とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

オペラ『竹取物語』を見ました。

2024-12-16 22:35:55 | 高校国語改革
やまぎん県民ホールで開催されたオペラ『竹取物語』を見ました。

新作オペラで作曲は沼尻竜典氏。原作にできるだけ忠実にオペラにしているようですが、強調しているところに製作者側の意図も明確にあらわれています。かぐや姫に五人の求婚者が現われるのですが、それによって命を落とすものもいます。大けがを負うものもいます。女のために命を落としたり、大けがを負ったりすることが、かぐや姫の無理な注文に原因があったのではないかと思わせるような筋に感じます。帝が不死の薬を焼く場面を強調しているようにも感じられます。かぐや姫と結ばれない世の中で不死であることがなんの意味があるのか。人生の意味を考えさせられます。

普通のオペラとは違い、オーケストラは舞台の上にいます。映像を用いて、きれいな舞台になっています。話もわかりやすく、日本人にとってなじみやすいオペラだと思います。私はオペラ初心者ですが、こういう作品なら入門にうってつけだと感じました。

指揮は阪哲朗さん。山形公演は山形交響楽団が演奏します。楽しめる作品でした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画『風が吹くとき』を見ました。

2024-09-07 18:12:36 | 高校国語改革
映画『風が吹くとき』を見ました。現実に原爆が落とされた場合、こういうことになっていくのかと、恐怖を覚えました。

1987年に日本で公開され、その時も話題になった映画ですが、今回再上映されたのを機会に初めて見ました。善良な老夫婦が原爆投下の危険の知らせを聞き、その対策を準備します。中途半端な情報と知識と勝手な思い込みのために、十分な準備とまではいきません。そのために命は助かるのですが、かなりの被ばくをしてしまいます。情報は何も届かず、それでも夫婦は政府を信じています。その善良な夫婦の姿が痛々しく涙を誘います。

私たちは原爆の真実をみないようにしてきたように思います。どうせもう使わないだろうという勝手な楽観主義に陥っています。そういう生半可な知識と、御上を信じ込むことがどれだけ危険なことかを教えてくれます。広島や長崎について今こそ、詳しく知ることが大切であると感じます。

音楽をロジャー・ウォーターズ、主題歌をデビッド・ボウイが手がけました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

NTLIVE「ザ・モーティヴ&ザ・キュー」を見ました。

2024-07-15 04:52:33 | 高校国語改革
イギリスの舞台をそのまま収録し、映画館で上映するナショナル・シアター・ライブの作品 「ザ・モーティヴ&ザ・キュー」を見ました。重要な近代劇の「事件」を演劇化した演劇人のための演劇であり、演劇の意義を考えさせる好作品です。

1964年にブロードウェイで『ハムレット』が上演されました。主演はエリザベス・テイラーと結婚したばかりのリチャード・バートンです。そして演出はジョン・ギールグッドというベテランの役者です。ギールグッドはシェイクスピア俳優と言ってもいい存在です。バートンとギールグッドの演劇観は真逆であり対立します。感情を表に出しやや誇張した演技をするか、感情を抑え微妙な心のひだを表出する演技をするかの対立です。

この対立は今でも同じように存在します。従来の大きな表現による演劇もさかんですが、日本でも「静かな演劇」が流行し、静かな語りによる演劇が多く上演されるようになりました。それぞれにはそれぞれのよさがあり、これによって演劇のバリエーションが広がりました。演劇に限らず、映画やテレビドラマでも、あるいは文芸作品でも同じような対立があり、それが表現の幅を広げているのです。

演劇とは何か、演技とは何か、そして表現とは何かその本質にせまる作品です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新山形市民会館のデザイン

2024-06-12 18:35:50 | 高校国語改革
山形市民会館が建てかえられる。現在の市民会館が老朽化しているために建てかえるのだが、そのデザインがものすごい。まるでメルヘンの世界だ。当然のごとくこのデザインには賛否両論である。

話題性があり、シンボルともなるデザインだと肯定的な人もいるが、建築費の高騰が予想され、そこまでする必要があるのかという否定的な人もいる。私も後者である。

山形市の本来の中心街は七日町という、新しい山形市民会館に近い場所であった。しかし七日町は次第に賑わいが消え、特にこのコロナの時期に老舗のデパートも突然廃業し、厳しい状態になっている。起死回生のために人を呼べる施設を考えたのであろう。その気持ちはわからないではない。

しかし、この建築費の高騰の中、これだけの施設を作るということは予算オーバーが当然予測される。奇跡的に予算内に収まったとしたら、どこかに欠陥がでてくるのではないかと心配である。

外部に回廊をつくるというアイディアは、発想としてはおもしろいかもしれないが、現実にはほとんど意味がない。東京のパルコ劇場でそれを作り、劇場の終演にその回廊に誘導されるのだが、天気に左右されるし、体力的にもかなり大変だ。山形市民会館でもほとんど使う人はいないだろう。

しかも目の前が大正時代の建築である旧県庁の「文翔館」という建物があり、二つのシンボル的な建物がまったく不釣り合いである。これは立ち止まったほうがいい。

市民ホールはホールがしっかりとしていること。そしてそのホールを利用する市民が使いやすい設備、例えば練習室とかが整備されていることなど、使い勝手がよければ外観はあまり気にする必要がない。外面のために予算が削られ、内部が疎かにならないようにと要望しておきたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画『エル・スール』を見ました。

2024-02-25 17:58:31 | 高校国語改革
今年日本で30年以上ぶりに新作が公開された『瞳をとじて』の監督ビクトル・エリセの2作目の監督作品『エル・スール』が、『瞳をとじて』の公開に合わせて映画館で上映されました。仙台の公開が東京に3週間遅れのため、昨日ようやく見ることができました。35年以上前にシネヴィヴァン六本木で見た記憶があります。その時も衝撃だったのですが、今回見て、ほとんど忘れていたことが悔しく思えました。とは言え、いくつかのシーンが強烈に印象に残っており、記憶通りのシーンがよみがえりました。そして、今だからこそわかることに心が引きちぎられるような感覚に襲われました。

この映画の背景にはスペインの内戦があります。左派と右派が戦い、結果右派のファシズム陣営が勝利します。右派のリーダーがフランコです。第二次世界大戦の同盟国側がおもに右派を支持します。女エストレーリャの父親アグスティンは左派を支援していて、右派を支持していた父親と仲違いをしてしまい、北に移住します。父親はかつての恋人とも離れ離れになり、秘密を抱えながら生きることになります。娘のエストレーリャはある時、偶然父の秘密に気付いてしまいます。そして大きくなってそれを父親に暴露してしまいます。

人生には避けて通れない困難があります。それに伴う苦悩があります。上手くいかないのが人生です。そしてうまく行かなかったことが重くのしかかる場合もあります。誰も助けてくれないような困難だってあるのです。父親の苦悩と家族のせつなさがひしひしと伝わってきます。

こんなにすごい人生ドラマがたんたんと描かれていくのです。たかだか90分あまりの映画なのに中身が濃く、神経を研ぎ澄ましてみる必要がある映画です。映画らしい映画と言っていいと思います。久しぶりに見て興奮してしまいました。

エリセ監督の『ミツバチのささやき』もすばらしい映画でした。今回上映される『瞳をとじて』も楽しみです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする