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戦前の大衆グラフィックデザイン

戦前グラフィックデザインの極北として知られているのが
「NIPPON」や「FRONT」などの対外宣伝誌ですが、
これらの雑誌が実際のところどれだけ読まれていたかと言うとかなり疑問です。
そんな中で(廻し読みを含めると)数百万とも言われる読者数を誇ったのが「写真週報」。

内閣情報局が出していたれっきとした国策宣伝誌ですが、
「写真」への注目を背景に企画がスタートしたこともあり、
木村伊兵衛、土門拳といった写真家が撮影者としてしっかりクレジットされて参加しています。
(創刊号の表紙写真も木村伊兵衛)

いくら国策誌とは言え、破格の10銭という定価なので紙質などは劣悪だったようですが、
編集に当たった情報局の官僚は民間人(新聞記者)からの登用であり、
報道写真を始めとする各種の宣伝技術が投入されたメディアと言えましょう。
一見するとあまり垢抜けていないような印象なのですが、
これすらも親しみを感じさせるための作戦かな、という気がしてしまう位です。

その「写真週報」ですが、全巻が国立公文書館に所蔵されており、
しかも全てのページがデジタルデータとして公開されています。

→ 国立公文書館 アジア歴史資料センター 特別展 「写真週報に見る昭和の世相

国家が自ら出版していた国策を宣伝する雑誌、という性格ではありますが、
当時の世相が反映されている面があることもまた間違いなく、
内容の変遷を追っていくと色々見えてくることもありそうです。
そういった方面に興味がある方はこちらを↓

戦時日本の国民意識―国策グラフ誌『写真週報』とその時代 (叢書・21COE‐CCC多文化世界における市民意識の動態)戦時日本の国民意識―国策グラフ誌『写真週報』とその時代
(叢書・21COE‐CCC多文化世界における市民意識の動態)

玉井 清

慶應義塾大学出版会 2008-02
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内容は「概要」「食糧問題」模範的国民生活」「民間防空」「労務動員」「健民運動」「学生・生徒・児童」「戦局報道と軍事情報」
「東アジア観」「英米観とその変容」「ドイツ観」とテーマ別の論文集になっているのでつまみ食いでもいけます(笑)
あと「戦局報道と軍事情報」を担当された門松秀樹氏は微妙にミリオタ?・・・参考資料がこの手の論文としてはちょっと異色かも


公文書館のページでは木村や土門の撮影ページもピックアップして紹介されていますので、
興味がある方は是非。
(トピックス→『写真週報』に登場する著名人→1.『写真週報』に撮影者として登場する著名人)
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