一峰巡査の体力はそう長続きしなかった。
再び、巡査に近づく取りつかれた人々。
巡査にはもう、投げ飛ばす力は残っていなかった。
一人目を抑えた。
その時、無線の呼び出し音が鳴った。
その後ろから二人目が押してきた。
巡査は無線をとることができなかった。
満員電車の閉まり始めたドアめがけ突進してくるように残りの取りつかれた人々が前進してきた。
その重圧に耐えきれずに巡査は、一瞬、力をゆるめて体をかわそうとした。
が、六人の体重がかかった状態から逃げ切ることはできなかった。
その淵から七人の身体が転落し、湖面に吸い込まれた。
諏訪署はどう対処していいか、困っていた。
簡単に処理するには事故扱いが無難だった。
一峰巡査の殉職もあった。
集団自殺ということになれば事件としての可能性もあり、某集落での取り調べを開始することにした。
警備課、刑事課、交通課、地域課からそれぞれ、二人づつ、パトカー二台に分乗して某集落を目指した。
実際はその事件、あるいは、事故がその団体と関係があるのか、不明瞭だった。
ただ、得体のしれない人々が歩いてきた道は一本道で、彼らが某集落から歩いてきたのは間違いがなかった。
警察は某集落に着いて唖然とした。
近隣集落の住人から聴取した内容とまるで違う光景がそこにあった。
農地が蘇っていた。
道と家屋以外のすべての土地が区画整理され、美しいほどの農作物が整然と成長を遂げていた。
それは日本の原風景とは違うものだった。
意図があり、その土地自体が何かを表現するかのようにも思われた。
かつての様相とはまるで違う世界があった。
近隣住民はその光景が浄化された新天地のようだとも、付け加えた。
が、住人にとって、不可思議な儀式、全裸のダンスのほうが問題だった。
圧倒される雰囲気。
それは住民の魂の部分を揺さぶった。
それが恐怖に変わり、住民は警察に捜査を願い出た。
その場所が・・・・・・
車から降りた署員が目の当たりにしたのは近隣住民の見た浄化された世界とはまるで違う地獄絵だった。
道と家屋以外のすべての土地が焼け野原になっていた。
兵器として火を噴く物。
単純に焼き畑でもしようかといって、藁をまき、火をつけたものとは意味が違っていた。
「焼きただれた」という表現がふさわしかった。
その道の先の車寄せに一台のワゴン車が止まっていた。
その中には小銃をはじめ、小火器、弾薬の入ったケース、手榴弾まであった。
焼きただれた農耕地の中にやはり、軍用とも思える火炎放射器が転がっていた。
人気は感じなかったが、班長は、事態を重く見て、その日の調査を中止した。
諏訪署では、会議が持たれた。
「諏訪湖集団自殺事件」と名を打ち、捜査チームを編成した。
三十人態勢のチーム。決して大事にはしたくない過疎地の事件。
一般報道は行われなかった。
が、狙撃隊を含むそのチームは最初の捜査から、三日と置かずに現場に向かった。
再び、巡査に近づく取りつかれた人々。
巡査にはもう、投げ飛ばす力は残っていなかった。
一人目を抑えた。
その時、無線の呼び出し音が鳴った。
その後ろから二人目が押してきた。
巡査は無線をとることができなかった。
満員電車の閉まり始めたドアめがけ突進してくるように残りの取りつかれた人々が前進してきた。
その重圧に耐えきれずに巡査は、一瞬、力をゆるめて体をかわそうとした。
が、六人の体重がかかった状態から逃げ切ることはできなかった。
その淵から七人の身体が転落し、湖面に吸い込まれた。
諏訪署はどう対処していいか、困っていた。
簡単に処理するには事故扱いが無難だった。
一峰巡査の殉職もあった。
集団自殺ということになれば事件としての可能性もあり、某集落での取り調べを開始することにした。
警備課、刑事課、交通課、地域課からそれぞれ、二人づつ、パトカー二台に分乗して某集落を目指した。
実際はその事件、あるいは、事故がその団体と関係があるのか、不明瞭だった。
ただ、得体のしれない人々が歩いてきた道は一本道で、彼らが某集落から歩いてきたのは間違いがなかった。
警察は某集落に着いて唖然とした。
近隣集落の住人から聴取した内容とまるで違う光景がそこにあった。
農地が蘇っていた。
道と家屋以外のすべての土地が区画整理され、美しいほどの農作物が整然と成長を遂げていた。
それは日本の原風景とは違うものだった。
意図があり、その土地自体が何かを表現するかのようにも思われた。
かつての様相とはまるで違う世界があった。
近隣住民はその光景が浄化された新天地のようだとも、付け加えた。
が、住人にとって、不可思議な儀式、全裸のダンスのほうが問題だった。
圧倒される雰囲気。
それは住民の魂の部分を揺さぶった。
それが恐怖に変わり、住民は警察に捜査を願い出た。
その場所が・・・・・・
車から降りた署員が目の当たりにしたのは近隣住民の見た浄化された世界とはまるで違う地獄絵だった。
道と家屋以外のすべての土地が焼け野原になっていた。
兵器として火を噴く物。
単純に焼き畑でもしようかといって、藁をまき、火をつけたものとは意味が違っていた。
「焼きただれた」という表現がふさわしかった。
その道の先の車寄せに一台のワゴン車が止まっていた。
その中には小銃をはじめ、小火器、弾薬の入ったケース、手榴弾まであった。
焼きただれた農耕地の中にやはり、軍用とも思える火炎放射器が転がっていた。
人気は感じなかったが、班長は、事態を重く見て、その日の調査を中止した。
諏訪署では、会議が持たれた。
「諏訪湖集団自殺事件」と名を打ち、捜査チームを編成した。
三十人態勢のチーム。決して大事にはしたくない過疎地の事件。
一般報道は行われなかった。
が、狙撃隊を含むそのチームは最初の捜査から、三日と置かずに現場に向かった。