とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

近代文学と日本語の特質

2023-05-12 17:20:32 | どう思いますか
 論文を書くために考えていることの粗案を書き残す。これを発展させられればと思っている。

 日本語の主語の概念は英語をはじめとする西洋語の主語の概念とはちがうものである。学者によっては日本語に主語はないと言う。たしかに英語のような主語を日本語に当てはめるのはむずかしい。しかし日本語にも、事態の主となる名詞は存在する。日本語の主語とはそういうものであろう。つまり主語の概念が違うのである。

 この言語の違いが、明治期の近代文学の生成に大きく影響を与えた。近代文学は基本的に書かれた小説であり、そこには定点となる客観的視点を持った「語り手」が必要だった。それが江戸時代までの日本語にはなかったのである。
 ないならばないでいいではないかと思われるかもしれない。確かにそれでも悪くはない。しかし「近代」は個人の時代であり、個人とは独立した存在である。だから客観的な視点で描かれる必要がある。と少なくとも当時の文学者は考えた。そこで客観的に描くための文体を手に入れなければならなかった。
 事情はそこからもう一段階複雑になる。例えば英語では語り手は話題とされている場の中には存在しない。英語の文の主語はそもそも客観的な視点の中にいる。それに対して日本語は話題とする場の中に「語り手」は存在しているのだ。そのために「語り手」は事態の当事者になってしまうのだ。
 日本の近代文学において困難だったのは、日本語の特質として主観的な立場に立つことが当たり前だった「語り手」が、西洋的な客観的に立場に立たなければいけないと考えたことによるものだった。
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『ディスカバー・カーペンターズ』に感謝

2023-04-06 18:50:27 | どう思いますか
 NHKラジオで1年間ずっと1組(1人)のアーティストを掘り下げて特集する「ディスカバーシリーズ」を放送している。昨年度はカーペンターズが取り上げられた。4月2日が最終回だった。とても楽しく、学ぶことが多く、そして懐かしい曲をたくさん聞くことができノスタルジックな気分にもなる素敵な番組だった。

 カーペンターズは私が小学生ごろ流行した兄弟グループである。カレンカーペンターの優しさを感じさせる透き通った声と、リチャードカーペンターのアレンジがすばらしく、印象に残る曲が多くある。

 私自身は中学、高校とロックに走ってしまい、しばらく遠ざかっていたが、最近は再びよく聞くようになっていた。古さをまったく感じさせない。きれいで優しいサウンドや声が、ストレスを和らげてくれる。カーペンターズはポピュラーミュージックの代表と言っていい。

 この番組のパーソナリティは平松愛理さん。カーペンターズが好きだという思いが伝わるいい人選だった。

 そしてキーボード奏者、森俊之さんが曲の解説をする。これがすごい。森さんは最近吉田美奈子さんと活動することが多く、私も何度も森さんの演奏を聴いていたが、やっぱりプロのベテランミュージシャンは分析が鋭いと改めてそのすごさを感じた。

 そしてもう一人、ベテランDJの矢口清治さんがカーペンターズと関係のあるミュージシャンを紹介してくれた。これによってまたカーペンターズサウンドがどのような経過でできたのかを理解することができた。矢口さんは私が中学生のころ「アメリカントップ40」の日本のアシスタントDJとして登場した時から聞いている人だ。なんとなく古い友人と会ったような気持ちになる。

 とてもいい番組で終わってしまってさみしい。しかしカーペンターズのすばらしさを再認識することができた。感謝したい。
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映画『ドリーム・ホース』を見ました。

2023-01-29 10:05:43 | どう思いますか
 映画『ドリーム・ホース』を見ました。夢をもつことのすばらしさを描く、気持ちが明るくなる映画でした。

 イギリス・ウェールズが舞台です。毎日が刺激がないまま過ごしている中年女性ジャンが主人公です。ジャンは自分の生きがいを競走馬に見出します。牝馬を貯金をはたいて買い、その牝馬に子供を産ませ競走馬にしようとします。その資金まではないために、地域の人たちを巻き込んで、共同馬主となろうとします。本当に集まるかと思われましたが、地域の人たちも刺激をもとめていたのでしょう、意外にたくさんの協力者が集まります。残念ながら牝馬は仔馬を生んだ時に死んでしまいます。しかし子馬は順調に成長します。ジャンたちはいよいよ競走馬にする行動にでます。知らないことは何でもできます。どんどん無理を実現していきます。そして「ドリームアライアンス」と名付けられたその子馬の快進撃が始まります。

