記憶探偵〜益田啓一郎のブログ(旧博多湾つれづれ紀行)

古写真古地図から街の歴史逸話を発掘する日々。ブラタモリ案内人等、地域の魅力発掘!まち巡りを綴ります。

佐敷 居よいか 住みよいか~初三郎随想。

2007年04月26日 23時27分21秒 | 吉田初三郎
 昨夜は久々に「博多非凡会」が開催され参加した。メルマガ「がんば
れ社長!」の武沢さんのセミナーに加え、今回は家族4人一年間で世界
一周から帰ってきたばかりの栢野さんのお土産話&スライドショーで、
2時間半はあっという間に過ぎた。久しぶりに再開した友人も来ていて
ちょっとしたリフレッシュ・タイムであった。

 今日は朝から立て続けに電話が入り、仕事が次々に決まった。4月に
入って以降「こんなにこなせる?」というほど、20件以上の同時進行
であるが、仕上がりは2年先の仕事もある訳で、自分で時間コントロー
ルできるのが強みである。明日27日と28日は京都・彦根出張なので
そのままGW前半に入り、29日は豊後高田、30日は溜まった仕事の
処理と休みは実質無さそうだ(笑)。

 今日は、さらに吉田初三郎の調査に大きな進展があった。ひとつは、
昨日「串木野市鳥瞰図(昭和28年)」絹本原画が確認できたこと。
市来串木野市より返答あり、調査して該当する作品があったとのことで、
写真メールをいただいた。経年の退色はあるものの、良い構図である。
5月にここも現物確認に行かねばならない。

 午前中、3件打合せを終えて帰社すると、ユーキャンから待望のDVD
「極める第11巻特別編・理想郷日本を描く~鳥瞰図絵師吉田初三郎」の
見本が届いていた。藤本一美氏、石黒三郎氏とともに製作に資料を提供
し、博物館での原画撮影の手配などをした御礼であった。早速、全編を
観たが、初心者にはとても判りやすい、あくまで画業・原画中心の作品
紹介である。個人的には「博多観光鳥瞰図」や「阿蘇付近之図」がかな
り目立っていたので、さらに嬉しい。初三郎ファン必見である!

 DVD製作したグレードデンのサイト
 http://www.greatdane.co.jp/

 また、初三郎が昭和初期から九州方面の作画の際に、拠点とし仮画室
のあった佐敷を調査したくて、芦北町へ打診していたところ、丁寧な返
答をいただき調査に協力いただけることとなった。昨年、八戸で開催さ
れた初三郎展でも地元、種差観光協会の柳沢氏が精力的に調査に動き、
次々に地元に残っていた原画や初三郎が描き進呈した色紙、額、掛け軸
等が大量に見つかっている。

 佐敷でも同様に痕跡を探し、新たな発掘となればこんなに嬉しいこと
はない。早速、私が提供した小さな情報から仮画室のあった地域も役所
内で判ったようだ。続けて私が持っている情報の中から佐敷に関するも
のを抜粋し、預かっている「佐敷日記」記述と合わせて伝えたので、さ
らに辿ってゆければ幸いである。

 初三郎が佐敷を拠点に活動した期間で最も長いのは、終戦前昭和20
年から23年春にかけてである。その間、広島市・光市の仮画室の往復
が主で、京都へは2度、種差へは1度向かっているだけで、その間の約
6割を佐敷で過ごしている。

 佐敷へ長期滞在した理由は、徳富蘇峰記念館(神奈川県)に所蔵され
ている「阿蘇大観図(原題は阿蘇付近之図)昭和21年」である。蘇峰に
依頼され、九州産業交通・渡邊社長や熊本県選出の代議士・古荘氏らの
支援によって作成された図である。

 広島での「原爆八連図」制作のための踏査取材の後、初三郎は4ヶ月
近く佐敷で静養し、次なる画作の展望および戦争で途絶えていた印刷物
制作の依頼を待つ。その間、日本観光倶楽部の依頼で全国温泉鳥瞰図の
制作構想に期待を膨らませ、実際に佐敷を拠点に熊本県内のほぼ全ての
温泉地を2ヶ月かけて休み休みに踏査取材している。

 この図は完成したのだろうか?少なくとも私はこれら作品を見たこと
は無く、主な研究家も見ていないようだ。昭和22年2月~7月にかけ
てほぼ毎日記載されている「佐敷日記」には踏査取材が終わったところ
までは記されており、下図制作のことにも触れている。

 22年7月、ここで戦後の印刷パンフ作品第一作となる「姫路市観光
鳥瞰図」の制作依頼が姫路市長より佐敷の初三郎に入る。ここでの初三
郎の喜びようは大変なもので、その後続けて光市の渡邊印刷を経て天覧
作となる「景勝山口全県図」制作へと向かう。日記は「種差日記」へと
代わり、22年8月に京都を経て2週間ほど青森・種差へ向かうが、道
具類の調達後、すぐに光市まで戻り図を完成させている。

 天覧を経て、初三郎は再び佐敷へ戻るが、ここでは広島での爆心地取
材、放射能の影響と、すでに持病となっていた腰痛、足痛とが重なり、
2ヶ月近く静養。佐敷に近い、初三郎お気に入りだった湯の子温泉で、
不知火湾を眺めながらゆっくりと静養することになる。

 今日の写真は、佐敷での生活を中心に雑誌「観光倶楽部昭和22年4
月号」に寄稿した文章の一部である(石黒三郎氏蔵のコピー)。

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