今年のアカデミー賞の有力候補のひとつだった映画『TAR』を見ました。緊張感のある見事な映画でした。2時間半を超える映画でしたが長さをまったく感じずにみることができました。
事前にいくつかのコメントを見て、難解な映画なんだと覚悟してからの鑑賞だったからか、それほど難解さを感じずに見ることができました。ストーリー自体は逆にわかりやすい。しかし具体的な過去のハラスメントの情報はほのめかされるだけで、描写されてはいません。だから観客は後追いでストーリーを確かめることになります。
ちりばめられたさまざな記号が謎を生み出します。ひとつひとつの意味を考え始めると迷宮にはまります。迷宮は恐怖を呼び起こし、狂気を生みます。観客は主人公と同じように追い込まれていくのです。
主人公の時間軸の中で主人公の視点で描かれるので、主人公の意識を追体験するように仕掛けられているのです。
ラストシーンは印象的です。