設が保全委員会により不許可となる
・所有者であるペン・セントラル鉄道はターミナル上空をUGP社に賃借し、同社が高層ビルを建設する契約を締結。
・両社は歴史保全委員会に2案を提出し高層ビル建設の許可を求めるが、不許可となる。
1) 外壁を毀損する案
→ 歴史的建造物の保全するためには外壁を取壊すことはできない
2) 毀損部分が少ない案
→ ボザール建築にオフィスタワーをのせることは景観的に見て「冗談以外の何ものでもない」
1969年:
両社が州地方裁判所に提訴
・合衆国憲法に違反して、正当な補償もなく財産を収用するものである
・憲法で定める法の適正手続きに違反して、恣意的に財産を奪うものである

・歴史保全条例が適用において違憲であるとの宣言的判決を求める
(歴史保全条例自体の原則的合憲性は先例により確立済→「適用違憲」を争う)
・(指定されたことによる)ビル建設の妨害を排除する差止め判決を求める
・指定による制限が解除されるまでの「一時的収用」に対する補償をもとめる
1975年:
一審(地方裁判所)所有者勝訴
1976年:
二審(地方裁判所控訴部)所有者敗訴
1977年:
州最高裁二審判決を支持、原審差戻し、所有者は連邦最高裁に上訴
1978年:
連邦最高裁判決(グランド・セントラル・ステーション判決) 所有者敗訴
・論点
歴史保存条例による制約が、合衆国憲法の言う「財産の公共の用のための収用」に当たるか
収用にあたるのであれば、TDR制度は「正当な補償」を与えるものとなるか

・結論
多数意見(6):
本件ターミナルに対するニューヨーク市の歴史保全条例の適用は財産の収用にあたらない
(従ってTDRが正当な補償か否かは検討されない)
反対意見(3):
本件においては(ゾーニングと異なり)利益と負担の平均的相互性が欠如しているので、
基本的には収用が生じている
従って、TDRが正当な補償になるかを決定するために事件を原審に差し戻すべきである

メモ;
合衆国憲法について■修正第5条
(前略)
何人も、法の適正な過程*によらずに、生命、自由または財産を奪われることはない。
何人も、正当な補償なしに、私有財産を公共の用のために収用されることはない。

合衆国憲法について■修正第14条
第1 項合衆国内で生まれまたは合衆国に帰化し、かつ、合衆国の管轄に服する者は、
合衆国の市民であり、かつ、その居住する州の市民である。
いかなる州も、合衆国市民の特権または免除を制約する法律を制定し、または実施してはならない。
いかなる州も、法の適正な過程*によらずに、何人からもその生命、自由または財産を奪ってはならない。
いかなる州も、その管轄内にある者に対し法の平等な保護を否定してはならない。
(出典:アメリカ大使館HP 合衆国憲法に追加されまたはこれを修正する条項

*原文のdue process of law(デュー・プロセス・オブ・ロー)の訳。
 適正な手続のみならず法の適正な内容も要求するところからこのように訳される。

合衆国憲法における財産権について■権利章典~財産権
財産権の完全な保護と、公共目的のための財産権の制限という二律背反が存在するため、
政府による財産権の侵害を制限するという問題は、完全に明快であったためしがなく、常に議論を呼んできた。
(中略)
かくして、米国の歴史を通じて常にそうだったように、
財産に関する憲法上の異なる概念の意味を解釈する仕事が、裁判所には求められることとなった。
(アメリカ大使館HP「米国のプロファイル 基本文書第九章 財産権」より引用)

(続く)
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