記憶探偵〜益田啓一郎のブログ(旧博多湾つれづれ紀行)

古写真古地図から街の歴史逸話を発掘する日々。ブラタモリ案内人等、地域の魅力発掘!まち巡りを綴ります。

川端商店街の火災

2010年03月01日 23時28分26秒 | 福博まちの記憶
 夜半3時まで仕事をし、仮眠からの目覚めは「火事」の報だった。目覚まし代わりに朝7時にテレビのタイマーを合わせていた。「アサデス」ニュースで上川端商店街から火の手が上がっているのを知り、すぐに飛び起きて自治協会長に電話。「みんな公民館に来とるばい、すぐ来んしゃい」の報で、取り急ぎ現場から目と鼻の先にある公民館へ。警察の関所をいくつも潜り抜けて災害時避難場所である公民館に駆けつけた時、火の手は少し収まりつつあった。

 罹災者、地域の世話人、商店連盟、マスコミなどがごった返す中、地域活動の記録係としての任務も控えめに行う。即ち、緊急時における地域の防災体制や施設の活用記録である。途方に暮れる罹災者の心情を思うとカメラを向けることは不謹慎だと思ったが、「ちゃんと記録ば撮っておき!」との声に、シャッターを押した。

 前日の津波警報に続いて連チャンとなった緊急体制。消防団をはじめ地域の防災担当者は特に大変だった。類焼を防ぐための土嚢運びは消防団の女性陣の仕事だったそうだ。焼失した一帯は、戦後復興時の木造家屋が連続して並ぶ、いわば火災時に最も危険と思われていた界隈。風に煽られて屋根つたいに火の手はあっという間に7軒を飲み込んだ。戦後は大きな火災は起きておらず、まさに数十年ぶりの大火となってしまった。

 11時近くになり鎮火状態となって落ち着いたのをみて私は帰宅。しかし自治会長ら地域の方々は公民館に待機し終日様々な対応に追われた。事務所へ戻った処で、予想しない対応を私も担うこととなる。冷泉自治協のサイトを運営管理する立場だったため、報道番組等から川端商店街についての問い合わせ。商店街の当事者に尋ねる状況でなかったことが要因。そして私のアーカイブサイトに公開している古い川端商店街の写真(絵葉書等)の借用依頼も続き、終日仕事が混乱した。
冷泉のあゆみ1945~2007まちづくり戦後史

 火事で焼け出された方々の気持ちは、私には痛いほど判る。あっという間に全てが焼失した時の放心状態を、私は18歳の時に体験している。朝日新聞の販売店に住み込みで、新聞奨学生としてデザイン学校へ通っていた当時、夕刊の配達に出掛けて1時間後に販売店(2階以上が住居)に戻ると、見事に建物が焼けていた。火元は私の隣の部屋の学生、互いに焼け出された身だったが、その後私は実家から学校へ通う道を選び新聞奨学生を辞めた。火元の彼と顔を合わせるのが辛かったことも一因、常に気を遣われているようで居心地も悪かったのだ。

 私の火事の時もそうだったが、今回の川端商店街の火事でも、火災が置きた店舗から直線で20mほどの処に消防署分団がある。気づけばすぐに消火活動に入れる距離のようで、妙な安心感を持っていたのだが、実際にはこの近距離が役に立たないほど(1~2台の消防車では対応できないほど)火の巡りが早かった。商店街のスプリンクラーも実際には作動せず、設備への過信や油断もあったかもしれない。耐火構造の建物がない一帯だったことも類焼に影響している。

 救いは、地域の方々のフォローが本当に早く的確だたこと。住人の安否確認や罹災者への仮住居手配など、古くからのコミュニティが残る博多部だからこその安心感、励まし合いの状況も垣間みた。隣人の顔の見えないマンション暮らしでは味わえない一体感が、確かにそこにあった。

今日の写真は火災前の上川端商店街。お気に入りの地元だけに、常に撮影をしてきた界隈である。
奥には焼失した店舗も見える。

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1 コメント

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お疲れ様でした (伊佐@ランチェスター経営)
2010-03-02 14:56:50
火事等々、お疲れ様でした。
そんな中で、フォトブック・新作の2冊を
お届け有り難うございます。
火事があっても、しっかり営業されるお店も
あるのが、やはりスゴイですね。
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