 ジャンたちはただの共同馬主ではありません。母親の馬を育て、その牝馬に仔馬を生ませ、その馬を子供のころから育てています。だからこそ馬に愛情をもっています。だから単なる「夢」ではないのです。馬と一体となり、一緒に戦うことができたのです。

 夢を持つことは人生を豊かにしてくれます。そしてそれはみんなと協力することによって実現します。人生が前向きになる、さわやかな映画でした。

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源氏物語を読む⑯「関屋」

2022-12-02 08:37:30 | どう思いますか
 「源氏物語を読む」シリーズの16回目。「関屋」です。自分の備忘録として書き残しておきます。

 「関屋」は「蓬生」と同じようにスピンオフのような作品です。出てくる女性は「空蝉」。非常に短い巻です。

・「空蝉」
 「空蝉」は伊予介の後妻です。伊予介との年齢差があり、息子や娘とほとんど同じ年代だったようです。「空蝉」は光源氏の愛を一度は受け入れたのですが、それ以降は受け入れなかった女性です。「受け入れなかった」というよりも「受け入れたかったがそれができなかった」と言うべきなのかもしれません。夫を裏切れなかったのです。当然と言えば当然です。

・逢坂関
 源氏が明石から帰京した翌年、夫である常陸介(元伊予介)が任期を終えて、空蝉と共に戻ってきました。石山寺へ参詣途中の源氏は逢坂関で、空蝉の一行に巡り会います。逢坂関は出会いと別れの象徴の場所です。偶然に久しぶりに出会う二人は、またこの場で別れるのですが、しかしこの出会いがなければ次の再会もなかったことでしょう。地名が「物語」を作る要素になっています。

・紫式部がモデル?
 まもなく常陸介が亡くなります。一人残された空蝉は腹違いの息子である河内守に言い寄られます。それが嫌で出家してしまいます。空蝉は紫式部をモデルにしているという説もあります。確かにそういう面はあったのだと感じます。
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源氏物語を読む⑭「澪標」

2022-11-22 08:10:09 | どう思いますか
 「源氏物語を読む」シリーズの14回目。「澪標」です。自分の備忘録として書き残しておきます。またまた中断してしまいました。我ながら本当に情けない。とは言え、今後も続く自信ありません。頑張らなければいけません。

・まとめの巻
 「須磨」「明石」と続いた激動の展開が終わり、京に戻ってきた源氏が権力を握り、さまざまな問題が解決していく様子、あるいは自然と解決してしまう様子が描かれます。しかし一方では新たな展開の「種」をまき散らします。

・権力を得る源氏
 朱雀帝は東宮が元服を迎えたのを期に、位を退き冷泉帝へ譲位しました。この東宮というのは実は源氏と藤壺の息子です。つまり源氏は天皇の親になりました。表向きは亡き桐壺院の子息なので、帝の親としての権力を得るわけではありませんが、源氏は桐壺院に代わる親代わりとして力を得ることになります。源氏は見事に復権します。物語の展開が見事です。

・明石の姫君との関係
 明石の姫君との関係は簡単にはうまくいきません。明石の姫君は源氏の愛情を信じきれなく、悩み苦しみながら生活を続けます。源氏はそれに気が付き何とかうまくいくようにします。しかしそう簡単には事は運びません。このあたりの気の使い方は女性ならではの視点が生かされています。明石の姫君の今後とその娘の今後が今後の展開の「種」になりそうです。


・六条御息所の死
 六条御息所の死も大きな物語の終わりを印象付けます。とは言え斎宮がこれからどうなるのかが気になります。これも「種」になりそうです。

・少し落ち着いてきた源氏。
 この巻では源氏自身が落ち着いてきたと言っています。大人としての分別も垣間見えます。しかし源氏の落ち着きを信じていいのでしょうか。ある意味ではこれも「種」です。

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