仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

今はもう聞こえない声を探して

2012年07月02日 16時15分51秒 | Weblog
某月某日 長野県諏訪市の山間部にある集落で某団体に対して警察の捜査が行われた。

その地域は過疎化が進んでいて、その集落には某団体以外の住人はいなかった。
たまたま、某集落を訪れた近隣の集落(十数キロメートルは離れているのだろうところ)の住民が得体のしれない集団行動を目撃した。
全裸の集団が、全裸の少年を中心に奇声をあげ、うごめいているというもだった。
もう、ほとんど訪れる人などいないのだが、その集落には、奥社、その地域の神社のかつては中心的な存在であり、地域信仰の拠点であった場所に至る参道があった。
そこでの異常とも、卑猥ともいえる集団行動について近隣住民から捜査の依頼があったのだ。

警察は、事件性がないため捜査に踏み切ることを躊躇していた。

それは彼らが仕掛けたことだったのか。

近隣集落の駐在所に住民から通報があった。
それは、五、六人の男女が乱れた姿で、うわ言のようなことを言って歩いているというものだった。

一峰巡査は、現場に自転車で向かった。
確かに肌けた格好で、男子が二人、女子が四人、魂を抜かれたような状態で歩いていた。
近づくと、衣服は着ているのだが、ところどころが切り裂かれたように破れ、肌が露出していた。
職務質問を試みようと静止したが、彼らにはその声が届かなかったようだった。
一峰巡査は仕方なく彼らに同行し、無線で諏訪署の協力を要請した。

集落をつなぐ道。

やや広いその道を彼らは逃げる、いや、離れる、いや、追われる、いや、とにかく、諏訪湖、町場のほうに向かって歩いた。
「立ち止まりなさい。」
「君たちはどこから来たんですか。」
「何をしているんですか。」
「ちょっとお。警察だ。」
「警察だよ。」
「いうことを聞きなさい。」
巡査は自転車に飛び乗り、彼らの前に出た。
「止まれと言っているんだ。」
が、彼らは自転車も巡査も目に入らないかのようにその行進を止めなかった。
一番前を歩いていた乳首が見えそうな女性の顔が巡査に当たりそうになった。
巡査はあわてて、道をあけた。
ふう、とため息をつき、また、自転車を押しながら、彼らと共に歩いた。

協力要請はしたものの、到着まで時間がかかるのはわかっていた。

この速度で行くと・・・・

巡査は最悪の事態が起こらないことを祈った。

県道から国道につながる道。
その前に、脇道があり、そこをまっすぐ行くと諏訪湖畔に出た。
そこは高台になっていて、五年に一人の割合で飛び込みがあった。

一峰巡査は焦った。

諏訪署に無線で連絡をし、協力の人間がいつ来れるのか、確かめた。
「先ほど、署を出たと思います。」
「確認、とれますか。」
「警ら三号のほうから、巡査に無線を入れるように伝えます。」
「了解しました。」

一峰巡査の想像は現実になってきた。

そうだよ。次の、次だよ。そこをまがられたら・・・・・。

こないぞ。連絡、こないじゃないか。
どうすんだよ。一人でなんとかしろっていうのか。
いやだよ。気持ち悪いよ。
早く、早く、頼むよ。

「君たち、止まりなさい。」
振り向きもしなかった。
「止まれと言っているんだ。」

そして、彼らは高台に出た。
一峰巡査は、自転車を投げ捨て、彼らの前に出た。
「さあ、これが最後だ。止まらないと実力行使に出るぞ。」
ロープなど張ってなかった。
その淵から一歩踏み出せば、スーと湖面に吸い込まれた。
巡査は、その淵の前に立ち、先頭の人間から、柔道の技で押し倒した。
彼らは六人いた。
一人を倒すとすぐ後ろにまた一人、倒すとまた一人。
三人目を倒すころには、最初の人間が起き上がった。
「ここは危険だ。ここから離れなさい。」