映画『ヒトラーに盗られたうさぎ』を見ました。ドイツに住むヒトラーに批判的だったユダヤ人家族が、亡命し引っ越しを繰り返すお話です。出会いや別れの中で、成長していく姿が描かれています。とてもいい作品でした。
原作はドイツの絵本作家ジュディス・カーが少女時代の体験を基につづった自伝的小説「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」です。
(あらすじ)
1933年。ベルリンで両親や兄と暮らす9歳のアンナは、ある朝突然、「家族でスイスに逃げる」と母から告げられる。新聞やラジオでヒトラーへの痛烈な批判を展開していた演劇批評家でユダヤ人でもある父は、次の選挙でのヒトラーの勝利が現実味を帯びてきたことに身の危険を感じ、密かに亡命の準備を進めていたのだ。持ち物は1つだけと言われたアンナは大好きなピンクのうさぎのぬいぐるみに別れを告げ、過酷な逃亡生活へと踏み出していく。その後、家族は生活のためにパリ、イギリスへと居を変えていく。それぞれの土地で出会いと別れがあった。
監督 カロリーヌ・リンク
出演 リーバ・クリマロフスキ、オリバー・マスッチ、カーラ・ジュリ。マリヌス・ホーマン
戦争という暴力は人間を分裂させます。人間関係を分裂させるとともに、一人の人間の心も分裂させてしまいます。自分を維持していくのが難しくなります。主人公の少女もたくさんの別れがあり、それが自分を粉々にしてしまう思いに感じられたはずです。
しかし彼女はなんとか自分を維持し続けます。主人公の少女がスイスから離れる時、友達になった少女に「亡命には別れがつきもの。」と言います。自分の境遇に不満を持ちつつ、それを前向きにとらえようとする少女の姿がとてもせつなくいとおしく感じられます。
彼女を維持させてくれたのは家族の愛であり、そして周りの人たちの愛です。つらい時こそ人を慈しむ心が必要になるのだと改めて感じさせてくれる映画でした。