「もとの道に戻り、四辻を右折、さらに東に左折して五分ほど進む。」
つもりであったが、東へ左折するのが早すぎるように思えた。

最初の交差点で右折し南下すると、左手に公園があった。
かなり大きな公園で、入口に行ってみると「たぬき山公園」と書いてあった。
どこがたぬき山かなと思って見ると、公園の中左手に林があり、中央が高くなっている。
どうやらこれがたぬき山らしかった。

公園に入りこの小山の方へ行って見ると、樹木の間に何か見えた。
どうやらたぬきの像らしかった。
これを見てやっと記憶が甦った。
市の広報紙の表紙にこの写真が載っていたはずである。
その写真には、たぬきの周りで遊ぶ子供達が写っていた。
この日、遊ぶ子供は一人もいなかったが、確かに小山の植木の間の土は滑らかで、多くの足に踏まれていることが分かった。

山に登って、たぬきのそばに行った。
たぬきは高い台座の上に立ち、たぬき自体もかなり大きく、焼き物のように見えた。

菅笠を首の後ろに掛け、すこし首をかしげていた。

たぬき山を下り、入口に戻ろうとしたとき、右奥に大きな石碑が見えた。
近づいてみると、土地区画整理事業の竣功記念碑で、川越市長の名が刻まれていた。
「散歩」が書かれたとき、この公園は無かったのか、記載はない。