仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

人生の達人6

2011年12月07日 16時07分11秒 | Weblog
風の音

公園の隅で、寝転がっていた。

夜は動いていた。

空腹とそれを満たすための行為だけが存在を支えていた。

変な夢も見なくなった。

人の目も気にならなくなった。

ただ、待っていた。

施設で支給された作業服は余計目立った。
倉庫街から住宅街に変容していく湾岸の近くの町まで歩いた。
ゴミの集積場所に行って着れるものを物色した。
簡単に手に入った。
靴も靴下もシャツもズボンも何でもあった。
何でも捨ててあった
変わりに作業服を捨てきた。

夜の街は面白かった。

夜しか見せない顔がいっぱいあった。
本当はその顔もうそなのかもしれない。
でも、その顔でいるときが幸せなのかもしれない。
ずいぶんえらそうだった。
そうか、見下すことのできるものがいることが救いなのか。
少しは役に立つのか。
いや、どうでもいい。

欲望を商売にする人間。
満たすために売る人間。
彼らは正直なのかもしれない。

深く刻まれた刻印は、その顔の時でも浮き出てしまうもののようだ。

裏口から、ゴミ出しのコックが出てくるのを待った。

仮面のような化粧の女が声をかけてきた。