夏目漱石の『三四郎』の読書メモ。今回は十二章。
三四郎は文芸協会の演芸会に行く。盛況である。最初の演目は蘇我入鹿の出て来る芝居でよくわからない。幕間に与次郎を見つける。与次郎の動きを見ていると、野々宮と美禰子とよし子もいた。美禰子のそばに男がいてその男が誰なのか気になる。
次は「ハムレット」である。ハムレットがオフィーリアに言う「尼寺に行け」と言う。この言葉で広田の話を思い出す。広田がハムレットの様なものは結婚できないと言っていた。ハムレットはオフィーリアのために露悪家になったのだ。自分を悪者にしてオフィーリアを苦しめずに自分を諦めさせようとした。しかし結果としてはオフィーリアに一番の不幸が訪れる。そこにドラマがあるのだ。
ここからは邪推である。ハムレットは野々宮であろう。野々宮は結婚できない男なのだ。結婚よりも研究を好む男なのである。野々宮は美禰子の愛を断ったのだろう。では「尼寺に行け」ではなく、どうやって断ったのか。
ハムレットが終わり、三四郎は会場を出る。すると廊下で美禰子とよし子が男と話をしている。男を見て三四郎は逃げるように家に帰る。
三四郎は病に倒れる。与次郎が見舞いにくる。美禰子の結婚が決まったという。その男はよし子の縁談話の相手であった。
邪推の続き。美禰子は野々宮との結婚を望んでいた。同時に兄の結婚が決まったために、結婚を急ぐ必要もあった。美禰子は野々宮が結婚に前向きになれない理由はよし子の結婚が決まらないからだと勝手に思ってしまった。野々宮が結婚してしまえばよし子の居場所がなくなる。それを心配して結婚をためらっていたと考えたのだ。そこである男をよし子に紹介し、その男とよし子を結婚させることによって、野々宮をよし子から解放し、自分が野々宮と結婚するように画策したのである。ところがよし子が断った。自分の思い通りにならずに取り乱した美禰子は、野々宮のいる前でその男との結婚を宣言してしまったのである。ちょっと邪推すぎるかもしれないが、野々宮と美禰子の関係に、よし子と美禰子が結婚する男との縁談話が関わっている可能性は高い。家の問題が大きかった時代は、結婚は駆け引きの要素も強いのである。そこにエゴが出て来る。
三四郎は教会にいる美禰子に会いにいく。三四郎は借りていた金を返す。三四郎は美禰子に「結婚なさるそうですね」と言う。美禰子はため息をかすかにもらし「われはわが愆(とが)を知る。我が罪は我が前にあり」と言う。
美禰子は自分の画策の失敗を認め、罪を背負ってこれからの人生を歩んでいかなければならないのだ。
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