緩和病棟に入ってからは
毎日仕事が終わってから
病院へ向かった。
ある意味、あの一ヶ月が
私と彼女にとって
いちばん幸せなとき
だったかもしれない。
ある日彼女が
「歯ブラシを買いに行きたい」
と言うので
「ぼくが買って来るよ」
と言ったら
「あなたと一緒に行きたいのよ」
と言う。
3階の病室から1階の売店まで
手をつないでゆっくり歩いた。
彼女の顔を覗いたら
すごく嬉しそうだった。
最期の最期まで
私のことを気遣ってくれた人。
あのときの笑顔を
私は、決して忘れない。
「ゆっくりね」
病室を出た私は
それからどのように帰ったか
よく憶えていないが
泣いてその夜を明かした。
あれが私たちの
最後のデートだった。
そしてあれは
二人にとって忘れ得ぬ
最高のデートだった。
その日から1週間
彼女はひとり旅立っていった。kyokukenzo
毎日仕事が終わってから
病院へ向かった。
ある意味、あの一ヶ月が
私と彼女にとって
いちばん幸せなとき
だったかもしれない。
ある日彼女が
「歯ブラシを買いに行きたい」
と言うので
「ぼくが買って来るよ」
と言ったら
「あなたと一緒に行きたいのよ」
と言う。
3階の病室から1階の売店まで
手をつないでゆっくり歩いた。
彼女の顔を覗いたら
すごく嬉しそうだった。
最期の最期まで
私のことを気遣ってくれた人。
あのときの笑顔を
私は、決して忘れない。
「ゆっくりね」
病室を出た私は
それからどのように帰ったか
よく憶えていないが
泣いてその夜を明かした。
あれが私たちの
最後のデートだった。
そしてあれは
二人にとって忘れ得ぬ
最高のデートだった。
その日から1週間
彼女はひとり旅立っていった。kyokukenzo