仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

綺麗な顔5

2012年03月12日 17時15分35秒 | Weblog
普段、マサルの語気が荒くなることはほとんどなかった。
だから笹川の提案が彼の触手に触れたことは間違いない。
「ベース}のあった場所から少し離れた国道沿いのファミレスに二人はいた。
テーブルをドンと叩いてレシートをひったくるようにして、マサルは席を立った。

「なあ。どうする。さっきのところまで戻ろうか。」
声のトーンに自分で驚いた。普段と違っていた。
言い直した。
「ゴメン。どうしようか。」
男は首を振った。

マサルも男も目を合わせなかった。

「まあ、いいや。」

マサルは高井戸に向かった。
「ベース」の基本的な姿勢、くるものは拒まず去るものは追わず、それはマサルの感覚にあっていた。
ただ、今回の笹川の提案は吐き気のするような気持ち悪さがあった。
隣に男がいるのはわかっているが、頭の中は、笹川の提案がぐるぐる回っていた。